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副業制度とは?注目されるようになった背景や企業が解禁にあたって行うべき対策を紹介!
2024/1/31
- 副業制度とは?
- 副業が注目されるようになった背景
- 日本企業の副業導入率は53.1%!
- 副業を解禁することで企業が得られるメリット
- 副業制度を解禁することで考えられるリスク・デメリット
- 副業制度の導入にあたって企業が行うべき対策
- 人事評価制度の見直しをおこなう
- 副業制度を導入している企業事例
- まとめ
昨今、コロナ禍を経ての働き方改革や、政府の働きかけなどを受け、副業の解禁に踏み切る企業も増えてきました。
とはいえ、従業員から副業禁止に対する不満の声が上がっているものの、リスクが大きそうなので導入に踏み切れない…といった課題に悩む企業も少なくないでしょう。
副業解禁によって従業員は、収入が増えるなどのメリットがあります。一方で企業にとっては、労働力の分散などデメリットのほうが大きいように感じられるかもしれません。
本記事では、従業員のスキルアップや組織の生産性向上に役立つ「副業制度」に関して、企業の導入状況や具体的なメリット、リスクを抑える方法などを解説します。副業解禁を検討している企業はもちろん、優秀な人材の確保・定着に苦戦している企業の方もぜひ最後までお読みください。
副業制度とは?
副業制度とは、従業員が勤務時間外に本業以外の企業などで業務に従事できることを定めた、企業独自の制度のことですす。
厚生労働省が公表している「副業・兼業の促進に関するガイドライン」では、基本的には労働者が勤務時間外の時間をどう利用しようと労働者の自由とされています。つまり、副業を合理的な理由なく禁止することは推奨されていません。
ただし、以下に該当する場合は、企業による副業の制限が認められています。
- 労務提供上の支障がある場合
- 業務上の秘密が漏洩する場合
- 競業により自社の利益が害される場合
- 自社の名誉や信用を損なったり信頼関係を破壊する行為がある場合
ガイドラインや各社の取り組み事例を参考に副業制度を導入することで、従業員のスキルアップや労働意欲の向上に期待できるでしょう。
副業が注目されるようになった背景
近年では、副業解禁が日本全国の企業で広がりつつあります。注目されるようになった理由は、企業側・労働者側の双方にメリットがあるためです。
- 政府が副業を推進する背景
- 労働者が副業に着目する背景
ここからは、上記の2点にわけ、具体的にどのようなポイントが注目を集めているのかについて解説していきます。
政府が副業を推進する背景
政府は、働き方の多様化や人材の流動化を目的とし、副業を推進しています。
日本においては、少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少・労働力の不足が深刻な社会問題となっています。そこで、労働者がより生産性高く取り組めるようになることなどを目的に、2017年に「働き方改革実行計画」が閣議決定されました。厚生労働省は、「働き方改革」の実現に向けて、以下の施策に積極的に取り組んでいます。
- 長時間労働の是正
- 雇用形態に関わらない公正な待遇の確保
- 柔軟な働き方がしやすい環境整備
- ダイバーシティの推進
- 賃金引き上げ、労働生産性向上
- 再就職支援、人材育成
- ハラスメント防止対策
この中の「3.柔軟な働き方がしやすい環境整備」の一環として、企業の副業解禁が推進されるようになりました。
2018年には「モデル就業規則」の改正、2020年9月と2022年7月には「副業・兼業の促進に関するガイドライン」が改訂されるなどして、現在では原則として副業・兼業を認める考えが提示されています。
政府の意向や労働者からの需要を受け、企業における副業解禁も徐々に拡がってきました。各企業において副業が推奨される流れは、今後も続いていくでしょう。
参考:副業・兼業|厚生労働省
参考:副業・兼業の促進に関するガイドライン|厚生労働省
参考:モデル就業規則 |厚生労働省
参考:「働き方改革」の実現に向けて|厚生労働省
労働者が副業に着目する背景
働き方の多様化が拡がる中で、さまざまな理由から労働者が副業に注目するようになりました。
具体的には、以下のようなニーズが年々高まっています。
- テレワークの導入により増えた自由時間(通勤時間の削減など)を有効活用したい
- コロナ禍などの影響により収入が減った
- 物価高の影響などにより収入を増やしたい
- 本業以外のスキルも身につけたい
- やってみたかった仕事や趣味・好きなことに副業で挑戦してみたい
また、エン転職が2023年2月に1万人を対象としてアンケートをとった「新型コロナ後の企業選びの軸」では、コロナ禍を通じて企業選びの軸が変わった人が多数いることがわかっています。
出典:『エン転職』1万人アンケート(2023年2月)|「新型コロナ後の企業選びの軸」調査
コロナの影響により企業選びの基準が変わったと答えた人の中でも特に「希望の働き方(テレワーク・副業など)ができるか」を重視している人が、過半数を超えているようです。
出典:『エン転職』1万人アンケート(2023年2月)|「新型コロナ後の企業選びの軸」調査
同調査からは、コロナ禍によって働くことの価値観が大きく変化し、副業に関心の向く人が増えたことが読み取れます。
企業には、時勢や労働者のニーズの変化を踏まえて適切な対策を講じていくことが求められているのです。
日本企業の副業導入率は53.1%!
