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【導入事例あり】インセンティブ制度を設計する際の方法|設計までのステップやポイントを解説!

【導入事例あり】インセンティブ制度を設計する際の方法|設計までのステップやポイントを解説!
  1. インセンティブとは?
  2. インセンティブの種類
  3. インセンティブ制度を導入する3つのメリット
  4. インセンティブ制度を導入する3つのデメリット
  5. インセンティブ制度を設計する5つのステップ
  6. インセンティブ制度の運用を開始したら、運用することで生じる課題や従業員からのフィードバックなどを参考に、課題を分析し、改善を続けましょう。定期的に制度を見直すことで、長期的に運用可能な、自社にとって最適な制度を作り上げることができます。インセンティブ制度を有効活用するためのポイント
  7. インセンティブ制度の導入事例
  8. まとめ

インセンティブ制度を導入する企業は年々増えていますが、インセンティブ制度を正しく活用できている企業が多くありません。本来、インセンティブ制度を導入することで期待できる効果にはどのようなものがあるのでしょうか。

「インセンティブ制度で社員のモチベーションを高めたい」
「インセンティブ制度導入の成功事例や、参考になる制度設計方法について知りたい」

上記のように、インセンティブ制度への関心は高いが、導入についてはまだまだ検討事項が多いと感じている担当者も多いことでしょう。

さまざまなメリットのあるインセンティブ制度ですが、制度の設計によっては逆に社員のモチベーションを低下させてしまうようなケースもあるのです。

本記事では、インセンティブ制度の概要からメリット・デメリット、制度を設計する際のステップや注意すべきポイントについても詳しく解説していきます。

インセンティブ制度の導入について検討している経営者や人事担当者の方は、ぜひ参考にしてみてください。

インセンティブとは?

インセンティブ(Incentive)とは、直訳すると「動機」や「刺激」といった意味になり、ラテン語で「励ます」を意味するincentivusが語源となっています。

ビジネスシーンにおけるインセンティブとは、成果報酬や、表彰・人事評価・昇進制度のことを指すことが多く、社員の意欲向上ややる気を引き出すことが目的で制度を導入する企業が多いです。

インセンティブを用いて、社員が業務に対してモチベーションを向上させるための、仕組みや施策をつくることがインセンティブ制度であり、導入するにあたってはさまざまなメリット・デメリットがあります。

インセンティブ制度の効果的な設計方法や、導入することでどのような効果が期待できるのかなど、事前にしっかりとインセンティブ制度について理解しておくことが重要といえるでしょう。

インセンティブの種類

インセンティブの種類としては、仕事の目標達成や成果に応じて支給される成果報酬などの金銭的インセンティブと、表彰や人事評価を行う金銭以外のインセンティブがあります。
インセンティブの分類について詳しくみていきましょう。

評価的インセンティブ

社内表彰を設けたり、昇進・昇格につながる評価をすることなどの制度が評価的インセンティブです。

全社員向けに業績を表彰したり成果を人事評価としてしっかりと反映させることで、社員のモチベーションアップに繋がり、企業に対する帰属意識を高めたり離職率を低下させたりすることが期待できます。

物質的インセンティブ

物質的インセンティブは、金銭や金銭の代替品により報酬を支給するインセンティブであり、一般的なインセンティブはこれらの種類のものを指すことが多いでしょう。

社内ポイントを設定し、日用品や電子マネーなど各種商品やサービスと交換できる制度を設ける企業も増えています。

自己実現的インセンティブ

自己実現的インセンティブは、社員の夢や希望する仕事を実現させることで、モチベーションを持続させたり、会社への忠誠心を高めたりする効果があります。

やりがいのある仕事や、夢の実現を会社がサポートしてくれていると実感できることで、より仕事への意欲が高まります。意欲が高まることで、より高い成果や目標達成につなげられるため、さらなるモチベーションの向上や成果創出に向けた成長が期待できるのです。

理念的インセンティブ

理念的インセンティブは、金銭的な報酬以上に社会貢献や働きがい、やりがいを重視する人に効果的なインセンティブであり、企業理念への共感によってモチベーションの向上や働く意欲の向上をはかれます。

