実践 サプライチェーン・マネジメント(SCM)

産業プロセス全体の最適化は実現できる

著者:原 吉伸

eブック概要
「サプライチェーン・マネジメント(SCM)という言葉を聞いたことがない!」という人はいないと思うが、そのとらえ方は人それぞれでかなりバラツキがある。

SCMを物流やロジスティクスの延長線上の概念としてとらえている人がいる。また、在庫削減・コスト削減の1つの手法として理解している人、部品や資材調達、及びサプライヤー管理の業務プロセスとして理解している人もいると思う。しかし、それはみな限定的なとらえ方だ。

また、マネジメント手法としてのSCMとITツールとしてのSCM(ここでは、“SCMソフトウェア”と呼ぶ)を同一のものとして理解している方もいる。IT企業がテレビコマーシャルで、“SCM買いませんか!”と大々的に宣伝したため、間違った理解をしている人が意外に多いのである。

1990年代、SCMが登場した背景には、「部分最適から全体最適へ」という考え方があった。

企業は、一般に縦割り組織で構成されている。営業部や生産部など組織ごとに作成した部門目標に向かって努力するだけでは部分最適に陥ってしまう。部品のサプライヤーや卸売業者、小売業者などの外部の取引先を巻き込んだ横串を通し、「全体の物の流れをマネジメントする」ことが経営課題として急速にクローズアップされたからである。

特に、1990年代後半に、デル・コンピュータ社が強力な戦略パートナーシップを構築し「スピード経営を実践する“デル・ダイレクトモデル”」を掲げ、パソコン業界で急成長を遂げ、SCMが一気に広まった。

私はSCMの範囲を企業内にとどめず、小売店や卸売業者、部品・資材サプライヤーなどを含めた産業プロセス全体に広げて考えている。またSCMは単なるコスト削減ではなく、Make Moneyの考え方も合わせ持つ。つまり、“企業経営そのもの”としてSCMを位置づけている。

つまり、SCMは、原価管理や在庫管理、利益管理、調達・生産管理、需要予測・販売管理などの経営管理全般の基礎知識の上にSCMのコンセプトを構築している。会計の知識も必要である。

読者の中には、会計知識に不安を抱える方もいると思うが、心配はいらない。本書の中でSCMの基礎知識を確認しながら進めて行くので、安心してほしい。

私は、1999年にダイヤモンド社から、「導入 サプライチェーン・マネジメント~パッケージソフトを活用したスピード経営の実現~」を発行した。あれから約15年になる。

今回15年の歳月を経て、SCMを取り上げたのは、2つの理由がある。

1つ目は、SCMは15年の歳月を経てもTOC理論(Theory of Constraint: 制約理論)に裏打ちされた、理論的根拠に基づく色あせないマネジメント手法であること。いつの時代にも通用するSCMを広く普及させたいとの思いを持ったこと。

2つ目は、20数年前に言われ始めた「グローバル化」と今のそれとの違いから「グローバルSCM」に関する記述が必要であると認識したこと。

これまでは「グローバル化」は、安い労働力を求めて生産拠点の海外展開であった。今の「グローバル化」は、新興国が消費市場としての魅力を持ち、新興国市場のニーズに合った製品を開発し、現地企業から部品・材料を調達、その製品を現地で製造・販売する、いわゆる地産地消へと変わってきた。

こうしたグローバル市場で地産地消型の事業展開をする企業が求めるSCMを、「グローバルSCM」と呼んでいる。

”SCMは企業経営そのもの“というとらえ方をしているので、本書は経営層、事業責任者及びそのスタッフの方を主な読者対象としている。

しかし、企業経営においては「サプライチェーン変革の実現」を達成するスピードが要求されている。そしてそれが競争力となっている。ライン部門の方々、私の希望としては、調達・生産、物流、販売、情報システム、海外事業部門などの各機能の実務担当者が意識向上の材料として本書を活用していただきたいと思っている。

本書は以下の目次で構成している。1部から順に読んでいただきたいが、SCMに関する知識をすでにお持ちの方は、好きなところから読んでいただいてもかまわない。
著者略歴
原 吉伸電気通信大学卒。Case Western Reserve Universityシステム工学で修士号。
アーサーD・リトルなど外資系経営コンサルティング会社を経て、2003年企業のコアとなる業務プロセス改革と企業研修を支援するオフィスHaraを設立。日本工業大学技術経営研究科客員教授。
製品開発マネジメントとサプライチェーン・マネジメント(SCM)を専門とし、プロセス設計や意思決定の仕組み作り、ITツールの導入、マネジメント研修などを実施。自動車業界や電機・電子業界、コンピュータ・通信機器業界での経験が豊富。中堅・中小企業に対する支援が多い。

主な著書
 「導入 サプライチェーン・マネジメント」 ダイヤモンド社 1999
 「高収益革命のデザイン」(共著) ダイヤモンド社 1993
 「戦略情報システム」(共著) 講談社 1989

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