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組織課題とは?具体例から特定するための方法や解決方法まで徹底解説

組織課題とは?具体例から特定するための方法や解決方法まで徹底解説
  1. 組織課題とは?
  2. 組織課題の具体例
  3. 組織課題を放置するとどうなるか
  4. 組織課題を特定するための5つの方法
  5. 組織課題を解決するための6つのステップ
  6. 組織課題の分析・改善に役立つフレームワーク2選
  7. まとめ

「業績向上のために組織課題の解決に取り組みたいが、何から始めればよいのかわからない」「組織の課題を特定し、改善するにはどうすればよいか」といった悩みを抱える企業も少なくないことでしょう。

「組織課題」を放置することで、業務効率の低下や従業員のパフォーマンスの低下、人材流出といった問題につながる可能性があります。

本記事では、組織課題の定義や具体例、特定方法、解決のためのステップを詳しく解説していきます。組織改善に取り組む際の参考としてください。

組織課題とは?

「組織課題」とは、組織の目標達成や従業員のパフォーマンス向上を阻害する、さまざまな要因を指します。
組織課題としては、主に以下のカテゴリに分けられます。

  • 戦略・組織構造
  • 評価・処遇
  • 組織文化
  • エンゲージメント

組織の効率性や生産性を高めるためには、課題に適切に対処することが重要です。

戦略・組織構造

組織課題のカテゴリの1つが「戦略・組織構造」です。
組織における「戦略」とは、理想としている組織を実現するための具体的な方策を指します。
「組織構造」とは、権限や指揮命令系統など組織の仕組みを表したものです。
つまり、戦略や組織構造における課題は、組織全体にかかわる大きな課題といえるでしょう。

戦略・組織構造のサブカテゴリとしては、以下3つが挙げられます。

  • ビジョンと戦略
  • 役割と責任
  • キャリアパスの明確性

具体例については、後述します。

評価・処遇

「評価・処遇」も組織課題のカテゴリの1つです。
組織における「評価」は、従業員一人ひとりの能力や成果に基づいて、その価値を定めることを指します。この評価に応じて、給与や役職といった「処遇」が決定されます。

評価・処遇における問題は、従業員のモチベーションにも大きな影響を与えるため、組織が解消すべき重要な課題です。

  • 成果評価の明確性と公平性
  • 能力評価の明確性と公平性
  • 評価結果に応じた処遇
  • プロフェッショナリズム

評価・処遇におけるサブカテゴリは、上記4つが該当します。

組織文化

「組織文化」も組織課題のカテゴリの1つです。
組織文化とは、組織内のメンバー間で共有されている行動原理や思考様式、価値観を指します。
組織文化における課題は、プロジェクトなどメンバー間の連携が必要な業務において進捗や品質を妨げる要因となるため、チームで働いていく以上、見過ごすことができません。

組織文化におけるサブカテゴリとしては、以下のようなものが挙げられます。

  • 柔軟性
  • 自律性
  • チャレンジ
  • チーム意識
  • 心理的安全性

後ほど、具体例を挙げ詳しく解説します。

エンゲージメント

「エンゲージメント」も組織課題のカテゴリの1つです。
仕事におけるエンゲージメントとは、従業員の組織に対する愛着や思い入れを指し、仕事に対してポジティブで充実した心理状態を「エンゲージメントが高い」などと表現します。

エンゲージメントは、業務を遂行する上でのモチベーションにも影響し、また、定着率や生産性との関連性も強いです。
エンゲージメントは、これまで述べてきた戦略・組織構造、評価・処遇、組織文化などの内容を、従業員の立場から総合的に評価した指標とも言えます。

そのため、エンゲージメントを測ることは、戦略・組織全体の総合指標として、企業が持続的な成長をしていく上で非常に重要な尺度と考えることができます。

組織課題の具体例

組織課題の具体例として、以下を順に解説していきます。

  • 戦略・組織構造における課題の具体例
  • 評価・処遇における課題の具体例
  • 組織文化における課題の具体例
  • エンゲージメントにおける課題の具体例

