標題につけた「孝」は、「考えてみる」といった程度の軽い気持ちを表すもので、特に深い意味があるわけではない。
私の場合、貸借対照表の左側に「繰延税金資産」などという奇妙(?)な名称の科目が現われたり、あるいは損益計算書の「法人税等」のすぐ下に「法人税等調整額」が現われたら、「さては、税効果会計が使われているな」と思いつく程度の「見識」しかない。大体、私たちシニア世代が「会計」と格闘していた時代には「税効果会計」などという「代物」は、この世に、存在しなかった。だから、「分からなくて当然だ」と言い張ったところで、何やら「引かれ者の小唄」みたいになってしまって、洒落にもならない。
「リーマン・ショック」があったのが約10年前の2008年、さらにその10年前の1998年からしばらくの間、わが国の会計体系に「革命的な」変革が矢継ぎ早に発生した。マスコミ的には「会計ビッグバン」などと呼ばれた一連の制度改革である。具体的には、連結財務諸表の重視、金融商品の時価評価、キャッシュフロー計算書の作成、退職給付会計、減損会計の採用であり、これに「税効果会計」の導入が加わる。こうした一連の「改革」により、言わば「周回遅れ」状態にあったわが国の会計制度もようやく会計先進国並み体裁をとることになった。裏返せば、それ以前の会計、つまり私たちシニア世代が学んでいた会計は、海外の識者から見たら、「世界基準」には程遠い「古色蒼然」たる会計だったことになる。
ところで、「財務会計」とは、企業の「当期利益」を確定するプロセスであるが、このプロセスに、突然、「税務会計」なるものが割り込んでくる。今まで乗っていた列車に別の列車がやって来て「無理やり」(?)連結されるような感じだ。そうなると、企業会計上の「利益(損失)」を語るときに「税務会計」を無視するわけにはいかなくなるのだが、本シリーズは、基本的に「企業会計」を対象にしているから、基本的に財務会計と経営会計(管理会計)をカバーしてきた。しかしそうなると、「税務会計をどうするのか」という問題が出てきてしまう。
あなたが会社の経理部門に属して「税務」に携わっていれば話は別だが、「税務会計」というのは一般のビジネスパーソンにはあまり縁のない領域だろう。だから、今回は、ビジネスパーソンとして最低限、これだけは押さえておきたい税務会計の基本的ポイントと、それが最終利益の計算にどう影響して来るのか、という点にフォーカスしてみたい。要は、「税効果会計」という、何やら「わけのわからない」会計手法の正体に迫ってみたい、というわけである。