この部では、公務員における管理職(係長、課長、部長など)のあり方を考察する。具体的にDさん、そしてEさん、二人の事例を取り扱うが、Dさんの事例では管理職としてチームをどう作り上げてゆくかを(チームビルディング)、Eさんの事例ではEさんそのものの管理職像もさることながら、Eさんを指導した上司の姿をEさんの目を通して明らかにしたいと考えている。なお、ここでも第4部や第5部同様に、彼らが発揮したと思われる能力要素を と( )書きで示してある。そして、この二人の事例の中から、管理職(リーダー)として必要な能力とは何かを探ってゆく。
ここまで一般職員(スタッフ)で整理した能力のあり方は、管理職(リーダー)になればまた違った形を見せる。それは、管理職は一般職員と比べて、はるかに多様な利害関係者に囲まれているからだ。この傾向は、管理職としての職階が上がれば上がるほど強くなる。利害関係者の中には、第1部で触れたような首長や議員、あるいは住民という難しい利害関係者も含まれている。それだけに、一般職員とは違った能力を一層高いレベルで発揮しないと、多くの利害関係者に納得のいく成果はあげられない。
また、あなたは第6部で動機や価値観と職務要件のずれがストレスという深刻な事態を招きかねないことを知った。しかし、そうした事態は一般職員より管理職において発生しやすい。なぜならば、職務要件も管理職の方がはるかに複雑であるからだ。管理職こそストレスに苛まされやすいという前提に立ち、さらにあなたが一般職員であるならば、あなたは管理職のチームビルディングを支えることの重要さも知るべきだろう。チームビルディングは管理職の力だけでできるものではなく、チームを構成するすべての一般職員も関わっている。そのチームビルディングがうまくゆけば、管理職の抱えるストレスのかなりの部分は軽減できる。また、管理職のストレスを軽減できれば、チームがスムーズに機能する可能性は増え、一般職員であるあなたもやりやすくなる。そのために一般職員が発揮すべき能力の一つがチームワークであることは言うまでもない。いわば、管理職(上司)がリーダーシップを、一般職員(部下)がチームワークを発揮してこそ、チームビルディングは成就することになる。また、あなたが既に管理職であるならば、Dさん、Eさんの事例は十分参考になるはずだ。そして、これまでの事例やグーグルの"プロジェクト・アリストテレス"から管理職が強く意識すべきチームビルディングの具体的なあり方を探りたい。では、先に進むとしよう。