第14部で「時価会計」をとりあげた際に「デリバティブ」(金融派生商品)の会計処理にも「時価会計」の考え方が適用されると説明した。そのときには、紙幅の関係から「デリバティブ」関連の説明を省略して次の機会に譲る旨を約束したが、「武士に二言はない」というわけで、今回、その約束をしっかりと果たしたい。今回は、言わば、第14部の続編である。
「デリバティブ」とは、本来、英語の"derivative"であり、「誘導品」とか「誘導体」を意味する。ちなみに高校数学の「微分」でお目にかかった「導関数」も英語では"derivative"という。本来、「あるもの」から導き出された「別のもの」を意味する。「金融商品」から導き出された別の商品というわけで、わが国では「金融派生商品」などと呼んでいるが、実務の世界では「デリバティブ」と呼ばれることが多い。「金利スワップ」とか「通貨スワップ」といった所謂「スワップ取引」が金融実務の世界に登場した1980年代後半以来、金融の世界で頻繁に取引されている「商品」であるためか何やら新しいものように受け取られがちだが、「デリバティブ」の一種である「外国為替の先物予約」は、「デリバティブ」などというカタカナ用語が使われるずっと以前から輸出入代金の決済に活用されてきている。だから、その歴史は、かなり古い。
ちなみに江戸時代の享保年間(概ね、「徳川吉宗の治世下の18世紀前半)、大阪の堂島で行われていた「米の先物取引」は「世界最初の先物取引」と言われている。これは、まぎれもなく「デリバティブ」そのものである。となると、発祥地は日本の大阪ということになる。
「デリバティブ」は、それ自体が「商品」として売買される以外に企業が抱える資産や負債が抱えているリスクである金利変動リスクや価格変動リスクを回避・軽減するために使われることが多い。つまり、「ヘッジ」目的での使用であるが、その場合、この種の取引を会計上どう処理するのかが、分かりにくい。そんなわけで、今回は、現在わが国で実践されている「デリバティブ会計」と「ヘッジ会計」について考えてみたい。