それぞれ詳しく見ていきましょう。

戦略・組織構造における課題の具体例

戦略・組織構造における課題の具体例としては、以下のようなものが挙げられます。

【戦略・組織構造における課題の具体例】

  • 企業理念やビジョンの浸透不足
  • 役割と責任の所在の不明瞭さ
  • キャリアパスの不透明さ

企業の目指す方向性が社内で共有・統一できていないと、従業員各々が異なった価値観で行動してしまいます。各種業務の取り組み・やり方に共通認識が持てなければ、認識のズレも大きくなり、各自が個人プレーへと走ってしまうリスクが発生します。

組織としての統一性がなくなれば成果を出しづらくなり、外部からの信頼低下にもつながります。

本来の理念やビジョン、経営方針、戦略を見失えば、「何のために働いているのか?」「この業務の行きつく先は?」「最終的な目標は?」と、着地点が分からなくなります。それにより、ただただ受動的に仕事をこなすようになってしまい、業務の質も下がっていくでしょう。

企業理念や戦略と実務がかみ合っていないことや、役割と責任の所在が明らかになっていないことも、よくある組織課題です。

組織内での役割・責任の所在が不明確であると、「誰が何をするのか、どんな責任があるのか」が曖昧となり、仕事を進める上で混乱を招きやすくなります。結果として、業務効率の低下を招いたり、業務を怠って給与だけを貰うフリーライダーの生み出す温床にもなります。

組織におけるキャリアパスが明確になっていないことも、課題の1つです。キャリアパスが見えなければ、従業員は目標を失い、どこを目指して働けばよいのかがわからなくなってしまいます。モチベーションも当然低下してしまうでしょう。

評価・処遇における課題の具体例

評価・処遇における課題も、よく見られます。
評価・処遇における課題の具体例として挙げられるのは、以下のようなものです。

【評価・処遇における課題の具体例】

  • 適切で公平な評価制度が構築できていない
  • 明確な評価基準が定まっていない
  • 評価に見合った処遇となっていない
  • スペシャリストが育たない

適切で公平な評価制度ができていない場合、成果を出しているのに評価されない、その一方で成果を出していないにもかかわらず勤続年数の高い者から昇進していく、といった問題が起こり得ます。
公平性・透明性の低い人事評価制度のもとでは、従業員のモチベーションも下がり、離職にもつながりかねません。従業員が自身の努力や成果が正当に評価されていないと感じるためです。明確な評価基準が定まっていない場合も、評価者個人の裁量に評価が委ねられてしまい、公正な評価ができなくなります。評価者によるブレが出て、従業員から企業に対する不信感が高まってしまいます。

また、評価と処遇とがしっかりと紐づいていないことも問題です。評価結果が処遇に反映されなければ、従業員のモチベーションは低下し、優秀な人材が離職する可能性が高まります。

加えて「メンバーシップ型」、すなわち日本に昔から根づいている終身雇用の仕組みでは、スペシャリストが育たないといった課題もよく見られます。メンバーシップ型では、幅広い業務経験を積むことが重視され、専門性の高い人材が育ちにくい傾向があるためです。
スペシャリストが育たず、思ったような人材育成ができなければ、次世代のリーダー候補も不在となり、企業成長も止まってしまうことになります。

組織文化における課題の具体例

組織課題では、「組織文化」の課題もよく見られるものの1つです。
組織文化における課題の具体例としては、以下のようなものが挙げられるでしょう。

【組織文化における課題の具体例】

  • コミュニケーションの不足
  • 業務の非効率化による生産性低下
  • 心理的安全性の低さ

従業員間のコミュニケーション不足は、あらゆる問題を引き起こす組織課題です。従業員間で十分なコミュニケーションがとれていなければ、認識のズレによるミスやトラブルが生じやすくなります。それによって、チームの業務効率や生産性低下といった悪影響をも起こしやすくなるでしょう。コロナ禍を経てリモートワークも増えたことから、コミュニケーション不足という組織課題は特に顕著となっています。