2022年に一般社団法人 日本経済団体連合会が会員企業におこなった「副業・兼業に関するアンケート」によると、副業・兼業を「認めている」企業は53.1%という結果となりました。また「認める予定」の企業も含めると70.5%と、7割を超えるようです。
出典:副業・兼業に関するアンケ―ト 調査結果|一般社団法人 日本経済団体連合会
同調査では、企業規模が大きくなればなるほど副業を認めている企業の割合も大きく出ています。
また、同じく2022年にパーソルイノベーションがおこなった「企業規模別 副業の取り組みに関する実態調査」では、副業を認めていると回答した割合が大企業および大企業グループ会社では40.5%、中小企業では32.8%、スタートアップでは70%とスタートアップ企業において副業を認めているところが多いという結果も出ています。「副業を認めている理由」の回答内容は、企業規模ごと以下のような結果となっています。
出典:「企業規模別 副業の取り組みに関する実態調査」|パーソルイノベーション株式会社
大企業では「働き方改革の一環」、中小企業は「収入の補助施策として」、スタートアップ企業では「禁止するべきではないため」が主な理由として挙げられています。
副業を解禁することで企業が得られるメリット
副業制度を整備することで企業が得られるメリットは、以下の3つです。
- 副業の経験を自社にフィードバックできる
- 優秀な人材の確保・定着に期待できる
- 事業機会拡大のきっかけとなる
それぞれの詳細について解説します。
メリット①|副業の経験を自社にフィードバックできる
従業員が副業にて新たなスキルや経験を身につければ、それを自社に還元できます。
自社で経験できることや磨けるスキルには限りがありますが、他社で副業をすることによって従業員は新たなスキルや経験、知識を身につけることも可能です。そのスキル・経験・知識を自社にフィードバックできれば、業務効率化や生産性の向上が期待できるでしょう。
また、他社との雇用関係・取り引きを通じて自社にない知見を得た従業員は、周囲に良い影響を与える可能性も秘めています。「自分ももっと頑張って成果を出そう」といった具合に既存従業員に刺激を与えることで、組織の活性化が見込めるでしょう。
メリット②|優秀な人材の確保・定着に期待できる
副業を解禁することで働き方の多様性を示すことができ、人材の確保・定着にもつながります。
副業解禁は、働き方の多様性を象徴するものの一つです。先述したエン転職の調査結果からも分かるように、昨今は「希望の働き方ができる」ことを理由に企業選びをする人が少なくありません。副業を解禁することによって、そうしたニーズを持つ求職者の流入が見込めます。
スキルアップ意欲の高い人材ほど、あらゆる経験を身につけるために副業・兼業を希望することも考えられます。自社以外でも新たな学び・経験の場を得られるチャンスがあることから、優秀な人材の確保・定着に期待ができるのです。
給与を理由に離職を考えている人の場合も、副業によってプラスアルファの収入を得られることから、離職防止も期待できるでしょう。
メリット③|事業機会拡大のきっかけとなる
従業員が副業を通して得られた人脈や情報を自社で活用できれば、事業拡大のチャンスにもつなげられるでしょう。
副業を解禁することで、副業先での人脈を得られたり、新しい情報を仕入れられたりします。また、新たな気づきを得る機会ともなり、副業で得た経験・情報から、画期的なビジネスアイデアが生まれることもあるでしょう。そこから、他企業との共同開発やオープンイノベーションなど事業機会拡大のチャンスも得られるかもしれません。
多くの従業員がこれまでになかった視点から物事を捉えられるようになることで、それまで気づけなかった既存事業の問題点や改善点に気づけるようにもなります。
副業制度を解禁することで考えられるリスク・デメリット
副業制度の解禁はメリットばかりではありません。導入に失敗してしまうと以下のような問題が生じることがあります。
- 本業への支障が出てしまう
- 人材流出のリスクが高まる
- 情報漏洩のリスクが高まる
まずはリスク・デメリットの理解を深めて、適切な対策をおこなっていくことが大切です。
本業への支障が出てしまう
従業員が副業をおこなうことで、本業である自社の業務に支障をきたす場合があります。
副業の解禁によって労働時間が増加し休息時間が減ることで、労働生産性が落ちてしまうかもしれません。副業分の労働時間が増えることで本来とれるはずの休息時間が減ってしまえば、業務の能率やクオリティが落ち、労働生産性の低下につながります。
詳細は後述しますが、労働時間は「本業・副業を通算して〇時間まで」と法で定められています。そのため、副業に費やす時間を増やせば、本業にかけられる時間も当然減ってしまうのです。
