実践人間関係資産論

第1部 人間関係は資産なのだ

著者:井野 弘

「はじめに」
本講座は、今まで全く議論されずにきた「人間関係を資産としてとらえる」ことを基本としている。その資産としての価値を活かすことによって有益な成果を引き出す方法を理解し実践することが狙いである。

現実の仕事や生活の中で、無意識または、いやおうなく処理している人間関係が、実は我々自身の生き方にとてつもない影響を及ぼしている。その事実をじっくり考え、取り組み方を工夫することによって、今まで思いもしなかった力の源泉となるのである。

最近はやりの「XX力」風にいえば、「人間関係力」といった表現になる内容である。しかし、日常的な人とのつきあい方とか、特定の人との関係性の改善とか、こじれた人間関係の解決方法とか、他人とうまくやる方法をどうすればよいかといったことに絞ったものではない。そういう関係性の奥底、根底の部分に踏み込んだ取り組みである。

対症療法でなく、本質療法を目指したものである。自分と人との関わり全体をながめ直し、整理し、冷静なふり返える。その結果を今後の生き方、活かし方に反映する。本講座を読んだ後に誰もが、「元気の出てくる人間関係」として、前向きになれる考え方と方法を整理し、実践できる方法を提供する。

そもそも人間関係とは何か? ネット検索の大辞泉によれば、「集団や組織内における人と人との関係。特に成員相互の間の心理的関係をいう。ヒューマンリレーションズ」とある。

あなたの人間関係という場合、あなたと集団や組織における他の人との心理的関係ということになる。確かに普通だれにとっても、人との最初の関係は特定の集団や組織に属するなかで接点や関係ができる。ただ、一度できた人間関係は、その集団や組織に属する間はもちろん、そこを離れても続くことも重要な事実である。

目先の今現在の関係性だけでなく、人間の一生を通したものになることをしっかり受け止めることが必要である。今からの未来に対しても、濃厚な影響を及ぼすことが特に重要である。また、心理的関係であるから、あなた自身および相手の人の心、感じ方、考え方が中心になることも重要なポイントである。

本講座では、以降「人間関係」を「人との関わり」、「人と人の関係」といった程度のレベルでとらえ、表現することにする。

人は誰でも他の人との「人間関係」と無関係であることはできない。生きていく限り、互いに他の人に対して気をつかいあうし、あるときはそれぞれに悩みや問題の原因にもなる。そして生きる上で作法や思いやりや大切な関心事にもなる。助け、助けられ、生きる糧になりえるのも人間関係である。よくも悪しくも人間が社会の中で生きる基本になっている。生きるためのインフラのひとつといってよい。

そして人間関係の最も難しいことは、それぞれの人がそれぞれの感情の動物であることである。相手により状況によって感じ取ること、考えること、そして反応、対応などが同じでない。個々の感情そのものについての微妙な動きまで含めて科学的に解き明かすことは不可能である。微妙な人それぞれの心理や感情に基づいているため、場当たり的で思わぬ反応をされることも起こりがちであり、大変難しい特性を持つ。それゆえ、ひとつひとつの人間関係は科学する対象としては、最も難しいもののひとつである。

本講座を通じて私が言いたいことの一つは「人間関係を前向きにとらえよう!」ということだ。人間関係はそもそも心理的なことが大きな要素である。そのため、漫然と成りゆきのままに受け身でとらえ対応すると、いろいろな悩みや問題に直結することが多くなる。逆に積極的に活用する意識をもつことによって、大きな力を発揮させることもできる。

考え方を少し変えるだけで、受け身一方の問題が、積極的に一つずつクリアし、さらに意図した結果を獲得できる、楽しく取り組める「課題」となる。もちろん、単に前向きになるだけで終わりではない。前向きにとらえた上で、人間関係を価値あるものに高めていく方法が必要になる。そのための答えを提供するのが本講座である。

あなたの将来を少しでも、より実り豊かで楽しいものにしたい。そのために、今まであまり意識せず、冷静に考えたことのなかった、あなたの他の人とのつながりを「タカラノヤマ」ととらえる。考え方を受け身一方または無関心から、前向きに、冷静さを意識して、しかも積極的に考えるように変えるのだ。それだけで、日々の仕事や将来の可能性が大きく変わってくることに気づいてほしい。そして、今すぐにその考え方で一歩を踏み出してもらいたい。その根拠と方法は本講座の中にある。

本講座は次の5部構成になっている。順を追って理解することによって、今までになかったあなたの新しい有益習慣が身につくことになる。本書は第1部である。

実践人間関係資産論 第1部 「人間関係は資産なのだ」
実践人間関係資産論 第2部 「人間関係資産論全体像」
実践人間関係資産論 第3部 「人間関係資産の見える化」
実践人間関係資産論 第4部 「人間関係資産の活用」
実践人間関係資産論 第5部 「人間関係資産の増大」

尚、ここでいう資産は、会計学上の定義に沿った意味ではなく、広い意味で使用している。

人間関係を論じる識者や書物は多いが、本講座のような前向きの視点で整理をしたものは前例がない。そのため、特に若人々が本講座を早い時期に理解し実践すれば、今後の人生において新たな価値を生む大きな武器として役立つこと間違いない。
「目次」
はじめに
第1章 あなたの人間関係は?
あなたの人間関係は?/ あらゆる人が人間関係を持っているあなたの仕事上の人間関係は?なぜ人間関係は資産であることにこだわるか?
第2章 人間関係は資産なのだ
人間関係のとらえ方「人間関係は資産である」という主張 
第3章 人間関係資産は役に立つのか?
事例:あるコンサル業務受託の場合
第4章 人間関係資産論は功利的すぎるか?
功利的すぎるか?親の七光りは人間関係資産か?人脈と同じか?人的資産との違いは? 
第5章 「自分マンダラ」概要
「自分マンダラ」とSNSとの違いは?「自分マンダラ」ツールWebでアクセス会員登録
理解度チェックテスト
おわりに

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