企業がどのような社会貢献を行っているのか、どのような環境配慮をしているのか、といったことを具体的に提示しましょう。

社員が企業の理念に貢献していると実感できることで、個人の価値観と共鳴した働きがい、やりがいにつながっていきます。

人的インセンティブ

人的インセンティブとは、上司や先輩・同僚などの一緒に仕事をする仲間との関係性や、人間性によってモチベーションをあげたり持続させたりすることです。

仲間意識の強い人や、仕事における人間関係を重視する人にとっては非常に効果的なインセンティブです。
「誰かのためにがんばりたい」といった心理状況を生み出すことで、仕事へのやりがいを見出せるようになることが、人的インセンティブのメリットといえるでしょう。

インセンティブ制度を導入する3つのメリット

インセンティブ制度を導入することで、どのようなメリットがあるのでしょうか。
今回は3つご紹介していきます。

短期間でモチベーションアップができる

金銭や評価などは、社員のモチベーションアップに即効性があり、短期的に社員のやる気を向上させるには非常に効果的です。

金銭以外でも、評価基準が明確になることで個人の目標設定がしやすくなり、より目標達成に向けた取り組みをしやすくなったり、インセンティブに向けて組織全体が活気づくこともメリットといえるでしょう。

社員の努力を正当に評価し、評価に見合った報酬を与えることは外発的動機づけにつながり、仕事に対する達成感や満足感を醸成できるので、目先の成果につながりやすいのです。

成果に応じた報酬設定がしやすい

インセンティブ制度により、成果に応じた正当な報酬設定がしやすくなります。

営業職を例に挙げると、売り上げ達成数に応じて段階的に報酬を設定することで、目標が可視化されやすく、成果に応じた正当な報酬を得られることで達成感が高くなります。

固定給や固定のボーナス支給とは異なり、インセンティブは成果に応じた報酬設定がしやすいため、報酬を働きに応じて公平に分配できるのです。

企業の理念やビジョンの浸透に寄与できる

インセンティブ制度として提示する企業の理念やビジョンを明確にすることで、社員への浸透に寄与するとともに、理念やビジョンに共感できる優秀な人材の確保もしやすくなります。

インセンティブを通じて理念やビジョンの浸透を目指すのであれば、インセンティブの評価軸を理念ビジョンにつながる基準で設置することが重要です。

例としては、売り上げ目標を定量目標とした数値だけで定めるのではなく、自身の仕事が環境配慮のためや社会貢献のためなど、何のために行うのかといった定性目標もしっかりと提示する必要があります。

インセンティブを通じて、社員の中で理念やビジョンにつながる行動を増やすことが可能になるでしょう。

インセンティブ制度を導入する3つのデメリット

インセンティブ制度を導入するメリットについてみてきましたが、制度の設計や運用方法によっては逆に社員のモチベーションを下げるなどネガティブな効果が出てしまうこともあります。
インセンティブ制度を導入するデメリットもみてみましょう。

内発的動機づけが弱まり仕事そのものにやりがいを感じなくなる

インセンティブの設計次第では、内発的動機付けが弱まり、仕事そのものにやりがいを感じなくなる可能性があります。

本来「内発的動機づけ」によって行動していた相手に、報酬などの「外発的動機づけ」をあたえた結果、本人のモチベーションが低下してしまう現象を「アンダーマイニング効果」と呼びます。インセンティブ設計ではまさに「アンダーマイニング効果」が起こりやすくなるのです。

仕事として本来達成感や満足感を得るためにおこなっていた業務が、インセンティブといった報酬そのものが目的となってしまい、内発的動機づけが弱まってしまいます。

アンダーマイニング効果を改善するための手法として「エンハンシング効果」と呼ばれる取り組みも組み合わせて取り入れることが必要です。

「エンハンシング効果」とは、外発的動機づけによって内発的動機づけを高められる心理状況のことで、相手を賞賛したり敬意を表することでやる気を引き出せるのです。

アンダーマイニング効果になりやすい金銭的インセンティブだけでなく、エンハンシング効果が引き起こせる評価的インセンティブをうまく組み合わせて、制度設計をしていくことが重要と言えるでしょう。

インセンティブの設計次第で、内発的動機づけが弱まり仕事そのものにやりがいを感じなくなる可能性があるため、制度設計の仕方には十分注意することが大切です。

社内の人間関係を悪化させる可能性がある

インセンティブをめぐって社員同士の競争が激化することで、社内の人間関係が悪化してしまう可能性もあります。

個人の業績を重視しすぎるインセンティブ制度では、チームでの結束力を高められず個人主義的要素が強くなりすぎてしまうため、社員同士が敵対心を抱き社内競争が激化しやすくなります。

