平成の元年、1989年は昭和の時代を終え、大きな希望を持って始まりました。東京証券取引所の12月末の日経平均株価は38,915円まで上昇し、翌年には4万円を超すという高揚感につつまれていました。しかし、それは大きな幻想であったことが明らかになりました。後にはバブルと呼ばれた泡のような期待でした。日本はその後、株式、不動産などの資産価値の崩壊に苦しむことになります。
一方、日本の外側では地球規模での大きな地殻変動が起きていました。ソビエト連邦が解体され、資本主義陣営と共産主義陣営の対立のなかで分断されていた世界が繋がり、巨大なグローバル市場を生まれつつありました。1978年に鄧小平が始めた中国の改革・解放政策は1990年代にはWTOへの加盟を契機にさらに大きな推進力を持ち発展していきました。米国では情報通信革命が始まりつつありました。アップル、マイクロソフト、デルコンピュータやサン・マイクロシステムズのような会社が勃興しました。流通業界ではウォルマートが快進撃を始めました。この会社は1980年にはダイエーの売り上げの20%という地方スーパーでしたが、1990年は3兆円、1999には9兆円の売り上げへと快進撃を続けました。ルイ・ビトンやミッタル・スティールなどのM&Aを基軸に短期間に巨大なエンタープライスを築く会社が登場しました。ファイナンス業界ではブラックロックなどの投資運用会社やカーライルなどの企業再生ファンドが生まれました。
企業経営の在り方も根本的な改革が進みます。会社の業務運営をゼロベースで再設計するリエンジニアリング、今のティール組織につながる社員主導のラーニング・オーガニゼーション、そしてこの本の主題であるコンピテンシーという人材育成における革新的なアプローチが開発されました。
この世界が躍動を始めた平成の最初の10年間である1990年代、日本のビジネス世界では何が起こっていたのか、時計の針を逆に戻して振り返り、反省をしてみたいと思います。