体験版:第5部 プレゼンテーションスキル(前半) ~プレゼンテーション資料のつくり方~

 

 

※本編は体験版のため、第2章までの公開となっております。続きは是非書籍『ビジネススキル』にてお読みください。

 

 

はじめに

 

この部で扱うプレゼンテーションとは、ビジネス上で何かを誰かに伝え、賛同を得ることである。すなわちビジネスプレゼンテーションだ。

 

数百名の聴衆を前に人生訓を語るのもプレゼンテーションではあるが、ここで扱うものではない。これらは小説家やタレントなど、有名人のプレゼンテーションである。彼らはプレゼンテーションを生業(なりわい)の一部としている。

 

われわれはビジネスのプロセスの中でプレゼンテーションを行う。そのときそのときで話す内容も違うし、同じ内容でも伝える相手によって話し方を変える必要がある。その上、プレゼンテーションそのもののための準備時間は限られている。そういう環境で、どれだけ的確にプレゼンテーションを行うかが、この部のテーマだ。

 

プレゼンテーションスキルは、この講座『ビジネススキル』で扱う16のスキルの中で、最も簡単なスキルだろう。しかし、いろいろな機会で「あなたはプレゼンが得意ですか?」と聞くと、手を挙げる方は非常に少ない。これは、ビジネスプレゼンテーションの本質を曲解していることに由来していると思っている。

 

この部は前半、後半にわたっている。前半は副題のとおり「プレゼンテーション資料のつくり方」で、圧倒的に重要だ。ここで、ビジネスプレゼンテーションの本質をご理解いただく。

後半は「伝え方のちょっとしたコツ」である。プレゼンテーションそのものは簡単なのだということがわかっていただけるはずだ。

 

 

目次

 

はじめに

第1章 プレゼンテーションとは?

スキルの「全体像」の中での位置付け/この部のめざすゴール/語学上達のための極意/プレゼンテーション上達のための極意/プレゼンテーションは「交換の場」だ

第2章 プレゼンテーションは「内容」か、「伝達率」か?

プレゼンテーションの成果は?/最近、とみに流行っている本2冊/TEDのプレゼンターはなぜうまいのか?/「内容が1割、伝達率が9割」の背景にあるもの/「内容」に自信があるかないかが勝負の分かれ目だ/なぜプレゼンは苦手だと思っているのだろう?

第3章 説得力あるプレゼンテーション資料づくりのための2つのコツ

たった2つのコツと、あとは若干の経験だ/パワーポイントを使ってこなかった人へ/課題を提示する

第4章 コツ1:1枚1枚が分かりやすいこと

1枚に1つのメッセージを/一定のフォーマットを使え!/トピックセンテンスの重要性/米国のスタンダードとしてのトピックセンテンス/社内でフォーマット統一すると知的生産性が格段に上がる/表紙も一定のフォーマットに/目次は全体の構造を示す骨格だ

第5章 コツ2:全体のストーリーが見えやすいこと

プレゼンで訴えたいことをストーリーにする/「全体のストーリーが見えやすいこと」とは?/ストーリーを整える!/論理の飛躍をなくす/ストーリーの論理性の検証のしかた/トピックセンテンスはそれだけで通じること/理解度チェックテスト/おわりに

 

 

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第1章 「プレゼンテーションスキル」とは?

 

スキルの「全体像」の中での位置づけ

 

プレゼンテーションスキルは、説得力クラスターの目的スキル編(図.1の橙色の四角)に属する。世間で考えられているような上級のスキルでは決してないというのが、本講の姿勢だ。

 

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ただ重要な条件がある。プレゼンテーションスキルを支える言語化スキル、コミュニケーションスキル、グラフィック表現力、そして論理的思考力(図.1の黄色の四角)が十分なレベルに達しているという条件だ。本講座を初めから順番に読み進めてきた方なら、これまでにすべて学んできている。そうならプレゼンテーションスキルは簡単なスキルと言い切ることができる。

 

そうでない方には、議論の飛躍を若干なり感じるかもしれない。ただ、プレゼンテーションの本質は必ず理解できるようになっており、十分、学ぶことができるはずだ。

 

この部のめざすゴール

 

以下の5つがこの部のゴールだ。最後にまた戻ってくるので、今は、ザッと目を通してもらいたい。

 

□ 「言いたいこと」がないのにプレゼンは絶対できない、逆に「言いたいこと」があるならプレゼンは恐れるに足らない、ということを理解する

□ 論理的にしっかりしたプレゼン資料をつくることがプレゼン成功の鍵

□ トピックセンテンスは難しいが非常に重要。トピックセンテンスをつなげて読むと、内容がよくわかるように資料をつくる

□ プレゼンテーションで緊張するのは当たり前、準備が整ったなら「自信」を持て

□ プレゼンテーションの上達には、自分のプレゼンテーションのビデオを見るのが一番

 