業務の非効率化とそれに伴う生産性の低下も、よく見られる組織課題の1つです。たとえば、未だに紙や口頭などアナログで情報共有をしていたり、本業ではない事務作業が無駄に煩雑であったりすることは、企業の発展機会を妨げるでしょう。アナログな情報共有や煩雑な事務作業は、漏れやズレ、ミスが生じやすく、余計な手間を増やしてしまいます。
また、共有の範囲も限定的となり、情報共有不足を引き起こします。このような問題は、業務効率や生産性の低下を引き起こし、ひいては企業の業績悪化にもつながるのです。

「心理的安全性」の低さも、優先的に解決が必要な課題です。
心理的安全性とは、組織の中で自分の意見を安心して発言できる状態を指します。否定や批難の多い、心理的安全性が担保されていない組織では、従業員は本音を話しづらくなり、自己肯定感も下がってしまうでしょう。また、人間関係が悪化する、創造的なアイデア・意見が出にくくなる、情報共有が鈍化しミスの発見が遅れる、といった問題も生じやすくなります。

それによって、モチベーションやパフォーマンスが下がれば、生産性低下にまでつながるでしょう。

エンゲージメントにおける課題の具体例

エンゲージメントにおける課題としては、以下のようなものが挙げられます。

【エンゲージメントにおける課題の具体例】

  • 組織生産性の低下
  • 離職率の増加

エンゲージメントは、これまで述べてきた戦略・組織構造、評価・処遇、組織文化における課題について、従業員の立場から見た総合的は指標です。
従って、エンゲージメントの低下は様々な組織の課題として顕在化してきます。
その大きなものの1つが生産性の低下です。授業員が組織への愛着をなくし、自分の仕事に誇りが持てなくなると、仕事に対する思いれややる気がなくなります。その結果、自分の担当する業務の生産性が下がっていきます。さらに悪いことに、その影響は個人の担当する業務だけでなく、チーム全体に広がっていき、チーム全体の生産性の低下に繋がります。

こうしたチーム全体への悪影響が広がると、次第に離職する人間が増えていくことになります。離職率の増加は、企業成長の鈍化につながります。離職率が高まることによって、既存従業員の負担は大きく増え、業務効率は更に低下するという悪循環になります。
また、離職した分の人材を確保するために採用活動にも一層励む必要があり、採用コストの上昇も避けられません。離職の多い職場環境はさらなる離職を誘発しやすく、既存従業員が次々に離職していく…といった問題も起こり得ます。離職率の高い企業に対しては、外部からの信頼・イメージも低下し、ますます人材採用のハードルが上がってしまうでしょう。

組織課題を放置するとどうなるか

組織課題を放置していると、あらゆる悪影響が生じるでしょう。
顕在的、潜在的にかかわらず、組織課題がある状態を放置したままでいると、無駄な作業や手戻りが発生しやすくなり、組織全体の業務効率が悪くなります。それにより生産性の低下も生じる可能性がありますが、生産性が下がれば、残業が発生したり余分な仕事が増えたりします。また、ミスやトラブルが増えるなど仕事の質が下がり、顧客など外部から企業に対する信頼を失いかねません。

その場合、従業員は負担増に対する疲弊や不満から、モチベーションが低下してしまうでしょう。心身の負担が大きい状態では、エンゲージメントも低下し、最悪の場合は離職につながることも考えられます。

このように、組織課題を放置することで悪循環が生まれる恐れがあるため、課題を抱えている企業には早急な対応が求められます。

組織課題を特定するための5つの方法

組織課題を特定する上では、以下5つの方法が役立ちます。

  • 社内アンケートの実施
  • 1on1ミーティングの実施
  • ブレインストーミングの実施
  • マインドマップの活用
  • 業績結果の分析

それぞれどのように実施・活用していけばよいのか、詳しく見ていきましょう。

方法1.社内アンケートの実施

顕在的な組織課題を特定する上では、社内アンケートの実施が効果的です。

全従業員を対象にアンケートをおこなうことで、共通して感じている組織課題だけでなく、一部の従業員にしか見えていない課題も浮き彫りにできます。また、匿名アンケートにすることで、会議や面談では言いにくいような意見も吸い上げられるでしょう。

