SCMプロジェクトは、在庫削減を具体的な達成目標に掲げている場合が多い。「平均在庫回転日数を現在の1ヶ月から1週間に短縮する」とか、「現在の在庫量を30%削減する」といったものだ。
在庫回転日数は、「今持っている在庫は、何日分の出荷に相当するのか」ということである。「一定期間に、在庫がなん回転したか」を示す、在庫回転率もよく使われる。
SCMでは、在庫は重要なマネジメントの対象であり、在庫管理はまず、在庫の実態を「見える化」し、様々な在庫削減対策を通して、在庫を必要最小限に抑えることである。
在庫は、現金(キャッシュ)が姿を変えたもの。売れ残ってしまったもの、緊急の出荷要請に対して準備をしておくもの、需要を見誤って生産しすぎたもの、あるいは、トップ企業としての供給責任から在庫しておくもの、など在庫保有の理由は様々であるが、在庫自体はキャッシュを生み出すものではない。
キャッシュフロー経営(キャッシュの流れを把握し、市場・環境変化やリスクに対応した経営を行うこと)を標榜するSCMにおいては、「どれだけのキャッシュを投じて、どれだけのキャッシュを獲得したのか」で評価される。在庫管理・削減が重要なのである。
第3部は、在庫の基礎として、在庫の功罪(在庫の良い面、在庫の悪い面)や、在庫の種類、在庫の把握方法について確認する。続いて、物流センターでの在庫補充業務をイメージして、在庫管理のコアである発注(補充)量計算を学ぶ。また、SCMでは在庫削減を強調するが、「なぜ、在庫削減が必要なのか?」について議論した後、在庫削減のトータルアプローチを紹介する。
第3部を読み終えると、“なぜ、在庫削減が必要なのか!”について、自分なりの考えが形成される。それを期待している。SCMの立場からは“在庫削減がテーマ”ではあるが、現在の事業において「在庫との向き合い方・接し方」を見つけていただきたい。それは、決して在庫管理のテクニックだけを学ぶことではない。
第3部は、在庫管理を体系的に整理したものではなく、SCMを理解する上で特に、必要な部分を中心に取り上げたものである。在庫管理を網羅的・体系的に学びたい方は、他の専門書もご覧いただきたい。