語学上達のための極意

 

「極意」はいささか大袈裟かもしれないが、非常に重要なことだ。まず、哲学者の木田元(サイトの図.2)の『新人生論ノート』(集英社新書、2005年)に書かれた言葉を引用しよう。

 

 

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「一つ心得ておかなければならないのは、(読むための)語学の勉強をするには、それを使って読みたい本がなければならないということである。無目的に漠然と語学の勉強をしてもあまり意味がない。」

 

まったく正しいと認めなければならない。私にも本当に苦い経験がある。大学時代だ(もう40年以上前の話だ)。第二外国語でドイツ語をとったのだが、これがつまらなくてたまらない。先生はニーチェの『ツァラトゥストラはかく語りき』を原文で読ませる(ドイツ語のクラスなのだから当然だが)。ルサンチマン、「神は死んだ」の哲学者だ。

 

先生の異常に熱い思い入れはわかるが、あいにくこちらにはない。内容も当然ながらまったくわからない。当方は選択必修だから受講しているに過ぎない。ましてや、ドイツ語で「読みたい本」があるわけもない。大学のあり方に疑問をもったのは言うまでもない。

 

プレゼンテーション上達のための極意

 

木田元の言葉を、プレゼンテーションスキルに置き換えてみよう。

 

「一つ心得ておかなければならないのは、プレゼンテーションスキルの勉強をするには、それを使って訴えたいことがなければならないということである。無目的に漠然とプレゼンテーションスキルの勉強をしてもあまり意味がない。」

 

これは正しい。

 

適当な課題を設け、「じゃあ、チョット洒落たことを5分間しゃべってみろ」と言われても困るのだ。言いたいことがないなら、プレゼンテーションはうまくいかないと心得るべきだ。また、言いたいこともないのに、適当なことで5分を埋めるスキルを獲得しても、あなたの将来のビジネスの成功にはつながらない。

 

朝礼で「5分しゃべれ」と言われる読者もいることだろう。まあ、度胸試しと思ってやればよい。こういうのは会社員の宿命だと思っているのがよい。このぐらいのハードルを越えられないようなら、それこそ問題だ。

 

プレゼンテーションは「交換の場」だ

 

さあ、プレゼンテーションだ。あなたがプレゼンター、英語で“presenter”だ。テレビなどで「プレゼンテーター(presentator)」という言葉を聞くが、これは英語としては大間違い。気をつけよう。

 

プレゼンターであるあなたには、そのプレゼンテーションでどうしても達成したい明確な目的がある。それがビジネスプレゼンテーションだ。相手があなたのプレゼンをよく理解してくれて、納得してくれたら、あなたの仕事は一歩前進だ。言語化スキルと因果分析やイシュー分析を含む論理的思考力のフル活動が要求される。

 

相手にも相手なりの考えはあるはずだ。相手の表情をよく観察し、相手の思いを想像しつつ、相手が理解できるように話すべきだ。相手の意見を引き出すのもプレゼンターの努めだ。そう、プレゼンテーションは「一方通行」では意味がない。目的が達成されないからだ。プレゼンテーションとは「交換の場」(図.3)であるとの心得が重要である。コミュニケーションスキルが下支えすることになる。

 

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第2章 プレゼンテーションは「内容」か、「伝達率」か?

 

プレゼンテーションの成果は?

 

プレゼンテーションの「成果」は、「内容」と「伝達率」の掛け算である(図.4)。「内容」は、準備したプレゼンテーション資料の良し悪しのこと。その内容をどれだけ聞き手に伝えることができたかが「伝達率」だ。「伝達率」は「伝え方」と言い換えてもよい。

 

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問題:図.4で、AとB、どちらが優れたプレゼンテーションといえるだろうか?

 

 


 

 

 

問題:ビジネスプレゼンテーションを指向するわれわれは、「内容」と「伝達率」のどちらをより重視すべきだろうか?

 

 


 

 

最近、とみに流行っている本2冊

 

サイトの図.5に掲げた2冊は、最近、かなり流行っていると思われる。まずは、中谷彰宏氏の『なぜ、あの人は人前で話すのがうまいのか』(ダイヤモンド社、2007年)という本。帯に「情報が1割、伝え方が9割」とある。

 

 

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もう1冊は、佐々木圭一氏の『伝え方が9割』(ダイヤモンド社、2013年)。明らかに中谷氏のコピーのパクリであるが、同じ出版社の本だから著作権問題にならないのだろう。2冊に共通するのは、「内容」が1割、「伝達率」は9割、ということだ。そこでもう一度問いたい。

 

 

問題:ビジネスプレゼンテーションを指向するわれわれは、「内容」と「伝達率」のどちらをより重視すべきだろうか?