社内アンケートを実施する際には、あらかじめ幾つかの質問事項を設けることがポイントです。加えて、自由記載欄を設けることで、各従業員が遠慮のない意見を述べられるようにします。感じている不満や抱えている課題は従業員それぞれで異なるため、全従業員を対象にアンケートをおこなうようにしましょう。

アンケートを実施する際は、アンケートツールを用いてPCやスマートフォンで回答できるようにすることも重要なポイントです。アンケートツールを用いることで、隙間時間に手軽に回答でき、紙で集計する手間も省けます。

スキルアカデミーが提供している「組織特性診断ツール」では、本稿で記載の組織課題を網羅的にカバーし、無料で組織課題を定量的に把握することが可能です。

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方法2.1on1ミーティングの実施

組織課題の特定には、「1on1ミーティング」も有効です。

1on1ミーティングの実施によって、アンケートでは拾いきれなかった本音や悩みを見つけられます。

1on1ミーティングとは、上司と部下間でおこなわれる1対1の個別面談であり、部下の成長や組織力強化を目的として、定期的におこなわれるものです。

仕事の現状や悩み、課題などについて話すだけでなく、プライベートな内容も含めてしっかりと話すことで、相互理解を深められます。1on1ミーティングは、その名のとおり1対1でおこなわれるため、部下が感じている悩みや不満、課題を、より具体的に深堀できることが特徴です。そのため、社内アンケートよりさらに踏み込んで課題を特定できます。

1on1を実施することによって、上司は部下やチームの現状をより把握しやすくなるでしょう。1on1ミーティングでは部下の本音を引き出すことが何より重要であるため、上司と部下の信頼構築と心理的安全性の確保が欠かせません。

方法3.ブレインストーミングの実施

ブレインストーミングを実施することでも、組織課題を見つけやすくなります。
ブレインストーミングとは、「集団発想法」とも呼ばれる会議手法のことです。アイデア創出や課題解決に役立ちます。

複数人が集まり自由に意見やアイデアを出し合うことで、新たな発想が生まれ、課題の整理がしやすくなります。複数人で価値観や感覚の異なる意見を出し合うことで、個々では気づけていなかった課題や違和感に気づけたり、潜在的な組織課題を言語化しやすくなったりする点も利点です。

従業員にとっては、別の人の意見をざっくばらんに聴ける貴重な機会でもあり、意見交換・交流を通じて、組織課題の特定だけでなくモチベーション向上にも期待できます。
多様な意見を集めるためには、なるべく多くの異なる部署、異なる立場から従業員を集めるようにするとよいでしょう。また、自由に意見を出し合える雰囲気づくりを心がけることも大切です。

方法4.マインドマップの活用

マインドマップの活用も、組織課題の整理・発見に効果的です。
マインドマップとは、思考の表現方法の1つであり、脳内で自然に発生する思考を視覚的に描き出すことで思考が整理でき、それまでは発見できていなかった課題やアイデアを見つけるのに役立ちます。

一般的なマインドマップは、核となる概念から分岐する形で、思考やアイデア、課題、情報を線でつなぎ、描写した図です。中心となるテーマに連想される情報やアイデアを線でつないでいきながら、頭の中の思考を拡大・整理していきます。

たとえば、「人材育成」を核テーマとした場合、人材育成に関しての情報、感じている課題や違和感、その解決方法、各種アイデアなどをどんどん枝分かれしていく形で放射状に描写します。このように課題を「見える化」することで、組織課題の特定から解決につなげられるのが、マインドマップです。

マインドマップを作成する際には、1つのテーマに対して1枚の白紙にまとめるのがポイントです。これにより、思考の流れを一目で把握しやすくなり、課題の整理がより効果的・効率的におこなえます。

参考:マインドマップとは?|マインドマップの学校

方法5.業績結果の分析

実際の業績結果を分析することも、組織課題の発見に役立ちます。

分析する際には、数字などを用いて可視化し、根拠をしっかりと示すことがポイントです。
たとえば、売上高と純利益を数字やグラフなどを用いて分析することで、「売上は伸びているのに純利益は増えていない」といった潜在的な組織課題が見つかることもあります。

分析をおこなう際は、個人の主観を排除し、客観的な事実に基づいた分析をおこなうことが重要です。主観が入ってしまうと、評価や判断にブレが生じてしまい、不正確な評価を下してしまうおそれがあります。

