この図表は、国内自動車業界の生産・販売・輸出の推移を表したものである。2008年10月のリーマンショック、それに続く、東日本大震災やタイ国の大洪水、円高、株安、そして欧州通貨危機と数え上げただけでもこれほどの災害や経済危機が起きている。
当然のことながらリーマンショックを堺として、国内自動車の生産は大きく落ち込み、それと連動するように輸出も落ち込んで、まさに“想定外”の結果となっている。販売はよく見ると2002年頃から減少傾向を示しており、国内販売は低迷しているのが解る。
皆さんは、需要予測は当たると思うか? 有効だと思うか? そして需要予測で何ができるだろうか?
需要予測の外れには、2種類あり、それは常に共存していると考えられている。つまり、1つ目は、誤差をなくすことができるもの。この場合、多様な情報を組み合わせることで精度を上げることができる。2つ目は、誤差をなくすことができないもの。努力しても精度を上げることはできないが、どの程度外れるのかを見積もることはできる。
本書では、需要予測は、「過去の需要実績データから将来の需要を予測する」という考えに基づいているので、当たらないことが前提。目的に応じて予測の仕方・要求される精度が変わり、基本的には継続して需要のある製品(少なくとも過去2年分のデータがあること)が需要予測対象である、との立場で、解説を行う。
第9部は、需要予測モデルを紹介する。移動平均モデルや指数平滑モデル、ウィターズモデル、回帰モデルなど。予測精度の向上策や特殊な場合として、新製品の予測や間欠的需要(需要がない月が続いたかと思えば、突然需要がある月もある、つまり、需要があったり、無かったりするような需要のこと)の場合についても解説する。
また、「需要予測は当たらないことが前提」との考えに従えば、予測が外れた場合の対応を予め考えておく必要があり、需要変動への対応方法やマネジメントの考え方を紹介する。
そして、最後に需要予測システムを導入する場合、特に予測モデルを検討する場合に必要となる考慮ポイントを6つ紹介する。
第9部を読み終えると、需要予測の重要性と同時に難しさを理解した上で、SCMで極めて重要な需要変動にどの様に向き合えば良いのか、どの様にマネジメントすれば良いのか、について理解を深めることができる。
今回が、このシリーズの最終回である。SCMの基礎知識として生産、原価、需要予測・販売からSCMコンセプト、グローバルSCMなどを学んだ。この知識を読者の皆さんの実務で生かして頂きたい。