ビジネス運営上のルールには、成文律と不文律があります。成文律は定款や社則、労働協約など、文章として表現されている取り決めです。一方、不文律とは、文章ではどこにも表されていないにもかかわらず、組織に属する人びとの行動を支配している暗黙のルールのことです。
組織文化を所期の姿に刷新するには、成文律を変えるだけでは足りません。組織の不文律を解明し、それを再設計することが必須です。組織文化を変えることは容易ではありません、しかし、不文律をよく理解するなら、必ずや組織文化は変えられるのです。
社員をドライブしている「動機付け構造」を3つのエレメント――モチベーター、エネ―ブラー、そしてトリガーの3つ――に分解することで、新しい「動機付け構造」の再設計が可能になります。再設計できたら、あとは新しい動機付け構造にもとづく行動を取り続けるのです。半年後、1年後、周りの行動が少しずつ変わりだしていることに気づくはずです。
なお本講座は、野中郁次郎、佐久間陽一郎、他著『イノベーション・カンパニー』(1997年1月、ダイヤモンド社刊)の「第四章 イノベーションの組織風土をつくり上げる」を底本とし、佐久間陽一郎が加筆、アーサー・D・リトル(ジャパン)株式会社が2000年に刊行したものです。内容に一部古い記述が含まれますが、この講座の目的とする組織文化を刷新するための方法論としては、現在においても完璧に通用するものです。従って、一部の古い記述もそのまま残すこととしました。
自社の悪いところを議論していて、「これは我社の文化だからなあ」と原因が文化に行き着くと、思考停止に陥るものです。この思考停止の壁を乗り越え、逆にコントロールできるようになるのが、不文律分析だと言えます。まずはあなたの身の回りで、不文律分析をやってみて下さい。非常に有効な経営ツールであることがお分かりいただけるはずです。
はじめに 第1章 日本の組織は「不文律」で動いている
日本は不文律の国/米国はルールで動く/なぜルールがその通りに機能しないのか
第2章 「不文律」を浮き彫りにする
不文律を構成する3つのエレメント/不文律の分析方法/特徴ある複数のグループで構成される組織/「平方根のルール」
第3章 「不文律」で組織を解剖する
表層的な分析/事は、もう少し深刻である/本当は、さらに深刻である
第4章 元気な米国企業から学ぼう
元気一杯の米国企業の「不文律」/米国ベンチヤーの動機付け構造/ヒューレット・パッカード社の動機付け構造
第5章 日本企業の組織文化を変える「変革ポイント」
変革ポイントとしての「失敗」の扱い方/日本企業でも実現出来る/理解度チェックテスト/おわりに