また、分析の際にツールなどを活用するのもおすすめです。日々の業務や成果をデータを見える化することで、事業の状況や構造をより直感的に捉えられるようになり、スピーディーな課題発見につながります。

業績結果の分析は、組織課題の特定に非常に有効な方法の1つです。客観的なデータに基づいた分析をおこなうことで、これまで見過ごされていた課題を明らかにでき、組織の改善へとつなげることができるでしょう。

組織課題を解決するための6つのステップ

組織課題の解決をしていく際には、以下のステップを踏むのがおすすめです。

  1. 課題の明確化・把握
  2. 課題の共有
  3. 課題の優先順位の決定
  4. 課題の原因究明と解決策の決定
  5. 解決策の実施
  6. 検証・分析と振り返り

各段階でどのような点に注意すればよいかを解説します。

ステップ1.課題の明確化・把握

まずは組織課題を明確化し、把握することが大切です。先にご紹介した特定方法などを用いて、上述した各カテゴリごとに課題を発見し、それらをしっかりと言語化・可視化します。

課題を発見・明確化する際には、1つの方法に留まらず、あらゆる方法で多角的に洗い出すとよいでしょう。この段階では、発見しやすいもの・しにくいもの、大きな課題・小さな課題を含めてなるべく多くの課題を洗い出しておくことが重要です。
それによって、自社に潜んでいる課題をしっかりと浮き彫りにでき、対策の優先順位もつけやすくなります。

ステップ2.課題の共有

上記のステップで組織課題を明確化し把握できたら、それをチームで共有しましょう。
その場合、いきなり全社に共有するのではなく、課題に取り組むプロジェクトチームなどがあれば、まずはそこで共有し、共通認識を持つことが重要です。
どのような課題があり、どういう方向に進もうとしているのか、しっかりと言語化して、チームメンバーが理解できるように努めます。

組織課題をチームで共有することによって、認識の統一が図れ、同じ方向を向いて解決に向かっていけます。そして、チームメンバーだけでなく、上層部にも共有し、組織課題をきちんと経営課題として取り組んでもらうことも重要です。

全社員への共有は、ある程度課題の整理を行い、解決の方向性が見えた時点で共有するのがよいでしょう。やみくもに課題だけを共有して、解決策が出せていないと「いったい今後どうするんだ?」「会社はなにをやってくれるんだ?」とやみくもに不安を誘発することになりますので、全社員への展開のタイミングには注意が必要です。

ステップ3.課題の優先順位の決定

組織課題の特定によってさまざまな課題が発見できたら、ピックアップした課題に優先順位をつけていきます。

複数の課題を同時に解決できたらベストですが、課題解決に並行して取り組むことで、解決スピードが遅くなり、また中途半端に終わってしまうことも十分に考えられます。

そのため、どの課題から取り組んでいくべきかを、現在の組織の状況や事業への影響度などを踏まえた上で選択し、1つ1つ集中して取り組んでいくことがポイントです。
組織の成長や目標達成の妨げになっている課題や、放置しておくことで重大な問題が起こり得る課題から取り組んでいくとよいでしょう。

ステップ4.課題の原因究明と解決策の決定

組織課題に優先順位をつけたら、それらの課題がなぜ生まれたのか原因を突き止め、原因も踏まえた上で解決策を決定していきます。組織課題の原因究明は、時間を割いてでもしっかりと丁寧に取り組むことが重要です。

原因究明が曖昧なまま表面上のみで理解した気になっていては、解決策を講じても効果がでなかったり、意味のない施策となってしまいます。その課題に対して根本的な原因が何なのかをしっかりと突き止め、それに対する解決策を検討していくことが重要です。

