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管理職の能力不足が企業に与える影響とは?背景や施策もあわせて徹底解説

管理職の能力不足が企業に与える影響とは?背景や施策もあわせて徹底解説
  1. 管理職の役割は組織の成果に責任を持ちパフォーマンスを最大化すること
  2. 管理職が機能していない組織はどのような状態なのか
  3. 能力不足の管理職が生まれる要因
  4. 能力不足の管理職が与える企業への影響
  5. 優秀な管理職を輩出する3つの施策
  6. まとめ

「管理職の増加に伴い、管理職全体のパフォーマンス水準が下がってしまっている」「管理職の能力不足が原因で、機能不全に陥っているチームがある」といった課題を抱えていませんか。

自社の社員数が増えたことなどによって、急きょ管理職の登用が必要となるケースもあるでしょう。そのような場合、管理職に必要な能力を満たさない人材が管理職に昇格してしまうことで、企業全体に悪影響を与えてしまうことがあります。

本記事では、そもそも管理職の役割とは何かを解説した上で、能力不足の管理職がいることで起こり得る問題や対処法を具体的にご紹介します。管理職の育成に悩んでいる方は、ぜひ最後までお読みください。

管理職の役割は組織の成果に責任を持ちパフォーマンスを最大化すること

管理職のパフォーマンスに懸念を感じる場合、そもそも管理職の役割とは何かを、改めて理解しておくことが大切です。役割を正確に理解することで、自社が抱える管理職の課題を把握しやすくなります。

管理職の役割は、組織の成果に責任を持ち、パフォーマンスを最大化することです。より具体的に解説すると、人材を活かし、顧客を獲得して成果を出し続けられる環境を整えていくことこそが、管理職の主な責務といえるでしょう。

管理職の職務としては「部下を管理すること」に意識が向きがちですが、部下の管理は組織で成果を出すという目的を達成するための1つの手段にすぎません。機械的に「管理する」のではなく、部下一人ひとりの能力を把握した上でパフォーマンスを高めることを目指し管理していくことが重要です。

管理職が機能していない組織はどのような状態なのか

管理職が機能していない組織は、以下のような問題を抱える傾向にあります。

  • 求められている成果を創出できていない
  • 問題が頻発する状況にある

適切な対策を講じていくためには、まずは問題をしっかりと把握することが大切です。それぞれの詳細について解説します。

求められている成果を創出できていない

管理職が機能しなくなることで生じる代表的な問題は、目標が未達で十分な成果を出せなくなることです。適材適所の人材配置ができていない、一人ひとりのパフォーマンスを管理できていない、などは、管理職としての役目を果たせていないことによって起こり得ます。

チームとしての成果向上が長らくできておらず、会社から求められている水準の成果もまったく残せていない状況では、より大きな目標である組織のパフォーマンス最大化も困難です。その先の業績向上も、当然成し遂げられなくなるでしょう。

問題が頻発する状況にある

管理職が機能していない場合、さまざまな問題が発生しやすくなります。管理職に求められるのは、人材を適材適所で配置し、能力を最大限に発揮してもらうためのサポートをおこなうことです。しかし、適切な人材配置ができず、パフォーマンスの管理もできていなければ、先述のとおりパフォ-マンスは低下します。

また、誤った人材配置などによって部下に過度な負担をかけてしまうと、部下のモチベーションも低下してしまうことでしょう。その場合、仕事のパフォーマンスが落ちるほか、ミスが頻発する、納期遅延が多発するなどの問題にもつながります。管理職の仕事の割り振り能力に問題があり、適切に仕事を割り振れていなければ、見落としや齟齬によるタスク漏れなども生じやすくなるでしょう。

仕事のミスやパフォーマンス不全は心身にも支障をきたすことがあり、最悪の場合、退職に至ることもあります。

能力不足の管理職が生まれる要因

能力不足の管理職が生まれてしまう原因としては、以下の2つが考えられます。

  • キャリアパスが管理職1択しかない
  • 能力要件が曖昧

原因をしっかりと理解しておくことで、的を射た対策を講じやすくなるでしょう。

1.キャリアパスが管理職1択しかない

「昇進=管理職」という環境は、能力不足の管理職が生まれる原因の1つです。企業の方向性として「将来は管理職になるしかない」といった一本道のレールを敷いている場合、本来は適性がない人材や、なりたくない人材も、管理職に就いてしまうことになります。

管理職には、コミュニケーション能力や人材育成能力が求められるものです。コミュニケーションが苦手でメンバーと十分にコミュニケーションが取れなかったり、部下のやる気を損ねる伝え方で指導をしてしまったりするなど人材育成能力に問題があったりした場合、管理職として出せる成果も限られてきます。専門職として優秀で自身が高い成果を残せていたとしても、部下をマネジメントする側になった際に成果を出せない…といったケースも少なくありません。

