本部と次の第8部の2回にわたって貸借対照表(B/S)について説明する。
B/Sは財務3表の中でも兄貴分とも言うべき大事な書式であるが、会計の初心者には分かりにくい項目がぞろぞろ出てくる。例えば、「繰延税金資産」などというのもそのひとつだ。
税金が資産になるのか? それに「繰延」というのが、何の事なのか分からない。
B/Sは一種の「だまし絵」だから「気をつけろ」と言う人もいるぐらいに、うっかりしているとコロッとだまされてしまう危険性を孕んでいる書式でもある。
私がまだ前職の駆け出し銀行員であったころ、このB/Sが「たまらなく好きだ」という妙な先輩がいた。自分の椅子にそっくり返って、取引先企業のB/Sをジーと眺めている。やがてニターと笑って、「やりよったなー」とつぶやく。その様子は気味が悪い変人そのものだが、この先輩からいきなりツッコミを入れられたことがある。「お前、B/Sは何故バランスするのか分かるか?」 そんなこと急に聞かれたからといって分かるわけがない。あなたはどうだろう。この部を読んでゆく過程であなたなりに答えを探して欲しい。
この答えは、この部の最後で紹介することにしよう(答えのヒントは、例の「試算表」にある)。
B/Sについては、実に様々、説明すべき点があるのだが、ここでは最低限これだけは知っておいて欲しいという点に限定して説明しよう。