ステップ5.解決策の実施

組織課題の原因究明ができ、解決策を決定したら、実際に原因の排除と解決に取り組んでいきます。
解決策が複数ある場合は、1つずつ解決策を試してみることが大切です。

複数の策を同時に進めていくと、どの策が効果があって、どの策が効果がないのか、といった判断ができません。従業員にとっても、大きな負担となってしまうでしょう。

効果が出るまでには時間を要するものと心得て、1つずつ集中してじっくりと取り組んでいくことが大事です。組織課題の解決・目標達成(大きなゴール)までには、小さなゴールを複数設けるのもよいでしょう。小さなゴールにそれぞれ期日と数値目標などを設定し、地道に1つ1つ達成していきます。そうすることで、成功体験が積み重なっていき、従業員のモチベーション向上にも期待できるはずです。

ステップ6.検証・分析と振り返り

組織課題の解決策を実行したら、その効果を検証・分析し、振り返りをおこなうことも大切です。
組織課題に対する解決策を実施するだけでは不十分です。やりっぱなしでは効果を最大化できず、中途半端に終わってしまうリスクがあります。

そのため、解決策を講じたら、その策によって実際にどういう結果となったのか、どのような効果があったのか、どのような点が至らなかったか、をしっかりと検証し、分析することが重要です。

検証・分析をおこなう際にも、やはり数値やデータを用いて客観視することが大事です。
課題把握で実施したアンケートを、再度実施することも有効です。その場合、課題把握の時と同じ項目、同じ評価軸で実施することが重要です。それによって、どの項目がどの程度改善されたのか/されていないのかを把握することができます。その後も例えば1年1回程度、定点観測として、調査を実施していけば、課題解決の推移を把握することができます。

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組織課題の把握から共有、原因究明、解決策の決定・実行までを振り返り、どのような点が良くてどのような点が良くなかったのかを挙げ、次回の改善につなげていくことが重要です。

一度の実施で課題を解決することは難しいでしょう。「実行→振り返り→改善策→実行」を繰り返すことによって初めて成果を得られると心得て、長期的な視野で取り組んでいくことが大切です。

組織課題の分析・改善に役立つフレームワーク2選

組織課題の分析・改善には、以下のようなフレームワークが役立ちます。

  • 7S
  • バランススコアカード

それぞれどのような場面で活用でき、どのようなメリットが得られるのかを解説します。

7S

7Sは、組織における重要な要素を、ハード面とソフト面から7つに分類して考えるフレームワークです。組織分析や課題の発見、組織戦略の構築などに役立ちます。

要素 説明
ハード面 戦略(Strategy) 企業の限られた財的・人的資源配分を、目標達成のために立てること
組織(Structure) 機能的である、分権化しているなど、組織の仕組みや特徴
システム(System) 報告や会議に関する、一定のパターンやルーティン
ソフト面 スキル(Skill) 経営の中心人物もしくは企業全体で見られる優れた能力
人材(Staff) 組織の人的資源
社風(Style) 組織の文化や経営スタイル
価値観(Shared value) 組織の理念や共通の価値観

ハード面の3Sは改善が比較的容易で、ソフト面の4Sは改善に時間がかかるものとされています。
組織変革にはハードとソフトの両方の改革が必要であり、これらすべてをバランスよく整えることで、企業成長にもつなげられるでしょう。

また、組織課題を幅広く網羅的に発見しやすくなることも、7Sのメリットです。
7Sは「SWOT分析」との相性がいいフレームワークです。SWOT分析は、「内部環境(強み・弱み)」と「外部環境(機会・脅威)」を分析し、組織の現状、将来の方向性を明らかにすることを目的としています。SWOT分析で決定した方向性の中で、7Sの各要素での課題を特定していくことによって、より精度の高い分析ができるようになるでしょう。

参考:マッキンゼーの7Sとは何か?図でわかりやすくフレームワークを詳解|ビジネスIT

バランススコアカード

バランススコアカード(BSC)は、「財務」「顧客」「業務プロセス」「学習と成長」という4つの視点に沿って、企業の戦略立案から具体的な行動に至るまでの道筋を可視化するフレームワークです。
戦略経営のマネジメントシステムともいえるこの業績評価手法は、多角的に経営を見る上で役立ちます。また、企業の戦略やビジョン、業績を可視化し、活動に反映させる上でも有用です。

