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心理的安全性が低い職場とは?その要因や影響から高めるための施策までを徹底解説

心理的安全性が低い職場とは?その要因や影響から高めるための施策までを徹底解説
  1. 心理的安全性とは
  2. 心理的安全性が低い職場の特徴
  3. 心理的安全性が低いことが職場に与える悪影響
  4. 心理的安全性が低い職場になってしまう原因
  5. 心理的安全性を高める方法
  6. まとめ

「自社の心理的安全性が高いのか低いのか気になる」「低い場合には原因や対処法を知りたい」といった悩みを抱える企業も、少なくないのではないでしょうか。

職場での心理的安全性を高めることは、パフォーマンスや生産性の向上につながります。一方で心理的安全性が低い場合には、組織に損失をもたらし、それは想像以上に大きなものとなってしまうことも…。

本記事では、心理的安全性に関心のある方に向けて、その基本的な概念や、低い場合にはどのような問題が生じるのか、また、なぜ心理的安全性が低くなってしまうのかを解説します。心理的安全性を高めていく方法もご紹介していますので、ぜひ最後までご覧ください。

心理的安全性とは

心理的安全性とは、組織の中で自分の意見を安心して発言できる状態を指します。職場に置き換えると、上司や部下、同僚といった立場に関わらず、気兼ねなく意見を出せる状態や組織といえるでしょう。

日本では、心理的安全性について、コンプライアンス的な視点から語られることが少なくありません。しかし本来は、よりイノベーティブで斬新なアイデアを生み出すために用いられる考え方を意図します。

プロフェッショナル集団の中でさらに生産性を向上させ、斬新なアイデアを出すために活用していくものです。

心理的安全性が低い職場の特徴

心理的安全性が低い職場の代表的な特徴として挙げられるのは、以下の3つです。それぞれの特徴と自社の状況とを照らし合わせ、該当する点がないかを確認しましょう。

  • 従業員が積極的な意見や発言を控える職場
  • 従業員に自主性がない職場
  • 従業員の挑戦に対し否定的な職場

従業員の発言頻度が低い職場では、心理的安全性が低いことがあります。そうした環境に陥りやすいのは、誰かが何かを提案してもネガティブな意見ばかりが返ってくるケースです。年功序列の意識などから若手の社員に期待しておらず、アイデアを出しても検討することなく、提案が無視されてしまうケースもあるようです。
そうした職場では、心理的安全性は低くなります。

また、従業員の挑戦を好意的に捉えない職場も、心理的安全性が担保されていないといえるでしょう。会社や自身の成長のためにチャレンジをしても、評価されるどころか否定的なフィードバックがされるような環境では、従業員の挑戦意欲は失われてしまいます。

従業員の自主性が欠けるケースも、要注意です。自主性に関しては、メンバー一人ひとりの性格や意欲の問題と捉えられることも多いですが、職場が自主性を奪っているケースも少なからずあります。従業員が主体的に取り組んでも「指示にないことをするな」「上司に確認しろ」といった指摘が返ってくることが多い場合、自主性は損なわれていきます。

心理的安全性が低いことが職場に与える悪影響

心理的安全性の低さは、職場にネガティブな影響を及ぼします。
具体的には、以下の4つがよく見受けられる問題です。

  • 従業員エンゲージメントが低くなる
  • 創造的なアイデアや意見がでない
  • 個人のパフォーマンスや組織の生産性が低くなる
  • 情報共有が鈍くなりミスの早期発見ができない

それぞれの問題に対する理解を深めることで、早急に対処をしやすくなります。

従業員エンゲージメントが低くなる

心理的安全性が低いと、従業員エンゲージメントの低下につながるリスクがあるでしょう。
従業員エンゲージメントとは、社員が自社の戦略やビジョンを理解し、会社に対して貢献しようとする意欲の度合いを示す言葉です。

心理的安全性が担保されていない環境では、従業員が本音で話しづらくなります。自分の意見や考えを率直に話しづらい職場では、もし不満があったとしても、そのことを発信しづらいものです。それにより、問題を抱えていても解決が期待できず、ストレスが溜まることから、エンゲージメントも下がってしまいます。

