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業績評価とは?実施の流れや成功させる方法についても解説
2023/6/12
能力評価や年功序列型評価で社員を評価しているものの、「社員のモチベーションが保てない」「社員から不満の声が上がっている」などの課題を抱えていませんか。また、評価制度自体を導入しておらず、社員のパフォーマンス向上のために新しく評価制度の導入を模索中という方もいらっしゃるかもしれません。
仕事の成果で評価をしない人事評価手法では、たとえ一社員の評価が高くても業績には貢献していないといった問題が生じることもあり、評価方法に合理性を感じられないということもあるでしょう。
そこで本記事では、評価制度の改善・確立のため新しい人事評価制度の導入を考えている人事担当者に向けて、合理性の高い評価手法である「業績評価」に関して解説します。本記事を読むことで、業績評価の基本から導入手順もわかるようになるため、ぜひ最後までお読みください。
業績評価とは?
業績評価(成果評価)とは、一定期間の業務の成果や結果によって人材を評価する評価手法です。業績評価の目的は、客観的な評価基準・根拠として、評価結果を賞与や人事異動など社員の処遇決定に活用することにあります。
評価制度が確立されていない場合や定性的な評価しか行われていない場合は、評価がバイアスや主観により左右されてしまいます。その結果、社員が自身や他の社員の評価に不満を抱きやすくなりがちです。一方で、数値で判断ができる定量的な指標を評価基準とする業績評価では、客観的で公正な評価が可能となります。
業績評価は人事評価の手法の1つですが、他の人事評価と比較すると次のような違いがあります。
業績評価 | 仕事の成果で評価をする |
---|---|
能力評価 | スキルなどの能力で評価をする |
情意評価 | 勤務態度や意欲、職場での働き方(協調性や積極性)などを評価する |
プロセス評価 | 目標を達成するまでのプロセスを評価する |
年功序列型評価 | 勤続年数や年齢により評価する |
評価制度は、必ずしも全社員の評価に同一の手法を適用させる必要はなく、また一人ひとりの社員に対して完全に1つの評価基準のみで評価する必要もありません。たとえば、仕事が熟練した職歴の長い社員に対しては業績評価で重点的に評価し、仕事が未熟な新入社員に対してはプロセス評価に重きを置くなどの使い分けがされます。
なお年功序列型評価は、厳密には評価制度ではなく賃金制度(年功序列型賃金制度)です。
業績評価を導入するメリット
業績評価を導入するメリットについて、代表的な4つを紹介していきます。
組織のパフォーマンスを向上できる
業績評価の導入により、社員の士気を高めることができます。評価につながる目標が明確であることで、社員のモチベーションが向上するためです。
業績評価では、主に一定期間における売上や受注件数など数字で見える定量的な成果を目標として掲げることから、社員にとって評価基準がわかりやすく、仕事に対して意欲的に取り組めるようになります。
また、目標達成により業績を高めることで、さらに社員のパフォーマンスが向上するという副次的効果も生まれるでしょう。
無駄な人件費を削減できる
業績評価では、勤続年数や年齢よりも「仕事での成果」を重視するため、人件費の無駄を減らすことが可能です。
業績と直接関連のある仕事の成果を重視するため、勤続年数や年齢、役職など業績とは直接関係のない基準を考慮する必要がありません。したがって、仕事で結果を残していない非生産的な社員に対して、不合理に高い報酬を支払う必要がなくなります。
ハイパフォーマンスを実現できる社員に適切な報酬を割り振れることから、人件費配分の適正化だけでなく、優秀な人材の定着も期待できます。
適正な評価を行える
業績評価では、主観よりも客観性が重視されるため、評価の適正化が可能です。
個人が上げた成果や実績をもとに評価をするため、評価者の主観を介在させる余地がありません。したがって、数字上の成果を上げているのにもかかわらず評価されない、という問題が起こりづらいといえます。
対して定性的な指標で評価する能力評価や情意評価の場合は、評価者の被評価者に対する好意度合いが、寛大化傾向や厳格化傾向というバイアスとして評価に反映されやすい、という特徴があります。
業績評価を導入する際の注意点
業績評価を導入する際には注意点もあります。
ここからは、注意点についても紹介していきましょう。
社内で評価指標の統一が必要