バランススコアカードでは、戦略目標を以下4つの視点でとらえ、企業を分析します。

概要
財務の視点 財務的な成功のため、利害関係者にどのように対応・行動するか

評価指標:売上高、利益率、利益額、自己資本比率 など

顧客の視点 顧客に対しどのように対応・行動するか

評価指標:製品売上げシェア、リピート率、顧客満足度 など

業務プロセスの視点 先の「財務」「顧客」の視点からの評価向上のためには、社内の業務プロセスをどのように構築・運用すればよいか

評価指標:生産にかかる所要時間や不良品率、注文・質問に対するレスポンス時間 など

学習と成長の視点 企業の経営戦略達成のために必要となる従業員の能力・モチベーションをいかに高め生産性を向上させるか

評価指標:従業員満足度やエンゲージメント、社員定着率 など

これらの視点から得られた情報を多面的な業績評価指標に落とし込み、評価をおこないます。また、4つの視点における因果関係を論理的に思考し、企業の方向性を決定します。

以下がバランススコアカードの例です。

重要成功要因 業績評価指標 目標・アクションプラン
財務 新商品の売上増加 新商品売上高 目標:1億円
アクション:新商品10万円×1,000個販売
顧客 店頭サービス向上 店頭 CS 調査対応 目標:Bランク
アクション:毎月実施しスタッフにフィードバックをする
内部プロセス 顧客ニーズの収集 定例収集と分析 目標:毎週実施
アクション:収集方法改善、効果検証
学習と成長 社内教育活性化 研修実施 目標:年5回実施
アクション:満足度調査

バランススコアカードを用いることで、ビジョンや経営戦略の明確化ができ、具体的な活動への展開もしやすくなります。また、どのように歩んでいけばよいかの共通認識を企業と従業員とで持つことができ、従業員のベクトルを統一できる点も利点です。
4つの視点から業績を評価するため、バランスのとれた業績評価が実現できることもメリットといえるでしょう。

こうした種々の要素によって、業務プロセス改善や従業員の意識改革の促進が期待でき、生産性やパフォーマンスの向上が見込めるため、継続的な経営改善へと繋げることができます。

バランススコアカードは、企業の戦略的目標を達成するための強力なツールであり、経営者や管理者にとって欠かせない存在といえます。

まとめ

組織課題を放置すると、組織全体の業務効率の低下や生産性の低下、ミスやトラブルの増加などが生じやすくなります。また、仕事の質が落ち、顧客など外部から企業に対する信頼を失いかねません。

そのため、組織課題の解消に積極的に取り組んでいくことが重要ですが、その際には「戦略・組織構造」「評価・処遇」「組織文化」「エンゲージメント」の4つの視点を持つことが大切です。

社内アンケートの実施やブレインストーミングの実施を通じて、自社の課題を特定したあとには、優先順位を決定して各課題の施策を考えていきましょう。また適宜、7Sやバランススコアカードを用いて課題の整理をしたり、進捗の把握をしたりすることも有効です。

長期間にわたって実施・効果検証を繰り返していくことで、組織の課題は徐々に解消されていくでしょう。本記事を参考に、ぜひ組織課題の解決に取り組んでみてください。

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記事監修

前田 正彦(まえだ まさひこ) 株式会社スキルアカデミー 代表取締役CEO
前田 正彦(まえだ まさひこ)
株式会社スキルアカデミー 代表取締役CEO

慶應義塾大学経済学部卒業。米国マサチューセッツ工科大学経営大学院(Sloan School of Management)修了。株式会社前田・アンド・アソシエイツ代表取締役(現職)。
株式会社NTTデータにて金融システムの開発に携わった後、 数々のコンサルティングファームにて、戦略立案から実行・定着までのプロジェクトを数多くリードしてきた。
その後人事・組織コンサルティングの必要性を痛感し、当該分野のプロジェクトを立ち上げ、戦略から人事・組織コンサルティングまで一貫したサービスを提供している。
スキルアカデミーにおいては、代表取締役CEOとしてAI人事4.0事業全体の推進をリードするほか、組織・人事・人材開発などの案件を数多くリードしている。
また組織診断・管理特性、職務等級制度・成果報酬制度などツールを開発。グローバル人事プロフェッショナル組織であるSHRM認定資格を取得。

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