OKRとは?基礎知識や注目背景、メリット、よくある課題について解説! - 株式会社スキルアカデミー

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OKRとは?基礎知識や注目背景、メリット、よくある課題について解説!

OKRとは?基礎知識や注目背景、メリット、よくある課題について解説!
  1. OKRとは?
  2. OKRとMBO、KPIの違いは?
  3. OKRを導入するメリット
  4. OKRを導入するステップ
  5. OKRを活用する際のよくある課題
  6. まとめ

OKRは、GoogleやFacebookといった米国シリコンバレーの大企業での導入・成功を契機に、日本においても花王やメルカリを筆頭に普及が広がっています。OKRでは、革新的な目標設定・管理ができ、社員の生産性向上の実現が可能です。

本記事では、OKRの基礎知識や注目されている背景、メリット、よくある課題などについてご紹介します。OKR導入を検討中の方や導入後の運用にお悩みの方、必見です。

OKRとは?

OKRとは、目標管理フレームワークの1つで、以下の略称を指します。

O:Objective(目標)
KR:Key Results(成果指標)

OKRが通常の目標設定と異なる点は、組織全体の目標管理をおこなうことで組織として成果を挙げることを目指す組織マネジメント手法であることです。OKRは、個人の目標よりもチームや組織の目標とその進捗管理が重視されます。また、「目標設定・進捗確認・評価・改善」の一連の流れを高い頻度で行うことも特徴の1つです。

これらにより、同じ目標を共有するメンバー全体の統一意識が高まり、組織一丸となって優先順位の高い課題の解決を目指します。その結果、従業員のパフォーマンス向上を狙うことができます。

OKRの基本

OKRの基本は、まず企業全体の重要な達成目標(O)と成果指標(KR)を決定することです。ここからは、Google re:WorkのOKRガイドを参考にそれぞれの要件を見ていきましょう。

Oで掲げる目標には、以下の要件があります。

  • チャレンジ性の高い大きな目標にする(ムーンショット目標)
  • 1ヶ月~3ヶ月(四半期)で達成可能な目標にする
  • 多くても3~5個の目標に留める
  • 到着点や状態を示す具体的な指標にする(「山を登る」「パイを5つ食べる」等)
  • 60~70%の達成で成功と認定する

また、KRのポイントは、以下の通りです。

  • 1つのO(目標)に対し、3つのKR(成果指標)を設ける
  • 行動ではなく、成果を定義する
  • 数値で管理できる定量的な指標/到着点や状態を示す指標を設定する
  • 0~1.0で成果を評価(例:KR1は0.5点)

そしてOKR共通のポイントは以下の通りです。

  • 社内全員で共有・進捗管理
  • 成果で従業員を評価しない

「成果を定義」については、「商品Aの広告をする」ではなく「商品Aの広告をし、商品について理解してもらう」といった具合に、ある行動の成果をKRとして設定します。

また、KRは定量的な指標にこだわる必要はなく、「新しいマーケティングキャンペーンを開始する」のように定性的なものでも構いません。この場合、KRの成果評価は0か1.0の二択になります。Googleは、実態の反映と評価方法の一貫性を重視しているようです。

OKRの例
O 製品Aの月間売上を1,000万円にする
KR1 セミナーを3回行い、製品Aを参加者に認知してもらう
KR2 多様なチャネルでセミナーの宣伝をし、セミナーに500人集客する
KR3 セミナー後、参加者全員に電話やメールでフォローする

OKRが注目される背景

OKRが注目される背景は、以下の3つにあります。

  • 目標の柔軟性が高い
  • 目標をスピーディに達成可能
  • 売上が向上する

OKRは、従来の年単位の目標と異なり最長で3ヶ月程度の短期的な目標です。このため、目標を柔軟に調整ができ、市場の変化や技術進展により日々激減するビジネス環境に適応することができます。

また、実現可能な難易度に調整された目標を組織全体で追いかけるため、目標をスピーディに達成可能です。

さらに、Sears Holdingsの調査(2013~2014年)では、OKRを導入した企業群において1時間の平均売上が導入前の14.44ドルから15.67ドルまで向上し、年間の売上は平均8.5%向上したことが判明しています。

これらが、OKRが注目されて日本でもメルカリやSansanなどを筆頭に導入が相次いでいる背景です。

OKRとMBO、KPIの違いは?