上記のような問題をさけるために、チーム目標を評価軸に加えるなど組織として達成した成果を評価する制度設計が重要だといえるでしょう。

インセンティブにつながる業務以外を頑張らなくなる

インセンティブ制度の設計によっては、インセンティブに関わる業務以外頑張らなくなってしまう可能性があります。

インセンティブの評価を重視するあまり、業務全体を俯瞰的に見られなくなり、評価につながらないけれど本当はやったほうがいい業務に目がいかなくなるため、取りこぼされてしまう業務が発生してしまうのです。

単純な成果ばかりに目がいってしまうような評価設計では社員の視野が狭くなり、評価の対象とならないような業務はおろそかになったり、業務全体の業務効率が悪くなったりする可能性があるでしょう。

インセンティブ制度を設計する5つのステップ

STEP1:インセンティブ制度の目的を明らかにする

なぜインセンティブ制度を導入するのかという目的を明確することで、導入する施策の判断基準にブレがなくなります。目的が曖昧なまま進めても、中々思うような効果が得られないといったリスクも起こり得るため、十分に議論し決定しましょう。

STEP2:社内のニーズを調査する

従業員が求めてないことをインセンティブに設定しても意味がありません。従業員がどのようなことに魅力を感じ、モチベーションが上がるのか、ヒアリングを行いどのようなニーズがあるのかを事前に洗い出すようにしましょう。従業員満足度調査やエンゲージメントサーベイなどを活用することも有効です。

STEP3:インセンティブ制度の内容を決める

従業員のニーズや会社が提供できるインセンティブ要素を踏まえ、インセンティブ制度の内容を決定します。導入目的や、従業員のニーズとのずれが起こらないよう、しっかりとシュミレーションして制度の骨組みを作ります。また、この制度の成果をどのように測定するか、といった効果測定の仕方もこの時点で決めるようにしましょう。

STEP4:社内へ周知する

インセンティブ制度導入時に目的や主旨が従業員に正しく伝わっていないと、インセンティブ制度のデメリットが引き起こされるリスクがあります。また、正しく利用してもらうためには、内容をきちんと理解してもらう必要があります。社内の掲示板やイントラネットシステムなど、確実に従業員の目に留まるような仕組みを活用しながら、インセンティブ制度の内容を丁寧に説明しましょう。

STEP5:運用のPDCAを回す

インセンティブ制度の運用を開始したら、運用することで生じる課題や従業員からのフィードバックなどを参考に、課題を分析し、改善を続けましょう。定期的に制度を見直すことで、長期的に運用可能な、自社にとって最適な制度を作り上げることができます。インセンティブ制度を有効活用するためのポイント

インセンティブ制度を有効活用するためには、どのようなことに気をつけたら良いのでしょうか。具体的に紹介していきます。

事業のKGIに紐づいた設計をする

インセンティブ制度を有効活用するためには、制度設計の際に事業のKGIに紐づいた設計をすることが大事です。

KGI(Key Goal Indicator)とは、「重要目標達成指標」のことで、企業の目指す最終的な定量目標(数値目標)を意味します。KGIを達成するために最重要となる行動指標のことを、KPI(Key Performance Incicator)「重要業績評価指数」といいます。

インセンティブ制度を設計する際には、事業のKGIを達成するためのKPIを定めることが重要です。
定めたKPIをインセンティブの基準として設けることで、KGI達成に向けた行動を社員が行ってくれるようになります。

達成基準を数値として落とし込む

インセンティブを評価する達成基準は、定量的な数値で定めるようにしましょう。
理由としては、定量的ではない定性的で不明確な基準では、社員の具体的なアクションにつながらないためです。