エンゲージメントの低下は、社員の士気低下や、離職率の悪化にもつながります。

創造的なアイデアや意見がでない

心理的安全性が低い職場では、創造的なアイデアや意見が生まれづらくなることも問題です。何か発言をしても否定や批判されることの多い環境では、「自分のアイデアや考えを否定されてしまうかもしれない」という思いが強くなります。結果として自身の意見を発する頻度が減り、組織において権力のある上司の意見や考えに依存してしまいやすくなるのです。

社員一人ひとりがそうした状態に陥ると、権力のある人のみが意見を出すようになり、若手の視点ならではの斬新なアイデアを育む機会が減ってしまうでしょう。若手が優れたアイデアを持っていても、環境の問題によりアウトプットができなければ、それは組織にとって大きな損失となります。

個人のパフォーマンスや組織の生産性が低くなる

心理的安全性の低さは、ひいては個人のパフォーマンスや組織の生産性低下にもつながるでしょう。前述した従業員エンゲージメントの話ともつながりますが、社員にとって居心地の悪い環境では、「この会社で頑張っていこう」という意思を抱きづらくなります。
つまり仕事へのモチベーションが下がってしまうのです。

モチベーションが失われてしまえば、成長意欲も薄れます。新たなスキルや知識の習得に励みづらくなり、個々のパフォーマンスも徐々に低下していってしまうでしょう。
社員一人ひとりのパフォーマンスの衰えは、組織全体の生産性の低下にもつながります。

情報共有が鈍くなりミスの早期発見ができない

心理的安全性が低いと、情報共有の頻度・質も落ちてしまいがちです。気軽に発言ができない職場では、「こんな些末なことを言ったら怒られるかな…」「ミスを報告するのが怖い」といった気持ちから、報・連・相がおこなわれづらくなる可能性があります。

組織内で適切に情報共有がなされなければ、認識の齟齬やトラブル対応の遅延などにも発展してしまうでしょう。
特に部下が業務上のミスを上司に報告せず、自分の判断で対応しようとする場合には、問題をさらに大きくしてしまうこともあるので注意が必要です上司がミスを認識することができない環境では、そうしたトラブルが発生しやすくなるでしょう。

心理的安全性が低い職場になってしまう原因

心理的安全性が低い職場となってしまう代表的な原因は、以下の4つです。

  • 根本にある4つの不安を解消できていない
  • ミスを責めるような環境や文化である
  • 従業員同士のコミュニケーションが不足している
  • トップダウン型の組織文化である

それぞれの詳細を解説します。

根本にある4つの不安を解消できていない

心理的安全性が低くなる原因として、根本に以下4つの不安があることが多いです。

無知だと
思われる不安
「こんなことを訊くと、この程度のことも理解できていないのか、知らないのかと怒られるのではないか?」
無能だと
思われる不安
「この仕事でミスをしたら、仕事ができない奴と思われるかもしれない…」
邪魔をしていると
思われる不安
「意見がまとまりかけている中で別の意見を述べたら、円滑な進行を邪魔していると思われそう…」
ネガティブだと
思われる不安
「今の取り組みに大きな問題点があるから指摘して改善策を考えたいけど、ネガティブで厄介な奴だと思われないだろうか」

それぞれの不安が併発することも少なくありません。とくに仕事中に複数の不安が幾度も生まれる環境では、心理的安全性は低くなってしまいます。

ミスを責めるような環境や文化である

心理的安全性が低い職場となってしまう別の原因としては、ミスを責めるような環境や文化が挙げられるでしょう。一度でもミスをすると「仕事ができない人」と判断されてしまう環境では、従業員は「無能だと思われたくない」という不安が大きくなってしまいます。

