意思決定は、経営会計の最も重要な柱である。「意思決定に役立たなければ経営会計ではない」と言ってもよいくらいだ。
では、経営会計でことさら意思決定が強調されるのは何故なのだろう?
答えは簡単である。財務会計では適切な意思決定ができないだけでなく、誤った結論を導く危険性があるからだ。
ところで経営会計の手法を使って意思決定を行う場合にはあなたが普段、耳にすることがない奇妙なコスト(原価)が登場する。「埋没原価」、「差額原価」といった類いだ。
その昔、シカゴ大学で経済学を教えていたクラーク(J.M. Clark)教授は、外部報告のために作成されたコスト・データ、つまり財務会計によるコスト・データを外部報告以外の目的に使用すると相手に誤ったシグナルを与える危険性があるから、「異なる目的には異なるコストを使え」として「埋没原価」のような特殊な原価を使うことを提唱した。
以来、クラーク先生のこの言葉は、経営会計の世界での「常識」になっている。
今回は色々聞きなれない原価(コスト)、会計学で言う所謂「特殊原価」を取り上げる。最初は戸惑うかもしれないが、分かってみると何やら「意思決定」が楽しくなるから不思議だ。