ここまでOKRの解説をしてきましたが、MBOやKPIとの違いが分からず混乱している方もいるかもしれません。本章では、これらの違いについて見ていきます。

OKRとMBOの違い

OKRと類似のものとして、経営学者のピーター・ドラッカーが提唱した「MBO(Management by Objectives:目標による組織管理)」という概念があります。OKRとの違いや共通点は、以下の通りです。

目的 個人目標共有範囲 評価頻度 計測方法
OKR ・生産性向上 組織全体 月数回 定量的・定性的
MBO ・生産性向上
・従業員評価
一部の社員 年数回 定量的・定性的

上記に加え、OKRでは掲げたムーンショット目標に対して60〜70%の達成度合いを成功と判定し、MBOでは100%達成が成功の条件となります。

MBOは目標を通じて組織を管理し目標到達を狙う手法であり、OKRは目標共有により組織を統一することでパフォーマンス向上を狙う手法です。

OKRとKPIの違い

OKRとKPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)の主たる違いは、目指す目標の達成率です。目標までのプロセス計測を目的とするKPIの性質上、進捗率100%が基準となります。一方、OKRは主に従業員のパフォーマンス向上を主たる目的としているため、進捗率は100%である必要はなく60〜70%が基準となります。

OKRを導入するメリット

OKRの導入により、以下のようなメリットがあります。

  • 大きな目標設定が可能
  • 目標の柔軟性が高い
  • コミュニケーションの活性化
  • モチベーションやエンゲージメントの向上

本章では、その詳細について見ていきます。

大胆な目標設定ができる

OKRの特徴的な点は、達成後の利益性の高い大きな目標を追いつつも、従業員に過度の負担がかからない仕組みになっていることです。掲げた目標の100%の達成は目指さず、成果による従業員の評価もしません。

このため、エンゲージメント低下や離職などのリスクを回避しつつも、大胆なムーンショット目標に向かって組織一丸となり、仕事に取り組めます。

目標を柔軟に変更・調整ができる

OKRは、評価のサイクルが1ヶ月〜四半期(3ヶ月)と短期間のため、目標の柔軟性に長けています。目標達成に向けて取り組む中で、当初設定したものよりも優れたプランが見つかることがあるでしょう。そうした場合に、変更・調整が容易に行え、無駄なく効率的に目標を追えます。

社内コミュニケーションの活発化

OKRは、従業員が企業の上層部の意思決定・指示に従う、トップダウンの管理手法ではありません。個人やチームが抱えているタスクや問題は全体共有され、どのように処理・解決していくのかを組織全体で話し合います。この過程で、組織全体のコミュニケーションが活発になるのです。

ProFuture株式会社の調査(2016年)では、調査に参加した229社のうち、約8割にも及ぶ企業が「コミュニケーションに課題がある」と答えました。

社内コミュニケーションの調査

出典:HR総研

OKRを用いてコミュニケーションを活性化させれば、社員同士の協力が増し、タスク消化や問題解決が迅速になります。ひいては、競合他社よりもスピーディーに事業を進展させられるでしょう。

モチベーションやエンゲージメントの向上

OKRで立てられた目標は、大きな目標であるものの達成可能性が高い点も特徴の一つです。また、一社員の課題は社員全体の課題でもあり、社内間の仕事のウェイトに不公平が生じづらいOKRは、組織の連帯感を高める効果も見込まれます。これにより、モチベーションやエンゲージメント(組織や仕事への愛着度)の向上が期待できるでしょう。

リンクアンドモチベーションが2018年に行った調査では、従業員のエンゲージメントスコア(ES)が高い企業ほど、営業利益率が高くなることが判明しています。

エンゲージメントスコア(ES)と当期の営業利益率との相関性

出典:株式会社リンクアンドモチベーション

OKRを導入するステップ

STEP1:企業、部門、個人の順に目標と成果指標を決める

まず初めに、企業の目標と成果指標(以下、OKR)を設定します。その際、経営者による独断でOKRを設定するのではなく、従業員の意見も取り入れることが望ましいでしょう。企業のOKRが完成したら社内各部署と共有します。どのような背景や目的からOKRを設定したのか各部門が企業OKRに十分に納得することが重要です。その後、部門のOKR、個人のOKRの順に設定していきます。部門OKRは、他部門のOKRや企業OKRと整合性が取れているか、また実情に即した目標になっているのかを確認しましょう。個人OKRにおいては、部門OKRを満たすOKR設定ができているか、上司やチームメンバー間で確認し、必要があれば調整していきます。

STEP2:定期的に進捗確認ミーティングを行う

OKRでより良い成果を上げるため、週に1回、または隔週に1回進捗確認のためのミーティングを行います。代表的なミーティング例は以下の通りです。

  • チェックインミーティング
    週の初めに行うミーティングで、OKRの進捗度や達成の自信度、その週の優先事項、達成阻害要因、やるべきことを確認し、方策についてディスカッションする。
  • ウィンセッション
    週の終わりに行うミーティングで、一週間の進捗と成果を共有し、結果の良し悪しに関わらずチームメンバー間でポジティブなフィードバックを行う
  • 1on1ミーティング
    上司と部下が1対1で行う面談で、部下は自身のOKRの進捗や課題について共有し、上司はフィードバックや解決に向けた働きかけを行う

