企業会計番外編

第6部 「ROE」と「市場の神話」について考える

著者:宇野 永紘

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「はじめに」
 上級編第19部で紹介した"The Quest for Value"(G. Bennett Stewart,Ⅲ、Harper Business,1991(注参照)に"Market Myths"と題する1章がある。ここで言う"Market"とは、株主市場などの「資本市場」のことであり、"Myth"は、普通、「神話」と訳されるが、「作り話」、「架空のお話し」という意味もある。「市場関係者の間でまことしやかに語られ、信じられている『架空話』」という意味になる。市場に関わっている投資家や市場関係者が日頃、抱いている誤った認識、つまり「美しい誤解」と解して構わないだろう。

 注:上級編でこの書籍に言及したとき、私は邦訳本がないと申し上げたが、これは誤りであった。その後、調べてみたら、全訳ではないものの原著14章のうち12章を訳したものが1998年に東洋経済新報社から刊行されている。邦題は「EVA創造の経営」(訳者:河田剛ほか)となっている。お詫びして、訂正する。

 ところで、世の中には「ROEを経営指標として活用すべし」とする人が多い。「ROE」とは、今更、説明するまでもないが、"Return on Equity"の頭文字を並べた略語で、「株主資本利益率」とか「自己資本利益率」と呼ばれている「資本効率」を測る指標だ。わが国の会計関係者や経営評論家はもとより企業経営者の中にもこの「ROE」を経営指標に掲げた経営姿勢、所謂「ROE経営」を志向する人が少なからずいる。特に、2014年8月に経済産業省が発表した通称「伊藤レポート」(補記1参照)で、わが国企業は「最低でも8%のROEを達成すべし」という提言がなされたこともあって、その後、「ROE重視の経営姿勢」志向が高まっている。

 しかし前掲書の著者であるスチュワート氏によれば、「ROE」を信じたり、これを重視することは図らずもこうした神話を信じてしまうことの代表例であり、氏は「ROE重視の経営姿勢」に対して強い警鐘を鳴らしている。

 となると、私のような浅学菲才の身には、一体、どちらが正しいのか分からないし、こうした相反する議論に対して、どう対処していったらよいのか、困惑するばかりだ。
 今回は、このあたりに関する私自身の考えを整理してみたい。
 あなたも一緒に考えてほしい。
「目次」
ROEとその3要素
「伊藤レポート」で脚光を浴びる
ROEは簡単に操作できる指標!
スチュワート氏の主張
ROAを使うべき?
「キャッシュ・リターン」なら問題ないのか?
そこで提言、「"NOPAT"を使ったら?」
補記

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