皆さん、こんにちは! ネットエイジグループの西川潔です。 私が1998年に創業したネットエイジは、インターネットビジネスの事業育成会社、いわゆる「インキュベーター」です。ネットベンチャーを次々と世に産み出すのをお手伝いするのが仕事です。その後2004年に持ち株会社になり社名もネットエイジグループとなりました。
私は数多くのベンチャーが産声を上げる瞬間に立ち会ってきました。
起業したばかりの外部の会社に投資もしていますから、そういった会社を立ち上げた起業家の方と株主の立場でお付き合いもしています。
また、私の会社ネットエイジに入社したひとたちのなかには、将来起業家になることを目指し、自分のビジネスアイデアを社内で実現し、スピンオフして起業家になった仲間が何人もいます。
さらに、私自身が起業家ですし、日本のネットベンチャーが注目を浴びるきっかけとなった「ビットバレー構想」の発案者でもありますから、たくさんの有名無名の起業家たちとのお付き合いがあります。
とまあ、こんな環境で日々暮らしていることもあって、私はいつも考えています。
「起業とは何だろう?」と。
そしてさらにもうひとつ。
「なぜ、もっと多くの人間が、起業を目指さないのだろう?」と。
なぜ、私がそう思うのか。
それは自分の周りの起業家たち、そしてなにより自分自身の仕事を振り返ってみて、起業して会社を立ち上げ、成功をものするほど楽しいことはない、と実感するからです。
こんな楽しいこと、そして成功すれば社会に役立つことを、もっと多くのひとにやってほしい。そう思って蕃いたのが本書です。
そう、タイトルが表すとおり、本書は起業人生の素晴らしさを説く「起業おすすめ本」です。
いままでの日本では「起業」という道を選ぶひとは、どちらかといえば例外的な存在でした。学校を卒業したあと、どこかの会社に入り、サラリーマンとして一生をすごす。そんなひとたちが大半を占めてきました。
「当たり前だろう。そんな簡単に起業なんかできるわけないじゃないか」
そうおっしゃる方もいるかもしれません。
たしかに、起業するのはサラリーマンになるのとはわけが違います。かんたんな仕事ではありません。
しかし、もしあなたが実は「起業家に向いている人間」だったとしたらどうでしょう。
ほんとうは起業の才能があるにもかかわらず、きっかけをつかめず、あるいはそもそも起業する気がまったく起こらず、結果として起業せず、一生を終わる--。これはあなた本人にとってはもちろん、あなたが起業した会社が存在したかもしれない社会にとっても、非常にもったいないことなのです。大いなる機会損失なのです。
もちろん、起業にリスクはつきものです。特に30代の「失うものが多い」優秀なビジネスパーソンほど、「起業しよう」と決断するのはなかなかむずかしい。
そこで本書では、段階を踏みながら、起業への道へ読者の皆さんをいざないます。
まず、起業家とはどういう人間なのか?
起業家になるにはどんな資質が必要なのか?
起業にあたってはどんなリスクがあるのか?
起業が成功すれば、どんな喜びを手にできるのか?
起業の道へ足を踏み出すにはどんな決断が必要なのか?
……答えはすべて、本書の中に書いてあります。
それから、ご存知ですか?
起業家の立場から見るとここ5年ほどで日本のマーケットは大きく変わりました。
ベンチャー企業むけの株式市場が新設され、紆余曲折はあったものの、すっかり定着しました。その結果、起業に欠かせない資金調達方法が多様化しました。
端的に言うと、優秀なビジネスパーソンがリスクをコントロールしながら独立し、自らの会社を立ち上げ、比較的短期(創業後5年程度)で株式上場する、ということが現実となったのです。
90年代半ばまでの日本では考えられないことでした。起業にカネを出してくれる投資家は限られており、資金調達はもっぱら銀行からの借り入れが中心でした。短期間で起業し、そのうえ上場するというのは夢の夢でした。
それがいまでは、知恵と勇気と仲間と運があれば、本格的な起業のシナリオを米国並みに短期間で組み立てることができるようになったのです。
けれどもこの起業環境の大変化を知るひとは、当の起業家たちを除くと、まだまだ少ないのが現実です。
あなたが考える以上に、今の日本は「起業に適した市場」なのです。
本書は3部構成にしました。
第1部は立志編です。あなたが起業を決心するために必要なことを書きました。
「はじめ」がなければ次はありません。最初の第一歩を踏み出すのは大変です。とりわけ起業を決心するのはとても難しい。
そこで私自身の起業経験にもとづき、読者の皆さんご自身がさまざまな角度から起業の意義をきっちり理解できるよう、具体的に記しました。
起業家という仕事の楽しさ、スリル、リスク、そして起業人生の実態をこれでもかこれでもかと繰り返し描写しました。やや重複したところもありますがご容赦を。あなたが「起業しようか、どうしようか」と迷っているなら、そのくらい繰り返して「洗脳」することが必要だ! と思うのです。
第2部は実践編です。日本における起業をとりまく環境はこの5年で劇変しました。端的に言えば、以前は一匹狼のアウトロー型の起業家が多かったのですが、ここ数年、一般のビジネスパーソンから起業家へ転身するひとが増えています。
先に記したように、投資家から大型資金を調達し、株式公開を視野にいれて起業することが以前に比べ非常にやりやすくなったのです。アメリカなどでMBAを取得したビジネスパーソンの食指が動くような環境が急速に整備されたのです。
この環境変化の実態をぜひ知っていただきたい。
そこで第2部の実践編では、新しい時代の新しい起業のありかたをステップバイステップで解説します。
第3部は私の起業ストーリー編です。私が自分の会社をいかにスタートしたか、そして、世間で注目を集めた(あるいはお騒がせした?)「ビットバレー」のことを書いてみました。多少、私の会社の宣伝もさせていただいております。
この本が、皆様の起業家人生へのきっかけとなり、また、我が国の起業家精神の高揚、ひいてはそれに繋がる起業家主導経済による日本の活性化にすこしでも役立つことを願って上梓します。
ようこそ、素晴らしさ起業家ワールドへ!
21世紀5年目の春に
株式会社ネットエイジグループ 創業者 西川 潔