その他、OKRを設定した期間の中間地点で、目標の進捗状況を共有し、方向性のずれがないかを確認、必要に応じて目標の見直しをする中間レビューを行うことも一般的です。

STEP3:振り返りと評価を行う

OKRを設定した期間の最後に達成度を確認し、OKRの結果を評価するとともに振り返りを行います。OKRは、ムーンショットとも言われる非常に高い目標を設定することで大きな成果をあげようとするものであり、60~70%の達成度が基準となります。結果の要因を分析し、達成度が高すぎたり低すぎたりしていないかを確認します。 そしてその結果をもとに、次期のOKRを設定します。目標レベルを適切に設定することは容易ではないので、これらのステップを繰り返していくことで、精度を上げることを目指すのです。

OKRを活用する際のよくある課題

OKRを導入したものの十分な成果を上げられないケースもあります。ここからは、効果的なOKR運用を妨げる要素について見ていきましょう。

社員に浸透していない

上層部がOKRを設定したものの、OKRの性質や目的の理解が不十分なことにより、社員からの理解が得られないケースもあります。OKRは、短期間でPDCAを回すムーンショットな目標であることが特徴ですが、これが上手く機能するのはあくまでも社員に浸透し、意思統一ができている場合に限ります。トップダウンの要領で、上層部が決定した目標を従業員に押しつける形になると、現場からの不満が募りOKRが破綻する恐れがあります。

目標の難易度が低すぎる

OKRでは、達成が容易で得られる利益の低い目標を設定することは不適切です。社内の全リソースを割いて目標達成を狙うため、達成により大きな価値を得られる目標であることが重要です。OKRでは、達成後に組織に大きな変化が生まれるような目標を掲げましょう。

MBOとの違いを理解できていない

MBOとの違いを理解できておらず、OKRという体裁でありつつも実態はMBOである場合もOKRが上手く機能しません。OKRでは以下が重要です。

  • 共有範囲:社内全体
  • 評価頻度:月に数回
  • 計測方法:定量的に計測
  • 理想的な達成度:60~70%
  • 従業員評価:しない

MBO形式で、少数のメンバーのみで目標が共有されたり、評価頻度が年に1〜2回程度であったりする場合は、OKRで思うような成果を得るのは困難でしょう。

KRが多すぎて優先度がつけられない

効果的なOKRの運用では、成果指標(KR)の絞り込み(2〜5つ程度)と優先順位付けが大切です。これらが不十分である場合、目標の進捗への影響が大きい重要なものに十分なリソースを割けません。また、KRの数が多くなるほど、進捗管理のウェイトが重くなったり、社員への浸透性が薄まったりします。まずはKRを思いつく限りリストアップし、その中で優先順位をつけ、重要度の低いものはKRから外しましょう。

まとめ

OKRでは、会社全体でチャレンジングな目標に向かって課題を共有し合うため、社員の連帯感を高められます。これにより、モチベーションの向上やコミュニケーションの活性化、エンゲージメントの向上などが期待できます。導入の際には、OKRとMBO・KPIの違いを理解し、日々の進捗管理やフィードバックを徹底しましょう。正しくOKRの運用を行えば、思うような成果を得られるはずです。

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記事監修

前田 正彦(まえだ まさひこ) 株式会社スキルアカデミー 代表取締役CEO
前田 正彦(まえだ まさひこ)
株式会社スキルアカデミー 代表取締役CEO

慶應義塾大学経済学部卒業。米国マサチューセッツ工科大学経営大学院(Sloan School of Management)修了。株式会社前田・アンド・アソシエイツ代表取締役(現職)。
株式会社NTTデータにて金融システムの開発に携わった後、 数々のコンサルティングファームにて、戦略立案から実行・定着までのプロジェクトを数多くリードしてきた。
その後人事・組織コンサルティングの必要性を痛感し、当該分野のプロジェクトを立ち上げ、戦略から人事・組織コンサルティングまで一貫したサービスを提供している。
スキルアカデミーにおいては、代表取締役CEOとしてAI人事4.0事業全体の推進をリードするほか、組織・人事・人材開発などの案件を数多くリードしている。
また組織診断・管理特性、職務等級制度・成果報酬制度などツールを開発。グローバル人事プロフェッショナル組織であるSHRM認定資格を取得。

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