『バランスシート(貸借対照表、B/S)は、何故、左右、つまり貸借がバランスするのか?』
いきなり妙な質問で、恐縮である。「バランスするからバランスシートじゃないか。つまらない質問をするな」と叱られそうだが、実はこの質問に戸惑って「はて、どうしてだろう?」と考え込んでしまう人が意外と多い。私自身、ふいを突かれて答えに窮した経験がある。答えは「複式簿記」の根底をなす「貸借平均の原理」にある。
複式簿記ではビジネス取引をその二面性、つまり原因と結果に分解して「仕訳」を行う。「原因」と「結果」を「借方」(左側)と「貸方」(右側)に分けて計上するわけだが、金額で見る限り「原因」イコール「結果」だから、必ず、「借方金額」イコール「貸方金額」となる。これを、「貸借平均の原理」という。こうして仕訳された取引の金額を合計すれば、貸借が一致した「試算表」が作成され、さらに決算手続きを経て、バランスシートが作成される。だから、バランスシートの貸借合計額は必ず一致する。そこには何の不思議もない。
このように、バランスシートには、元来、左右がバランスするというユニークな特徴があるため、これを利用して色々な「細工」ができるのだが、こうした「細工」を施すと、B/Sから様々なことが分かってくる。今回は、「細工されたB/S」からはどんなことが見えてくるのか、B/Sの裏にはどんな「景色」が隠されているのか、考えてみよう。
今の若い人たちの口調で言うのなら、B/Sを「イジって」みたらどうなるか、という話である。