業績評価を導入する上では、社内における評価指標の統一が必要です。
業績評価では各社員が出した成果を純粋に評価することから、評価尺度が不明確であったり部門によって不揃いだったりする場合には、適正な評価を実現できなくなります。同じような成果を出しているのに社員ごとに評価が異なると、社員の評価への納得感は当然低下してしまうのです。
目標の達成度やそのプロセスに対するフィードバックが必要
「業績評価」といえども、社員のパフォーマンス維持のため、仕事の達成度やプロセスへのフィードバックは必要です。
定量的な成果だけに目を向けた場合、次の目標達成に向けた改善策や維持するべきポイントがわかりません。自分を客観的に分析する能力が高い社員であればフィードバックがなくても問題ないかもしれませんが、多くの社員には成長を加速させるためのサポートが必要となります。
最終的な成果だけでなく、目標の達成度やそのプロセスにも意識を向けることが大切です。一緒に業務内容を振り返ったり、フィードバックをおこなうことにより、次の目標に向けて部下の成長を促せるようになります。
昇進と絡めてはいけない
業績評価においては、その評価結果のみを昇進と絡めることによって社員からの反発が生まれるリスクもあります。
個人成績は外部要因に左右されやすく、業績だけで個人の能力を100%判断することは困難です。仮に同じ業務に同様の能力、努力量で取り組む社員が2名いたとして、それぞれの仕事量や置かれている状況の違いなどにより、成果には大きな差が出る可能性もあります。その場合、不利であったほうの社員は不満が募ってしまうのです。
業績評価の流れ
ここからは、業績評価の流れについて紹介していきます。
STEP1:目標を設定する
まずは、成果を判断する基準となる「各社員の目標」を設定しましょう。
業績評価を用いて実際に評価する際の「業績」とは、各自の設定した目標の達成度合いを指すため、目標設定を事前におこなっておくことが必要です。
目標設定は評価基準としての役割だけでなく、社員の能力開発やモチベーション向上としての役目もあります。各社員がやみくもに奔走するよりも、目標を掲げてそれに向かって邁進するほうが必要な行動やスキルが明確となり、社員によい変化が生まれやすくなるのです。
目標設定の流れは、以下の通りです。
- 組織全体の目標を設定
- 個人やチームでの目標を設定
目標はすぐに達成できるレベルではなく、努力が必要なレベルに設定しましょう。簡単すぎる目標は、社員の成長を鈍化させます。
たとえば営業職における目標設定例としては、以下のような目標が挙げられます。
- 案件を毎月5件受注する
- 毎週最低300件のテレアポを実施する
- テレアポでの獲得率(月)を3%にする
業績評価といえども「売上」「受注数」など大きな成果だけを目標として掲げるのではなく、「テレアポ〇件」というように具体的な行動量も目標として掲げることが重要です。
STEP2:業務着手・見直しをする
目標設定後は、設定した目標にしたがって日々の業務に励みます。各社員が目標到達期日までに目標を達成できるよう、適宜進捗状況の管理をしたり相談にのったりするようにしましょう。
外的な要因により当初と状況が一変した場合には、目標の見直しを検討することも必要です。不可能な目標に向かって継続的に努力するのは困難であるため、その時々の状況に合わせて組織目標や個人目標を柔軟に調整していく必要があります。
STEP3:評価する
評価期間終了後には、以下の流れに沿って、目標値の達成状況や達成度を評価しましょう。
- 部下の自己評価
- 部下と上司の面談
- 最終評価
部下の自己評価を最初のプロセスにすることで、自身で行動や成果を振り返ってもらい、その期の結果を今後の成長の糧としてもらえます。また、自己評価と上司評価の違いを知ってもらうことで、自身の能力や態度に関して過小評価・過大評価になっている点に気づくきっかけを与えることもできます。
業績評価を成功させる方法
最後に、業績評価を成功させる方法について紹介します。
業績プロセスも評価指標にする
業績評価において「業績結果」(成果)のみを評価対象とすると、課題が顕在化せず部下の今後の成長につながらないため、成果に至るまでの過程も評価基準に盛り込んで評価対象とすることが重要です。業績を出すまでの過程を評価する際には、業績を導き出すプロセスでどのような活動をおこなったのかを評価する「業績プロセス項目」を用います。