  • 社内の改善提案を〇〇件以上実施する。
  • 売上を〇〇円以上受注する。
  • クライアントへの提案を〇〇件以上行う。

上記のような具体的な目標を提示することで、社員は目標達成のためにとるべき行動を明確にでき、業務効率を高めてくれるのです。

評価基準に段階を設ける

評価基準を設計する際には、段階を設ける必要があります。
具体的なイメージがわかるように、営業職のインセンティブで段階を設けた設計の例を挙げていきます。

  • 達成売上が150万円〜200万円未満:A評価
  • 達成売上が100万円〜150万円未満:B評価
  • 達成売上が50万~100万円未満:C評価

上記のように段階を分けて評価基準を設けることで、成果に応じた適切な報酬の付与が可能になるといったメリットもあります。

段階設定がないと、基準を達成したあとは何もしなくてよい、などといった思考に陥るデメリットもあるため、段階を設けて継続的に意欲を高めるよう工夫しましょう。

達成の難易度を不可能ではないものの達成するのが難しい数値で設定する

達成目標の難易度は、不可能ではないものの達成するのが難しい数値で設定しましょう。

達成基準が低すぎればすぐに達成してしまうため成果が基準値以上あがらなくなってしまいます。反対に、高すぎるとそもそも無理だと判断されて、インセンティブを追わなくなったりモチベーションの低下につながったりしてしまうからです。

企業の求める水準と、社員のモチベーションを向上できる適切な数値の設定が重要といえます。

公平性や透明性を損なわないようにする

社員の信頼を失わないために、評価基準の公平性や透明性を損なわないようにすることも重要です。理由としては、インセンティブ制度自体に不信感を抱いてしまうと、モチベーションの低下だけでなく離職にも繋がってしまうからです。

インセンティブ制度が社員の不満を引き起こさないために、以下のことに注意して制度設計しましょう。

  • インセンティブ設計の評価基準に偏りがないか。
  • インセンティブ設計の基準がわかりやすいか。

制度設計の際には社員目線で上記のポイントを検討することが大切といえるでしょう。

インセンティブ制度の導入事例

株式会社メルカリは、2017年にスタッフ同士でリアルタイムに感謝、賞賛し合うと同時に、インセンティブとして一定額の金額を贈り合えるピアボーナス制度「メルチップ」を導入しました。毎週全社員に400ポイント付与され、ビジネスチャットツールで設定したコマンドやWebからの投稿で、感謝や賞賛を贈る言葉と一緒にポイントを贈ることができるようになっています。このポイントは1ポイント1円の価値があり、受け取ったポイントは毎月給与に上乗せして現金で受け取ることができます。「Go Bold」「All for One」 「Be a Pro」というメルカリが大切にしている行動指針を体現した人を賞賛する仕組みであり、チームワーク向上や行動指針の徹底といった効果が期待されます。

また、中古住宅再生事業を営む株式会社カチタスでは、成績優秀な社員に対して、スキルを磨く「リフォームプラン研修」を実施しています。この研修は、全国から選抜された少数精鋭の社員が、リフォーム企画・発注スキルを向上させる専門的知識を学ぶのと併せ、次期マネージャー育成の一端を担っています。選抜形式をとることで通常の研修との違いを明確にし、仕事への意欲を刺激する役割を果たしています。

【参考】
株式会社カチタス

まとめ

インセンティブ制度は、効果的な制度設計をすることで社員のモチベーションを高め、業務効率化や仕事推進力を高めてくれる力強い施策となります。

しかし、インセンティブの種類や導入方法によってはかえって社員のやる気を損ねてしまうこともあるのも事実です。

導入にあたってはそのインセンティブが企業の風土とあっているか、目的としている効果が本当に期待できるのかを慎重に検討していくことが重要といえるでしょう。

今回ご紹介したインセンティブ制度設計のステップやポイントをぜひ参考にしてみてください。

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記事監修

前田 正彦(まえだ まさひこ) 株式会社スキルアカデミー 代表取締役CEO
前田 正彦(まえだ まさひこ)
株式会社スキルアカデミー 代表取締役CEO

慶應義塾大学経済学部卒業。米国マサチューセッツ工科大学経営大学院(Sloan School of Management)修了。株式会社前田・アンド・アソシエイツ代表取締役(現職)。
株式会社NTTデータにて金融システムの開発に携わった後、 数々のコンサルティングファームにて、戦略立案から実行・定着までのプロジェクトを数多くリードしてきた。
その後人事・組織コンサルティングの必要性を痛感し、当該分野のプロジェクトを立ち上げ、戦略から人事・組織コンサルティングまで一貫したサービスを提供している。
スキルアカデミーにおいては、代表取締役CEOとしてAI人事4.0事業全体の推進をリードするほか、組織・人事・人材開発などの案件を数多くリードしている。
また組織診断・管理特性、職務等級制度・成果報酬制度などツールを開発。グローバル人事プロフェッショナル組織であるSHRM認定資格を取得。

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