第4部では、20名の先行事例をご紹介した。ここで改めて、各事例からの学びをまとめてみよう。
以下はそれぞれの方の、①主な転機、②キャリアチェンジを可能にしたトランスファラブルスキル、③読者へのアドバイス、の3点である。
まず「①主な転機」について。人事異動、病気、出向などの転機は、誰にでも起こりうる。ここで紹介した方々に共通しているのは、もし不本意な異動や出向だったとしても、自分が成長するチャンスとして、転機を前向きに捉えていたことであろう。
また、自分の将来キャリアを折りに触れて考え、転機が来たら、転職、独立、早期退職などのキャリアチェンジを主体的に実行できるように準備していた点も、多くの方に共通していた。40代に入るくらいの時期から、「人生後半のキャリアの方向性」を考え始めることが大切である。
次の「②キャリアチェンジを可能にしたトランスファラブルスキル」については、特定の業界経験や専門知識に加えて、コンピテンシー(高い成果を生み出すために、行動として安定的に発揮される能力)が軸になっている場合が多い。
先行事例の方々のトランスファラブルスキルとして抽出されたコンピテンシーは、目標達成志向、チャレンジ精神、向上心のようなマインドセットと、コミュニケーション力、人間関係構築力、プロジェクトマネジメント力のようなソフトスキルに大別される。
キャリアチェンジには、「それまでの経験を活かす場合」と、「新しい仕事にチャレンジする場合」の大きく2つの方向性がある。このどちらを選択するかで、それまでの業界経験や専門知識の活用レベルには違いがある。
最後の「③読者へのアドバイス」については、多くの方が「目の前の仕事に一生懸命取り組み、結果を出し続ける」と話していたことが印象的である。つまり、そのときの仕事で成果を出しつつも、次のキャリアを常に考えておくことが重要である。
そして、本テキストの「序」でご紹介した『ライフシフト』で著者リンダ・グラットン教授が述べているように、人生100年時代のキャリアには、「正しい答」がある訳ではない。「自分で選んだ道が正しい」と信じて、自分のキャリアを進んでいくことが肝要なのである。