業績プロセス項目の導入により、その結果に至った理由を深掘りできるため、次の目標達成に向けて改善策を見つけやすくなったり、再現性高く同様の成果を出せるようになったりします。また、外部要因に左右される業績結果だけでなくプロセスにも焦点を当てることで、社員をより適切に評価することが可能です。
たとえば営業職において、よい業績結果を出なかった社員がいたとしましょう。その社員の訪問件数や提案数、提案後の決定率などを細かく分析することで、何故そのような結果に至ったのかを論理的に把握できるようになるのです。
そして、判明した事実をもとに部下自身に改善策を考えてもらうことや上司からアドバイスをすることで、部下の成長を促せます。指導する側も、各社員の課題やよい点などを知ることで、個別最適化された指導をおこなえるようにもなるでしょう。
業績評価の項目例
どのような業績結果・業績プロセス項目を用意したらよいのかわからない方に向けて、業績評価項目の一例をまとめました。
営業職 (部門)の 「業績評価項目」 | ||
---|---|---|
売上高 | 売上高前年比伸び率 | 粗利益 (率) |
新規開拓件数 | 顧客単価 | 契約件数 |
契約決定率 | 経費 | クレーム件数 |
イベント回数 | イベント集客数 | ポスティング件数 |
製造職 (部門)の 「業績評価項目」 | ||
---|---|---|
生産高 | 原価削減率 (額) | 生産高/1人あたり |
リードタイム | 歩留り | 設備稼働率 |
ヒヤリハット防止提案件数 | 改善提案件数 | 製品クレーム件数 |
「イベント回数」や「営業利益」のように部署全体の評価項目として適している項目もあれば、「ポスティング件数」や「契約件数」のように個人の項目が適切なものもあります。
ただし個人項目と部署項目の境目は曖昧であり、たとえば「売上高」などは、社員単位、部署単位のどちらでも適用可能です。また、自社のデータ上契約率に大きな影響を与えるのが「ポスティング件数」であるとわかっている場合には、「ポスティング件数」を部署全体の評価項目として適用するのもよいでしょう。
業績結果項目と業績プロセス項目の区分も、会社ごとに異なります。それぞれの代表的な項目を挙げると、業績結果項目としては「売上高」や「契約件数」が、業績プロセス項目としては「ポスティング件数」や「面談件数」「新規面談件数」「アポイント面談件数」が挙げられます。
ただし、「クレーム件数」「キャンセル件数」のように、業績結果項目と業績プロセス項目のどちらにも割り当てられる項目もあります。昨今では、顧客満足度やリピート利用率など、単発の売上に留まらない概念も重視されています。たとえその期の契約件数・販売件数が多くても、クレーム件数やキャンセル件数も多ければ、事業としてはネガティブに捉えられるのです。
したがって、顧客満足度を重視している会社であれば、他社が業績プロセス項目として「クレーム件数」を採用していても自社では業績結果項目として採用するなど、柔軟な調整が必要となるでしょう。
まとめ
業績評価とは、一定期間の業務の成果で従業員を評価する評価手法です。業績評価を導入することで、客観的な評価基準による賞与や人事異動などの社員の処遇決定ができるようになります。また、仕事に対して意欲的になったりスキルが成長したりするなど、社員のパフォーマンス向上も期待できるでしょう。業績評価の場合でも、社員の成長促進や評価への納得感向上のために、プロセスにも注目すると、より効果的な運用ができます。
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記事監修
- 前田 正彦(まえだ まさひこ)
- 株式会社スキルアカデミー 代表取締役CEO
慶應義塾大学経済学部卒業。米国マサチューセッツ工科大学経営大学院(Sloan School of Management)修了。株式会社前田・アンド・アソシエイツ代表取締役(現職)。
株式会社NTTデータにて金融システムの開発に携わった後、 数々のコンサルティングファームにて、戦略立案から実行・定着までのプロジェクトを数多くリードしてきた。
その後人事・組織コンサルティングの必要性を痛感し、当該分野のプロジェクトを立ち上げ、戦略から人事・組織コンサルティングまで一貫したサービスを提供している。
スキルアカデミーにおいては、代表取締役CEOとしてAI人事4.0事業全体の推進をリードするほか、組織・人事・人材開発などの案件を数多くリードしている。
また組織診断・管理特性、職務等級制度・成果報酬制度などツールを開発。グローバル人事プロフェッショナル組織であるSHRM認定資格を取得。