日頃、我々が話題にする「利益」、マスコミ等が取り上げる「利益」、つまり損益計算書に記載されている利益は、「会計上の利益」、つまり「会計利益」である。しかし、これとは異なる「経済利益」(または、「経済的利益」)とよばれる利益概念があり、経営会計の世界では、「会計利益」よりもむしろ「経済利益」の方が重要な意味合いを持つ場合がある。
損益計算書に記載される利益は、すべて「企業会計原則」と呼ばれる会計ルールに則って計算された「会計利益」("Accounting Profit"略して"AP"という)である。「企業会計原則」については、(注)を参照してほしい。
この「会計利益」("Accounting Profit" 略してAP)は、会計上の「収益」から「費用」を差し引いて計算されるが、この「費用」の中には実際に現金で支払われた費用のほかに、現金支出を伴わない費用である引当金(例えば貸倒引当金)や減価償却費なども含まれる。これは、既述のとおり、「財務会計」の大原則である「発生主義」、「実現主義」に基づく会計処理のなせる業であるが、これだと、必ずしも、経営の実態を正確に反映しているとは限らないから、これをベースにして経営判断を行うと、判断を誤る危険性がある。
財務会計データだけに頼った企業経営の危うさが懸念される所以である。
こうした「危うさ」を回避しようとして最近、注目されているのが「経済利益」だ。
今回は、この「経済利益」について考えてみよう。