企業会計番外編

第18部 「退職給付会計」考(その2)

著者:宇野 永紘

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「はじめに」
 前回の第17部では退職給付会計の基本的な考え方について「退職一時金」を例にとって説明した。今回は、退職給付のもう一つの形態である「企業年金」も視野に入れて、さらに説明を加えてみたい。

 ズバリ一言で言ってしまえば、「退職給付会計」とは、現在在籍中の従業員の皆さんに「退職一時金」および「企業年金」を今すぐ一度に支払うとしたら、その原資が「いくら足らないのか」(または足りているのか)を貸借対照表上で明らかにするための会計である。全従業員に一度に支払うなどということはあり得ない話だから、どうでもいいように思えるが、そうはゆかない。株主をはじめとする利害会計者(ステークホルダー)にしてみれば、企業がその支払原資をどの程度確保しているのかが気になるところだ。会社にとって相当の負担になっているなら、尚更気になる。したがって当然、この点を「明確に開示せよ」ということになる。これは米国会計基準や国際会計基準が従来から強調してきた点なのだが、わが国の会計基準も最近、これに倣ったものに改訂されてきた。

 それはそれとして、この会計で厄介なのは、わが国の場合、単独企業の財務状態を明らかにする「個別会計」と企業グループのそれを対象にした「連結会計」で会計処理の仕方が違ってくる、という点である。私などは「一緒にしてしまえばよいのに」と思うのだが、会計関係者の考え方は違うようだ。

 17部でも説明したとおり、この会計では「予測値」(見込み額)が会計処理の出発点になる。世の中、まず予測通りものごとは運ばないのが常だ。そこには当然、ズレ(差異)が発生する。「差異」が発生してしまったら、これも会計上はきちんと処理しなければならない。おまけに「予測値」そのものが変わってくることすらあり得る。そうなったら、もう済んでしまった筈の会計処理までもう一度見直して、改めて処理し直す必要がある。あれやこれやで企業の経理関係者の皆さんにしてみれば「いい加減にしてほしい」と言いたいところだろう。

 でも「会計基準」というのは融通がきかない。常に、基準に則った会計処理を求めてくる。特に「連結会計」における「退職給付会計」で発生する「退職給付に係る調整額」の処理が問題になるのだが、この金額がやがて「包括利益」の計算に関係してくる。まずは、本稿中の「ワークショップ」でとりあげる「ケーススタディ」に着目していただきたい。何故そうなるのか、その理由がわかってもらえるはずである。
「目次」
いきなり、ワークショップ!
「ワークシート」をつくってみる
問題は期末の数字
「個別」と「連結」では、呼び名が違う!
「未認識」部分の扱いが違う
個別会計での開示は不十分?
「未認識債務」も開示すべき
改めて「連結会計」方式とは
「包括利益」との関係
「退職給付に係る調整額」は「包括利益」の一部
再び、ケースに戻ると

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