実際、先述のパーソルイノベーションでの調査では、副業に対する課題・懸念として、企業規模に関わらず「本業でのパフォーマンス」を挙げている企業が最も多いという結果が出ていました。副業を解禁するにあたっては、本業への支障をきたさないような工夫が欠かせません。
人材流出のリスクが高まる
副業の解禁には、他社に人材が流れてしまう懸念も付きものです。
副業を解禁することで、従業員は新たなスキルが身についたり、新しい価値観が生まれたり、今までにはなかったキャリアを手にする機会が増えたりします。これは本人や職場にとって良い影響を与える側面も多いですが、企業にとってはデメリットもあります。
従業員のスキルが伸び、視野が広がることで、自社を離職し新たな環境に飛び込むきっかけになってしまうケースもあるのです。また、副業先のほうが自社よりも自分にとって良い環境だと判断し、そちらに転職してしまうことも考えられるでしょう。
従業員がスキルや経験を身につけ選択肢が広がった後でも、「自社で働き続けたい」「自社に貢献したい」と思える環境づくりが必要不可欠です。
情報漏洩のリスクが高まる
副業の解禁によって、情報漏洩のリスクが高まってしまう点にも注意が必要です。
機密情報は、従業員に故意がなくても、ふとしたきっかけで漏れてしまうことが少なくありません。たとえば、従業員がスマートフォンやノートPCなどの携帯デバイスに機密情報を保存しているとします。副業先の企業の勤務中や通勤中に、これらのデバイスの紛失や盗難が発生すると、情報漏洩のリスクが生じるでしょう。
とくに、競合企業での副業をおこなった場合、情報漏洩は重大なインシデントにもつながりかねません。詳細は後述しますが、情報漏洩対策としては「秘密保持義務」「競合避止義務」が有効です。企業側も従業員側もしっかりと理解し締結しておくことで思わぬトラブルを防ぎやすくなります。
副業制度の導入にあたって企業が行うべき対策
副業制度の導入によるメリットを十分に得るためには、以下の対策が有効です。
- 副業制度の導入にあたってルールを整備する
- 企業の魅力を高め従業員の帰属意識を高める
やみくもに副業を解禁するのではなく、ルールを定めたり、自社に長く勤続したくなるような制度を整えたりすることで、パフォーマンス低下や離職のリスクを軽減できます。
副業制度の導入にあたってルールを整備する
情報漏洩などのリスクを抑えるためには、副業制度の導入に際して新たにルールを整備することが大切です。
副業解禁により、これまでの就業規則では対応しきれない部分が増えてきます。そのため、副業制度の導入を加味した新たな規則の構築が必要です。
ルールの整備にあたっては、厚生労働省によって2018年1月に策定、2020年9月と2022年7月に改訂された「副業・兼業の促進に関するガイドライン」が参考になるでしょう。同ガイドラインでは、副業解禁に際して企業が持つべき「基本的な考え方」が提言されています。
具体的には、以下5つの事項に留意する必要があるとされています。
- 安全配慮義務
- 機密保持義務
- 競合避止義務
- 誠実義務
- 副業・兼業の禁止または制限について
また、「労働時間の管理」「健康管理」「副業・兼業に関する情報の公表」についても整備すべきとされています。
基本的な考え方
厚生労働省の「副業・兼業の促進に関するガイドライン」における「基本的な考え方」では、原則として企業は副業・兼業を認めることが適当とされています。その際には、以下の点に注意が必要です。
- 安全配慮義務:企業が従業員の安全に配慮する義務
- 機密保持義務:労働者が知り得た企業の秘密情報を他に漏洩してはならない義務
- 競合避止義務:労働者が所属する企業と競合に値する企業に属す行為を禁ずる義務
- 誠実義務:ただ出勤するだけでなく、上司の指示を聞き、就業規則等の社内ルールを遵守して働く義務
- 副業・兼業の禁止または制限について:労働者が労働時間以外の時間を利用する方法は、基本的には労働者の自由であること(一部の例外あり)
副業・兼業を進めていくにあたり企業と従業員双方の納得が得られるよう、コミュニケーションを十分とることも大切です。ガイドラインでは、副業・兼業に関する相談や自己申告を受けた際に、不利益な取り扱いをすることは禁止されています。
企業が副業・兼業を推進していく際には、その取り組み内容を公表し、労働者の職業選択を通じて多様なキャリア形成を促進することも推奨されています。
労働時間の管理
