第1部、第2部と、公務員組織を取り巻く様々な環境について触れてきた。公務員が能力を伸ばし、仕事で成果をあげるための道筋を示すというこの講座の狙いに入る前に、「そもそも公務員とは」という問いに答える内容を心掛けた。昨日までは「お役所仕事」へいかにも陥りそうな環境であり、明日からは職場そのものが消滅しかねない瀬戸際が迫ってくるという、なんとも難しい変化の最中に公務員組織は今あると言ってもよいだろう。そうした中にあって、なおかつ能力を伸ばし、仕事で成果をあげる道筋などあるのだろうか、そう思った読者も少なくないかもしれない。しかし、恐れる必要はない。そのためにこの講座はあるのだから。
この第3部では、そうした道筋を実際の事例から直接紐解く前に、公務員に限らず仕事に必要な能力とはなんだろうか、という入り口をかいつまんで紹介したい。これは、能力開発に経験の深い読者には既知のことであるかもしれない。しかし、多くの読者にとっては能力の深層へ触れることになるだろう。それは、多くの能力論では等閑視しがちな人間の根源的な行動欲求である"動機"まで包含しているからだ。公務員がどういった能力を開発すべきなのか、ついで能力を開発するには具体的にどうしたらよいのか、という問いに答えるには、どうしても能力の深層を探らなければならない。なお、より専門的に能力やキャリアを理解したいという読者には、講座『能力のプロファイリング編』と『キャリアプランニング編』を勧めたい。