そうした事態を防ぐためには、 専門職として力を発揮できる適性のある人は、専門職としてキャリアを築けるようにしていくことが大切です。キャリアパスが限られており「昇進=管理職」となっている場合には、管理職としての職務を果たしにくい人材が数多く管理職になってしまう環境に陥り、組織のパフォーマンスは低下するでしょう。

2.能力要件が曖昧

管理職にはどのような能力を求めるのか、といった能力要件が曖昧である場合も、成果を創出できない管理職を生んでしまいやすくなる環境です。

管理職に求める能力が曖昧だと「経験年数が多いから管理職にしよう」「毎年個人目標を達成できているから管理職にしよう」といった基準で選定してしまいやすくなります。
その場合、管理職を務められる能力を持っていないのにもかかわらず、管理職に昇格させてしまうこともあるでしょう。基準が曖昧では、一人ひとりの選定基準がバラバラになってしまい、管理職におけるパフォーマンスのムラにもつながります。

こうした基準で管理職に昇格させた場合、いざ職務に就いた際に必要な役目をこなせず、成果を出せずに停滞してしまうリスクが高くなるでしょう。

管理職と専門職では求められる能力や役割が異なるため、管理職として成果を出すために必要な能力要件を明確に定めなければなりません。

能力不足の管理職が与える企業への影響

管理職の能力が不足している場合、企業に与える悪影響として考えられるのは、以下のような点です。

  1. 社員のモチベーション低下
  2. 事業成長の鈍化
  3. 人材の流出リスクの上昇

それぞれの詳細について解説します。

1.社員のモチベーション低下

能力不足の管理職が増えると、社員のモチベーション低下を引き起こしやすくなるでしょう。

同じ企業・部署に所属していても、社員一人ひとりの適性は異なり、得意な業務、苦手な業務にも違いがあります。

適性のある仕事を割り振られないことで、社員は自身の強みを発揮できなかったり、興味を持てなくなったりします。それにより、仕事をこなしづらくなったり、成果を出しづらくなったりするのです。苦手な仕事ばかりを任せられることで成果が出なければ、モチベーションの低下にもつながります。

実際、株式会社ビズヒッツが実施した「仕事のモチベーションが上がらないときの対処法に関する意識調査」では、仕事のモチベーションが上がらないときの理由として「仕事内容に興味が持てないとき」「雰囲気・人間関係が悪いとき」「仕事がうまくいかないとき」が挙げられていました。

出典:「仕事のモチベーションが上がらないときの対処法に関する意識調査」|株式会社ビズヒッツ(PR TIMES)

部下の適性を考えずに、部下の苦手な仕事ばかり割り振ってしまうと、仕事内容に興味を持ってもらいにくく、仕事も行き詰ってしまうでしょう。その結果、モチベーション低下につながるのです。

2.事業成長の鈍化

管理職の能力が不足していれば、ひいては事業成長の停滞・悪化にもつながります。

先述のとおり、能力不足の管理職がいれば、社員のモチベーションは低下してしまいます。また、仕事に対して意欲的ではない人が職場に多くなれば、職場の雰囲気も悪くなりやすく、人間関係にも悪影響を与えやすいでしょう。人間関係が悪化しており、コミュニケーションや連携に問題がある職場では、業務の進捗が遅れたり、生産性が低下するリスクが高まります。

こうした要素の積み重ねによって、組織全体で成果を残しづらくなるのでます。1人、また1人と能力の不足している管理職が増え、同様にパフォーマンスを発揮できない部下が増えると、組織全体で成果が低迷するでしょう。その結果、事業の収益も下がり、事業成長の妨げになってしまいます。

3.人材の流出リスクの上昇

管理職が不足している場合には、人材が流出してしまうリスクも上昇します。

社員のモチベーションやパフォーマンスが低く、事業成長が鈍化している環境では、給与の低下も生じやすくなります。
給与が低下すれば、社員は「このまま自社に在籍しても、下がり続けるのではないか」「理想のキャリアが送れないのではないか」などと、企業の将来にも不安を抱くようになるでしょう。そうした環境下では、自社に在籍する意欲を保ちづらく、他社への転職も視野に入れる人が増えます。

dodaが実施した調査では、転職理由の中で「給与が低い・昇給が見込めない」が最も多く挙げられていました。全体の32.8%が待遇の悪さを原因に転職の動機を抱いたというデータから、社員の勤続・退職には給与が深く関わっていることがうかがえます。

出典:「転職理由ランキング」|doda

組織として成果が出せていない場合は、昇進や昇給の見込みも薄くなり、そのことが転職の引き金となってしまう可能性も十分にあります。

優秀な管理職を輩出する3つの施策

優秀な管理職を輩出するには、以下3つの施策が重要です。

  1. 管理職か専門職になるのか複数のキャリア選択ができるようにする
  2. 能力モデルを明確にし、それに合わせた研修制度の確立
  3. 後継者育成に関する仕組みの整備