「副業・兼業の促進に関するガイドライン」では、「労働時間の管理」についても既定があります。具体的には、労働基準法(以下、労基法)第38条第1項にて「労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する。」と記載されています。そのため、原則として、本業と副業とを通算した労働時間の管理をおこなうことが必要です。
ただし、労基法が適用されない場合(フリーランスや理事など)や、労基法適用内であっても労働時間規制が適用されない場合(農業や畜産業など)は、この限りではありません。
企業としては、従業員からの申告などにより、副業・兼業の有無や内容を確認する必要があります。そして、副業先の事業内容や業務内容に加え労働時間通算の対象となるかも確認が必要です。
その上で、労働時間通算の対象となる場合は、所定労働時間の通算や所定外労働時間の把握などの管理が欠かせません。併せて、割増賃金の支払義務や割増賃金率についても確認するようにしましょう。
健康管理
「副業・兼業の促進に関するガイドライン」では、「健康管理」についても既定がされています。
企業側は労働安全衛生法第66条等にもとづいて、健康診断や、長時間労働者に対する面接指導、ストレスチェックなどをおこなわなければなりません。加えて、健康確保の観点より、副業先の労働時間と通算した上で、適用される労基法の時間外労働上限の規制を厳守しなければならないなど、従業員の健康管理に関して配慮することも求められます。
そのため、副業制度を導入する際には、企業は従業員に対して以下の実施が必要です。
- 健康確保のための自己管理をおこなうことを指示する
- 心身の不調などについて都度相談に応じる旨を伝える
- 労使で話し合う
- 副業をおこなう従業員の健康確保をサポートする
こうした取り組みを通じて、従業員の健康管理をしていくようにしましょう。
副業・兼業に関する情報の公表
「副業・兼業の促進に関するガイドライン」では、「副業・兼業に関する情報の公表について」も既定されています。
企業は、労働者が多様なキャリア形成の面で職業選択をしやすくするために、副業制度に関して周知しなければなりません。具体的には、副業・兼業を認めているかについて、自社のホームページなどで公表することが望ましいとされています。また、副業・兼業を認める際に条件が付随する場合は、その条件についてもホームページなどにて記載することが必要です。
企業の魅力を高め従業員の帰属意識を高める
副業解禁のリスク・デメリットで挙げた「人材流出のリスク」や「本業への支障が出てしまう」ことを防ぐには、企業(本業)の魅力を高め、従業員に帰属意識を持ってもらうことが大切です。
企業の魅力を高める施策としては、たとえば以下のようなものが挙げられるでしょう。
- 社内でのキャリアパスを明確化する
- 従業員の成長をサポートする制度を構築する
社内でのキャリアパスを明確化し、自社で働き続けることのイメージを具体的に描けるようにすることが効果的です。「このまま働き続けていれば、やりがいのある仕事を任せてもらえる」「望んだ職務・役職にも就けるかもしれない」と希望を持てるようなキャリアパスを用意しましょう。それにより、従業員は自社で長く勤続することに意欲を持てるようになります。
従業員の資格取得や研修参加などを、企業が積極的にサポートする仕組みをつくることも大切です。詳細は後述しますが、株式会社タニタがおこなっているような希望する社員が個人事業主として働くことができる「日本活性化プロジェクト」は良い一例でしょう。
キャリアパスの設計や制度構築のほかには、次のような施策も有効です。
- 職場環境の快適さを担保する
- 財務体質を健全化する
- 企業理念やビジョンを明確化し企業の将来を描けるようにする
- 正当な処遇を与える など
企業の魅力を高めるためにできることは多岐にわたります。自社の従業員が魅力的に感じることは何かを考え、必要な対策を講じていくことが重要です。
人事評価制度の見直しをおこなう
副業制度を解禁するにあたっては、人事評価制度も副業にマッチしたものを構築する必要があります。
副業制度を導入すると、副業をおこなっている従業員の時間管理が難しくなります。そのため、働いた時間ではなく、成果や能力を評価し処遇に反映できるような人事評価制度を構築することが大切です。具体的には、職務の定義を明確化し、成果=評価を結びつける制度を整えると良いでしょう。副業制度を導入する企業では労働時間での管理が難しくなるため、労働時間や勤続年数などではなく、職務や役割で評価するようなジョブ型がマッチします。
企業の魅力を高めることも離職防止につながりますが、副業解禁に伴い人事評価制度も環境の変化にフィットする内容に変更していきましょう。
副業制度を導入している企業事例
