企業会計番外編

第9部 「老人と『箱』」のお話し

著者:宇野 永紘

価格 ¥200(税別)

ログイン(新規登録)して購入

「はじめに」
アメリカの経営コンサルティング会社で、"EVA"の「総本山」とも言えるスターン・スチュアート社の創業者のひとりであるジョエル・スターン(Joel M. Stern)氏には面白い逸話がある。彼がまだシカゴ大学の学生であった頃、知り合いの「グロサリー」(食料品・日用品雑貨の小売店。日本の小型スーパーのような存在)の老オーナーから、「君は大学で何を勉強しているのかね」と尋ねられた。「はい、会社の『価値』を計算するにはどうしたらよいのか、勉強しています」と答えると、「そんなこと、わざわざ大学まで行って勉強することかね。明日、ワシの店へ来なさい。見せてあげるよ」という。

翌日、半信半疑のジョエル青年が件のオーナーを訪ねると、彼がシガーボックス(葉巻を入れる木製の箱)を持ってきて、これが「ワシの店の価値だ」と言う。見ると箱の中にはドル紙幣や小銭が入っている。箱には店の売上金が入ってくるし、ここから仕入れ代金が出てゆく。お客さんへ支払う釣銭もこの箱の中から払われる。何のことはない。この箱は、店の「金庫」ないしは「レジスター」の役目を果たしている。この老オーナーに言わせれば「箱の蓋が閉まらないほど現金が詰まっていれば、店の価値は「上昇中」、反対に箱の中身が底をつくほど少なくなっていれば、価値は「下落している」のが分かる、という。簡単明瞭、「現金残高」イコール「店の価値」、である。「成程、一理はある。しかしなぜか釈然としない」、これが、その時のジョエル青年の率直な感想であった。

この老オーナーの場合には、「キャッシュ残高」が、お店の「価値」、というわけだ。しかし、現在、われわれが馴染んでいる金融経済学の世界で、この理屈が通用するだろうか?「店の価値」を上げようとしたら、単純に「キャッシュ」を貯めこめばよいことになる。本当にそれでよいのか?どうもそうではないような気もするのだが、本当のところはどうなのだろう。

以上は、スターン氏の著書"The EVA Challenge"(Joel M. Stern & John S. Shiley, John Wiley & Sons, Inc.,2001、邦訳本はない)の冒頭の一節である。
我々も、この疑問について考えてみよう。
「目次」
企業評価には3つのアプローチがある
「純資産」イコール「企業価値」イコール「現金残高」?
「発生主義」VS[現金主義]
このオーナーの主張の問題点:未来志向の欠落
「価値」は「未来」からやってくる
「キャッシュ」と「キャッシュフロー」
何故、「キャッシュフロー」なのか?
シガーボックスの中身の正体は?
「価値」を生み出すFCF
将来FCFの「現在価値」が企業の「価値」
「老人と海」

価格 ¥200(税別)

ログイン(新規登録)して購入

<< eブックへ戻る

 ページ上部に戻る

Copyright © 2020 Skill Academy Inc. All Rights Reserved.