現状は管理職のパフォーマンス不足が問題であっても、上記3つの施策を実施していくことで、徐々にパフォーマンスは高まっていくでしょう。

1.管理職か専門職になるのか複数のキャリア選択ができるようにする

優秀な管理職を輩出するには、管理職なのか、専門職なのか、と適性に合わせて選択できる体制を整えることが重要です。管理職に適性のある人材を管理職に昇進させることこそが、能力不足の管理職を生み出さないための1つの施策となります。

その道のプロとしてキャリアを築きたい人材は、そのまま専門職として活躍してもらうほうが、仕事にやりがいやモチベーションを感じやすく、成果も出しやすくなるでしょう。
一方で、適材適所の人材配置ができなければ、会社への不満が募り、パフォーマンス低下につながります。

株式会社リクルートマネジメントソリューションズの調査において、現在の会社、職場、仕事、上司が自分にどのくらい合っているかを調査したところ、仕事・上司に関して「とても合っている」「合っている」と回答した人の合計は全体の約3割ほどであることがわかっています。
社員に最大限のパフォーマンスを発揮してもらうためには、仕事と上司が「とても合っている」と自社の社員に感じてもらうことは非常に重要です。

そのためには、適材適所の人材配置がキーとなります。各社員のキャリアの方向性と会社の目指したい姿をマッチさせ、社内におけるキャリアパスや評価制度を明確にしましょう。管理職に適性のある人材のみを管理職に昇進させるようにし、適性がなければそのままプレイヤーとして活躍してもらう道を用意することが大切です。

参考:一般社員、管理職492 人に聞く、従業員自身が認識する「適材適所」の実態 |リクルートマネジメントソリューションズ

2.能力モデルを明確にし、それに合わせた研修制度の確立

管理職の能力不足を克服するには、能力モデルを明確にし、それにマッチした研修制度を確立することも重要です。
一般的に管理職には、計画の立案能力や目標設定、コミュニケーション能力、論理的思考力、経営への知識などが求められます。そうした能力を参考にしつつも、自社の管理職にはどのような能力が必要とされるのかを判断し、自社の管理職の能力要件を明らかにすることが大切です。

また、能力モデルを明確にしたところで、自社にその基準を満たせる社員がいなければ、その基準通りに管理職に昇格させることは困難でしょう。そのため、管理職としての要件を満たす能力の人材を育成できるような、中長期的な研修制度の整備も必要となります。

3.後継者育成に関する仕組みの整備

優秀な管理職を増やすには、後継者を育成していく仕組みをしっかりと整えることも重要です。

管理職が部下に1on1コーチングをおこない育てていくことで、全体的な部下の能力水準の向上が期待できます。また、一人ひとり細かくコーチングをおこなう中で、適性や能力をよりしっかりと把握しやすくなるでしょう。
それにより、経験年数があるかどうかよりも、管理職としての職務を果たせる能力があるかに意識が向くようになり、管理職としての能力・適性を十分に備えた人材をアサインしやすくなるはずです。

1on1などを通じて現管理職が指導・育成をおこなうことで次期管理職候補を見いだし、ポストが空く際に登用するような仕組みをつくりましょう。職務を果たせる人材のみが管理職になれる仕組みを構築することで、管理職の能力水準は高くなります。

まとめ

管理職の役割は、適材適所の人材配置や、部下一人ひとりの適性に合った仕事の割り振りなどを通じて、チーム・組織のパフォーマンスを最大化することです。

管理職の能力不足は、キャリアパスや能力要件が曖昧であることによって生じます。成果の出せる優秀な管理職を輩出していくためには、キャリアパスの整備や研修制度の確立が欠かせません。持続的な成長のためには、後継者育成に関する仕組みを整えることも重要です。
こうしたアプローチによって、自社の管理職の能力水準を高めていきましょう。

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記事監修

前田 正彦(まえだ まさひこ) 株式会社スキルアカデミー 代表取締役CEO
前田 正彦(まえだ まさひこ)
株式会社スキルアカデミー 代表取締役CEO

慶應義塾大学経済学部卒業。米国マサチューセッツ工科大学経営大学院(Sloan School of Management)修了。株式会社前田・アンド・アソシエイツ代表取締役(現職)。
株式会社NTTデータにて金融システムの開発に携わった後、 数々のコンサルティングファームにて、戦略立案から実行・定着までのプロジェクトを数多くリードしてきた。
その後人事・組織コンサルティングの必要性を痛感し、当該分野のプロジェクトを立ち上げ、戦略から人事・組織コンサルティングまで一貫したサービスを提供している。
スキルアカデミーにおいては、代表取締役CEOとしてAI人事4.0事業全体の推進をリードするほか、組織・人事・人材開発などの案件を数多くリードしている。
また組織診断・管理特性、職務等級制度・成果報酬制度などツールを開発。グローバル人事プロフェッショナル組織であるSHRM認定資格を取得。

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