最後に、副業制度を導入して成果を上げた企業事例について紹介します。
取り組みの考え方など、自社で推進していく際の参考になるはずです。
事例①|SMBC日興証券株式会社
SMBC日興証券株式会社では、2020年4月より、多様な働き方に対する施策の一環として副業を解禁しています。副業解禁にあたっては、副業の要件や禁止項目、誓約書の提出などのルールを明確化しました。
対象者と要件 |
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申請方法 |
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副業開始後の運用については、副業をおこなう従業員に対して半年に一度の従業員・上司への状況報告を義務づけているようです。また、同社での副業は1年ごとの承認となっており、1年以上継続して副業をおこなう場合は更新が必要となります。
副業の内容は、農業や通訳、スポーツインストラクター、大学院講師、ハンドメイド作品の販売など多種多様です。同社での副業解禁の取り組みは従業員からの評判も良く、1年半足らずで副業をおこなっている人数は約50名にも達しました。
参考:SMBC日興証券株式会社|一般社団法人 日本経済団体連合会
事例②|株式会社タニタ
株式会社タニタは、従業員の多様な働き方を支援する取り組みの1つとして、2017年1月より「日本活性化プロジェクト」を開始しました。日本活性化プロジェクトは、希望する従業員が退職し、個人事業主としてタニタと業務委託契約を結び働く制度です。
タニタでは、「人財」と呼ぶにふさわしい従業員に対して高いモチベーションを保てる働き方ができる環境をいかに提供できるか、を課題としていました。解決策を模索する中で、主体的に働きしっかりと報われる仕組みの構築は、個人と企業の関係性に帰着すると考えました。そこで、従業員の個人事業主化が合理的であるとの結論に達します。
従業員の個人事業主化では、全従業員を対象として移行者を募り、希望者と企業の間で合意がなされれば退職します。その後、雇用関係を終了した上で、タニタと改めて業務委託契約を結ぶ形となるようです。
業務内容は原則、個人事業主になる前に担当していた仕事を「基本業務」とします。報酬は基本報酬に成果報酬が上積みされるシステムです。基本報酬には、社会保障費相当額も含まれます。
プロジェクトが開始した2017年から2020年までの間で個人事業主に移行した従業員は、全従業員の1割強にのぼり、その後も増加傾向が続いているようです。収入に関しては、移行を選択した全員が、従業員時代よりも増加しました。
参考:企業情報|株式会社タニタ
参考:リクルートワークス研究所|Vol.3 株式会社タニタ
まとめ
日本企業における副業制度の導入率が50%を超えるなど、近年では多くの企業で導入が進んでいます。
副業を認めることで従業員は多様な働き方ができるようになり、仕事への満足度向上や自社とは異なる知見の蓄積が期待できます。それらが自社に還元されれば、企業の発展にもつながるでしょう。
しかし、副業の導入を誤った形で進めてしまうと、本業の労働生産性が低下する、他社へと人材が流れてしまうなどの問題も生じてしまいます。
副業に関するトラブルを避けつつも多くのメリットを得るためには、国のガイドラインにのっとって副業を推進しつつも、人事制度の構築やキャリアパスの支援もおこなうことが有効です。
他社の取り組み事例も参考に、導入を検討してみてください。他社の取り組み事例も参考に、導入を検討してみてください。
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記事監修
- 前田 正彦(まえだ まさひこ)
- 株式会社スキルアカデミー 代表取締役CEO
慶應義塾大学経済学部卒業。米国マサチューセッツ工科大学経営大学院(Sloan School of Management)修了。株式会社前田・アンド・アソシエイツ代表取締役(現職)。
株式会社NTTデータにて金融システムの開発に携わった後、 数々のコンサルティングファームにて、戦略立案から実行・定着までのプロジェクトを数多くリードしてきた。
その後人事・組織コンサルティングの必要性を痛感し、当該分野のプロジェクトを立ち上げ、戦略から人事・組織コンサルティングまで一貫したサービスを提供している。
スキルアカデミーにおいては、代表取締役CEOとしてAI人事4.0事業全体の推進をリードするほか、組織・人事・人材開発などの案件を数多くリードしている。
また組織診断・管理特性、職務等級制度・成果報酬制度などツールを開発。グローバル人事プロフェッショナル組織であるSHRM認定資格を取得。