 

 


 

 

TEDのプレゼンターはなぜうまいのか?

 

「TEDのプレゼンテーション」はご存知のことと思う。“Technology, Entertainment, Design”の略で、各界の先端の人たちがプレゼンテーションを披露する場である。詳しくはウィキペディアを参照いただきたい。

 

前の部で提示した宿題だ。宿題では以下に示したURLのプレゼンテーションを見ていただいた。

 

エド・ヨンのTEDのプレゼンテーション

 

 

宿題:なぜエド・ヨンのプレゼンテーションは素晴らしいと思うのだろうか。

 

 


 

 

どうだろう、賛同いただけるだろうか? 私なら躊躇なく言う、TEDのプレゼンターに共通しているのは「情報が9割、伝え方が1割」と。すなわち私は、中谷氏と佐々木氏の真逆を言っているわけである。どちらの意見に与するかは、あなた次第としておこう。

 

「内容が1割、伝達率が9割」の背景にあるもの

 

1点だけ、両氏に共通することを指摘しておこう。両氏とも博報堂――かの一流広告代理店――のコピーライター出身ということである。

 

彼らはクライアント企業から、CMのタレントに誰を起用すべきかとか、新商品のコピーを何にすべきかという依頼を受ける。A案とB案、どちらがいいかの選択は大変難しい。結局のところ、プレゼンターの言葉の勝負で決まることになる。こういう世界で成功を収め、独立したのが彼らである。彼らはその成功体験をもとに「内容が1割、伝達率が9割」と言っているのだ。彼らの喋りは生業の一部である。

 

皆さんの多くは、コピーライターとは相当違う仕事をしている。言葉の勝負だけではどうにもならない世界で仕事をしているという意味だ。そう、あなた方はTEDのプレゼンターと同じ世界に住んでいるのだ。広告代理店とはまったく違う世界だ。

 

状況はもっと悪い。皆さんは忙しく、プレゼンの伝え方の準備に多くの時間を割くことなどできないはずだ。こういう状況下で、どのようにプレゼンをするかが課題である。

 

「内容」に自信があるかないかが勝負の分かれ目だ

 

言葉の勝負、すなわちプレゼンテーションに挑む場面になった。われわれは忙しい毎日の中で資料の準備をし、当日を迎えることになる。TEDのプレゼンターのような事前準備に使える時間は本当に限られている。

 

そんな中で、われわれが心得るべきは、「情報が9割、伝え方が1割」である。われわれが心がけるは、プレゼンテーションの資料の準備である。以下では、説得力ある資料のつくり方について述べることになる。

 

あなたはプレゼンで伝えたい何かを持っている。準備した資料の内容に自信があるなら、伝達率、すなわち伝え方など気にする必要はまったくない。あなたの伝えたいという意欲は必ず前面に出てくる。その熱は必ず聞き手に伝わる。あなたは緊張しているかもしれない。しかし、その緊張は、内容に自信があるなら、「自信のなさ」ではなく「真剣さ」に映るはずだ。

 

だから、プレゼンテーションそのものを心配しないことだ。あとはちょっとしたコツさえ覚えておけばよい。これに関しては、「プレゼンテーションスキル(後半)」に譲る。

 

なぜプレゼンは苦手だと思っているのだろう?

 

多くの人は、プレゼンテーションを、「伝達率」すなわち「伝え方」のことだと思っている。あがってしまう、滑舌が悪い、自信が持てない、エーとかアーとかが多い、時間をオーバーする、聞き手の目を見るのがこわい、などなどはすべて「伝え方」に属する。だから、プレゼンは苦手だと思っているに過ぎない。

 

もう、苦手意識は払拭していただきたい。そして、9割の「内容」に集中しよう。内容がいいものに仕上がれば、上に書いた心配のほとんどは霧消する。

 

以上の賛同が得られたとしよう。であるなら、以降の章はすべて、説得力のあるプレゼンテーション資料のつくり方に関してだ。「内容が9割、伝達率が1割」の「内容」の話である。

 

 

※本編は体験版のため、第2章までの公開となっております。続きは是非書籍『ビジネススキル』にてお読みください。

 

 

 

 

体験版:第5部(前半)を読んだ後は...

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2016年4月16日 第1版発行

2018年5月9日 第2版発行

 

著 者 佐久間陽一郎(C)

発行者 株式会社スキルアカデミー

〒113-0034 東京都文京区湯島3-20-6-1305

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