そうした心理は、従業員によっては「優秀と思われるようにもっと頑張ろう」とポジティブに働くこともあるかもしれません。しかし、前向きになるケースよりも「自分が仕事をできない人と思われたくないから、うかつな言動は控えよう。慎重に行動しよう」といった消極的な方向性に働くことのほうが多いでしょう。その結果、心理的安全性は低下し、発言や行動が消極的になっていってしまうのです。

従業員同士のコミュニケーションが不足している

心理的安全性が低い職場になってしまう原因の1つとして、従業員同士のコミュニケーションが十分におこなわれていないケースも見受けられます。

コミュニケーションが活発な組織では、仕事に関してメンバー同士の意思疎通が円滑になりやすく、そのような環境下では、連絡や相談を気軽にできます。

しかし、日ごろから十分なコミュニケーションを取れない環境である場合、「問題は自分で何とかするべき」といった意識が生まれやすく、相談や連絡をしづらくなるでしょう。

たとえば何かわからないことがあるときでも、「一度で覚えられないのか」「こんなことも知らないのか」といわれるのでは…といった不安から、相談をしなくなります。無知だと思われる不安が増幅し、心理的な安全性が損なわれてしまうのです。

トップダウン型の組織文化である

トップダウン型の組織であることも、心理的安全性が低い職場となってしまう原因の1つです。トップダウン(上意下達)とは、 企業の上層部が下す判断に基づいて組織の下部が動く意思決定スタイルを指します。
トップダウン型の組織には、スピーディーな意思決定がおこなわれやすいというメリットがありますが、心理的安全性の側面においてはネガティブな影響をもたらしやすいでしょう。

とくに、スピーディーな意思決定に意識を向けすぎるあまり、「力を持つ上司のいうことが絶対」という環境になっている場合には要注意です。
上司の権力が強すぎるケースでは、部下は以下のような不安を抱えやすくなります。
「意見をすると上司から何をいわれるのかわからない」
「上司と違う意見をしたら、評価を下げられるのではないか」

こうした不安は部下を萎縮させてしまい、心理的安全性も損なわれてしまいます。

心理的安全性を高める方法

現状の心理的安全性が低かったとしても、これから高めていくことは可能です。
心理的安全性を向上させていくには、以下の方法が有効です。

  • 管理職が部下に対して宣言する
  • 1on1ミーティングなどコミュニケーションしやすい場面を作る
  • 部下の自主性を尊重する
  • ミスを責めるのではなくカバーし合う文化をつくる

こうした取り組みを実施することで、従業員の不安や不満が軽減し、発言や行動が意欲的になっていくでしょう。

管理職が部下に対して宣言する

心理的安全性を高める方法の1つとして、管理職が心理的安全性の高い環境づくりに取り組むことが挙げられます。

ここまで解説してきたとおり、多くのケースでは、部下の人柄や能力の問題よりも職場の環境が心理的安全性を損なわせています。そのため、職場環境に対して強い影響力を持つ人…つまり権力を持つ上司が、部下に対して心理的安全性を保証することが重要です。
上司が部下に「どのような意見をしてもよい」と宣言をし、そうした空気感を主体的に作っていくことで、部下は意見や行動に意欲的になっていきます。たとえば、面談やミーティングの度に、上司が部下に「何か意見やいいたいことはないか」といった機会を設けることなどが有効です。

しかし、管理職に対してそうした取り組みを自発的におこなってもらうことを推奨しても、なかなかうまくいかないでしょう。心理的安全性が低い環境の何がダメで、よい環境はどういうポジティブな影響をもたらすのかを理解しきれていない状態では、取り組みへの納得感を得られにくく、組織に浸透させていくのは難しいものです。

そのため、まずはマネジメント層に教育を実施した後に、現場にも周知させていく必要があります。上司・現場共に心理的安全性への理解を深めた状態で、上司が能動的に環境づくりに励むことで、徐々に心理的安全性の高い職場に変えていけます。

1on1ミーティングなどコミュニケーションしやすい場面を作る

心理的安全性を高めるには、1on1ミーティングなど部下と1対1で話せる機会をつくることも効果的です。
そもそも個別に意見を出せる場面がなければ、部下が意見をするハードルは高いといえるでしょう。
たとえ会議中に自由に発言できる環境を用意しても、「否定はされないかもしれないけど、的外れなことを言ったら恥をかくかもしれない」といった別の不安が生まれてしまうかもしれません。

