実践 サプライチェーン・マネジメント(SCM)

第2部 原価管理の基礎

著者:原 吉伸

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「はじめに」
まず、簡単な計算式を考えてみよう!

売上総利益は、一般に粗利益(あらりえき)と呼ばれ、以下の計算式で求められる。
売上総利益(粗利益)=売上-原価   (式1)

この利益を増やすためには、売上を増やすか、それとも原価を減らすか、その両方を行うか、ということになる。

一般に、売上を増やすことは、市場の動向や顧客ニーズなどコントロールしにくい(又はできない)要素に大きく影響を受ける。まず、自社でコントロール可能な原価管理をうまく行って原価を減らすことを考える。

原価管理は、まず、原価の実態を把握すること。その上で適切な対策を取って原価を低減することである。つまり、原価低減に向けてPDCAのサイクルを回すこと、原価の「見える化」と原価低減策がポイントである。

原価は、材料費、労務費、経費の3要素で構成されている。しかし、製品戦略や利益改善計画を作成する場合は、原価を以下の式で捉えるのが良い。つまり
   原価=変動費+固定費

ここで、変動費は、売上の増減に比例して、増えたり減ったりするコストのこと。材料費や外注費が主なものである。一方固定費は、売上の増減に関係なく発生するコストのこと。労務費や減価償却費が該当する。

原価要素を変動費と固定費に分類し、損益分岐点分析(原価と販売数量、利益の相関関係を分析し、売上と原価が一致する点を算出することで企業の利益構造を把握する手法のこと)を行う。

これにより、「どのくらいの数量を販売すれば、利益がでるのか」、「変動費である材料費や外注費をどれくらい減らせば、利益が増えるのか」、「利益を出すためには、固定費である労務費をどれくらい減らす必要があるのか」などのシミュレーションが可能になる。製品戦略の策定や利益改善計画を作成するのに効果がある。

原価を変動費と固定費に分類すること、そして損益分岐点分析などの使い方を学習することは、製品戦略の策定に大きな効果がある。SCMを社内に導入する場合、損益分岐点分析は重要なポイントであるので第4部で再掲する。しっかり理解していただきたい。

一方、(式1)の売上は、以下の計算式で求められる。
   売上=単価×数量

つまり、売上を増やすためには、単価を上げるか、それとも数量を増やすか、その両方を行う、ということになる。

当然のことながら、単価を下げて販売すれば、相当な数量を販売しないと、同じ売上を確保することはできない。例えば、製品単価が100円、販売数量が100個の場合、単価を20%下げて80円とすると、同じ売上を確保するためには、販売数量を125個(25%増加)に増やす必要がある。

一般に製品単価を下げて販売しても販売数量が期待通りに増えるとは限らないので、単価を下げることは大きなリスクを抱えることになる。販売数量の問題だけでなく、製品のブランドイメージを損ねたりもする。

薄型TVが価格競争に巻き込まれ、極めて短期間に、日本企業の多くが市場から撤退を余儀なくされたのは記憶に新しい。単価を上げることは現実問題として難しいが、一方で、製品単価の下落は大変恐ろしい事態を招くので、要注意である。

ここで単なるコスト削減ではなく、コストの上昇分を補って余るくらい製品価値を高めることで目標とする利益を達成しようとする考え方もある。第5章でご紹介するが、原価企画とも呼ばれる経営管理手法の1つで、製品開発の初期段階からトータルコストをマネジメントする考え方である。

第2部は、原価の基礎として、様々な原価計算方法を紹介する。財務会計分野で使われている、全部原価計算方式の問題点を指摘した後、全部原価計算方式とスループット会計方式でプロダクトミックスの問題を解いて、両者を比較する。スループット会計は、TOC(Theory of Constraint:制約理論)に基づく SCMで使われる計算方法である。ここでは、実際の計算式に数値を当てはめて考えていただく。

また、原価を変動費と固定費に分類して考えることで解ることや、損益分岐点分析や限界利益(または貢献利益とも呼ぶ)の使い方やその有効性を学ぶ。具体的な原価計算方法を学ぶことに注力するのではなく、原価計算の結果をどのように捉えるのか、その結果をどのように使えば良いのか、そういった点に力点をおいて解説する。最後に、システム構築に役に立つBOM(Bill of Material:部品表)を学習した後、原価低減だけでなくトータルコストマネジメントの考え方を紹介する。

第2部を読み終えると、会計知識に不安を持っていた人も原価に関する興味が沸く。自信もつく。一旦、自信がつくと、企業経営にも興味が持てる様になる。経営者の立場や考え方にも理解が持てる様になる。

第2部で学ぶ「原価管理の基礎知識」は、原価管理を体系的に整理したものではなく、SCMを理解する上で特に、必要な部分を中心に取り上げたものである。原価管理を網羅的・体系的に学びたい方は、他の専門書もご覧いただきたい。

「目次」
はじめに
第1章 原価の基礎を学ぶ
  原価の分類
  原価計算の目的 
  原価計算の種類
  全部原価計算方式の問題点
第2章 スループット会計で、プロダクトミックス演習を解く
  前提
  全部原価計算
  スループット会計
  検討結果
第3章 システム構築で役立つ、BOM(Bill of Material)を学ぶ
  BOMの定義と目的
  BOMの構造
第4章 原価を「見える化」し、原価低減を行う
  原価管理部門の役割 
  原価の「見える化」と原価低減
第5章 トータルコストマネジメントで、単なるコスト削減競争からの脱却
  コストマネジメントに関する課題
  原価企画で活用される4つの考え方

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