そのため、1on1ミーティングなど、上司と部下が個別にコミュニケーションをとる場を設けるようにしましょう。クローズドな場では、大勢の前で意見を発することが苦手な人であっても、周囲の目を気にすることなく発言しやすくなります。

部下の自主性を尊重する

心理的安全性を高めるには、部下の自主性を尊重することも大切です。
上司が部下に「どのような意見をしてもよい」といった宣言をしたり、コミュニケーションをとる環境を構築したりしても、権力を持つ上司自身が部下の意見を尊重できなければ意味がありません。

上司の意識を変えるためには、部下の自主性を尊重する必要があることに関して、マネジメント層に教育を施していくことが効果的です。その際、心理的安全性への理解を深めてもらうことも重要です。
研修などをおこない、「なぜ心理的安全性が低いのか」「心理的安全性の低さと自主性の低さにはどういう関連性があるのか」「改善のために上司がするべきことは何か」といったことの理解を深めるようにしましょう。

ミスを責めるのではなくカバーし合う文化を作る

心理的安全性を高めるためには、ミスに対して寛容な組織文化・風土をつくることも重要です。
心理的安全性は、上司の言動だけではなく、組織全体の文化とも関係があります。組織全体でミスをカバーし合う文化を構築すれば、先述した「無能だと思われる不安」を解消しやすくなるでしょう。

ただカバーし合うだけではなく、互いを称賛し合う文化をつくることもポイントです。よい行動や成果を適切に評価される環境下では、仕事に対して前向きに取り組みやすくなります。
褒める内容が抽象的だと効果は薄れるため、どの場面のどういった事柄がどうよかったのか、具体的に伝えるようにしましょう。

たとえば、「前回の商談で大きなミスをしたのは、プロ意識が欠けているからだ」といった指摘だけで終わってしまうと、部下の意欲は低下します。一方で、「前回の商談での〜のミスはよくないから改善が必要。でも、プレゼンはしっかりと準備されていて論理的でわかりやすかった。先方も納得している様子だった」といった前向きな言葉も添えれば、部下は仕事に対して納得感を持ち、より意欲的になるでしょう。

まとめ

本記事では、職場における心理的安全性について詳しく解説してきました。
発言や提案、行動に対して、否定的なフィードバックの多い環境では、心理的安全性は低下します。心理的安全性が担保されていない職場では、創造的なアイデアや意見は生まれづらくなる、個人のパフォーマンスが低くなる、といった問題が生じてしまうでしょう。

自社が心理的安全性の低い職場に該当しないか、また今後該当してしまうような要因を抱えていないかを確認し、当てはまりそうな場合には、早急に改善に取り組んでいくことが大切です。

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記事監修

前田 正彦(まえだ まさひこ) 株式会社スキルアカデミー 代表取締役CEO
前田 正彦(まえだ まさひこ)
株式会社スキルアカデミー 代表取締役CEO

慶應義塾大学経済学部卒業。米国マサチューセッツ工科大学経営大学院(Sloan School of Management)修了。株式会社前田・アンド・アソシエイツ代表取締役(現職)。
株式会社NTTデータにて金融システムの開発に携わった後、 数々のコンサルティングファームにて、戦略立案から実行・定着までのプロジェクトを数多くリードしてきた。
その後人事・組織コンサルティングの必要性を痛感し、当該分野のプロジェクトを立ち上げ、戦略から人事・組織コンサルティングまで一貫したサービスを提供している。
スキルアカデミーにおいては、代表取締役CEOとしてAI人事4.0事業全体の推進をリードするほか、組織・人事・人材開発などの案件を数多くリードしている。
また組織診断・管理特性、職務等級制度・成果報酬制度などツールを開発。グローバル人事プロフェッショナル組織であるSHRM認定資格を取得。

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