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人事評価制度における失敗とは?要因と対策を徹底解説

人事評価制度における失敗とは?要因と対策を徹底解説
  1. 人事評価制度の失敗に関する具体例
  2. 人事評価制度の失敗が企業に与える影響は大きい
  3. 人事評価制度はなぜ失敗してしまうのか
  4. 人事評価制度を失敗させないための対策
  5. まとめ

「企業規模の拡大に伴って、従業員から人事評価に不満の声が出始めた」「離職した人材さえもいる」といった悩みを抱える企業もあることでしょう。

人事評価制度を新たに導入したり既存の制度を改定したりしても、従業員からの不満が消えず、悩む企業は少なくないようです。

本記事では、人事評価制度が失敗するケースにはどのようなものがあるのか、原因は何なのか、どのように改善していけばよいのか、を解説していきます。この記事を読むことで、自社が何でつまずいており、今後どのような対策を講じればよいのかを把握できるようになるはずです。
ぜひ最後までご覧ください。

人事評価制度の失敗に関する具体例

多くの企業では人事評価制度を導入したり改定したりとさまざまなアプローチをしていますが、人事課題を解決できている企業は少数に留まります。
人事評価制度の手法のみを用いて導入しても、失敗してしまう可能性は高まるだけです。

具体的には、下記のような失敗をしてしまうケースが見受けられます。

  • 評価に対して納得いかずエンゲージメントが低下する
  • 優秀な人材が流出してしまう
  • 人間関係の悪化を招いてしまう
  • 自社が求めている人材が育たない

それぞれの失敗要因を知り、適切な対策を取ることが重要です。本章では、まず失敗の具体例について見ていきましょう。

評価に対して納得いかずパフォーマンスや生産性が低下する

納得のいかない人事評価を受けると、社員のエンゲージメントやモチベーションは低下してしまいます。

もし自分の評価が低かった場合、「自分はこんなに頑張っているのに、なぜ会社は評価をしてくれないのか」と社員は不満を抱きやすくなります。
会社側は適切な評価をしていると思っていても、実際に評価される従業員は評価に公平性を感じていないかもしれません。

「なぜこの評価なのか」を被評価者が理解し納得できなければ、業務に対するモチベーションや生産性は低下してしまいます。

エンゲージメントが低下し優秀な人材が流出してしまう

適切に機能しない人事評価制度によって引き起こされたエンゲージメントの低下は、優秀な人材の流失にもつながりかねません。

成果に対して正しい評価・納得の得られる評価ができなければ、会社への不満につながります。その結果、会社へのエンゲージメントも低下してしまうでしょう。

エンゲージメントが低下すると、「この会社で昇進しよう」「この会社で成果をあげよう」という意欲が下がり、離職に至るリスクもあります。

とくに優秀な人材は引く手あまたなので、自社よりも好条件で評価制度のしっかりしている大手企業へと流出してしまう可能性も高まってしまうのです。

人間関係の悪化を招いてしまう

公平な評価ではないことへの不満が募り、人間関係の悪化につながってしまうケースもあります。

客観的に判断できる公平な評価制度ではない場合、被評価者は自分の受けた評価に対し納得感を持ちづらいでしょう。そのような状況下で別の社員が高い評価を受けている場合、「あの人は気に入られているから評価が高いのだ」という誤った認識を持たれてしまうかもしれません。

不公平感から生まれた疑念や不満は、社内の雰囲気を悪くさせるだけではなく、従業員同士の関係をも悪化させてしまうリスクがあります。

自社が求めている人材が育たない

評価制度が機能していなければ、人材育成に悪影響をあたえ、自社が求めるような人材を育てづらくなります。

評価制度が適切に機能しておらず評価へのフィードバックが欠けている場合、従業員は自分の成果や成長について他者から称賛されたり、助言を受けたりする機会を失ってしまいます。その結果、モチベーションの維持がしづらくなり、成長のための方向性を見出すことや改善点を見つけることも難しくなってしまうでしょう。

人事評価制度がうまく働いていない別のケースとしては、評価制度において明確な目標設定を欠いている場合も挙げられます。目標は、従業員が成長し続けるために必要な指針です。具体的な目標が設けられていなければ、従業員は自身の成長や業績向上に向けて努力する意欲を保ちづらくなります。

こうした理由により人材の成長が鈍化し、自社が理想とする人材の確保が難航するおそれもあります。

人事評価制度の失敗が企業に与える影響は大きい

人事評価制度の失敗が企業や経営に与えるインパクトは、非常に大きいものです。

先ほど紹介した失敗例のとおり、人事評価制度は経営や企業の業績、人材の質とも密接な関連があります。

人事評価制度が適切に機能しておらず、モチベーションや生産性が下がることで、サービスの質まで下がるかもしれません。優秀な人材の流出により売上が伸びづらくなるということも、十分に考えられます。

そのため、「人事」という狭い視野での課題ではなく、「経営」という大きな課題であることを認識して改善に取り組む必要があります。

人事評価制度はなぜ失敗してしまうのか

人事評価制度が失敗してしまう要因は、以下3つのレイヤーに分けられます。

  • 体制面における失敗要因
  • 方針と設計面における要因
  • 導入から運用面における要因

自社の人事評価制度が失敗している要因を特定する際には、レイヤーごとに分解することで、原因の特定がしやすくなるはずです。
ここからは、それぞれのレイヤーごとに、具体的な失敗原因を紹介していきます。

体制面における失敗要因

人事評価制度の細部をどれほど改善したとしても、人事評価制度自体を改善する体制が整っていなければ、成果を出すことは難しくなります。

人事評価制度の改善は、小手先の手法で実現できるものではありません。誰が指揮をとり、どのような規模で改善に取り組んでいるのかが、成果に大きな影響を与えます。

経営陣が関与せず人事に丸投げ状態になってしまっている

「人事のことは人事がやるべき」と、人事評価制度の設計から運用までを経営陣が人事に丸投げしている状態も、失敗の原因となります。

経営のトップや経営陣が人事を経営課題として捉えておらず、人事部と一緒に改善に取り組む体制を構築できていない場合、人事任せになってしまいがちです。

人事評価制度の導入や抜本的な改定は、経営陣の協力なくして成功させるのは困難です。質が高く成果につながりやすい人事評価制度を導入・改定する上では、組織、会社全体を巻き込む大きなプロジェクトとして推進していく必要があります。そのため、影響力のある経営陣も積極的に参画していくことが重要です。

人事主導で人事評価制度にテコ入れをし、人事評価に効果的とされる各種手法を導入できても、組織の変革までは期待できません。

方針・設計面における要因

自社にマッチした人事評価手法を用い、公平な評価を実施できるように設計をおこなっていかなければ、成果を出すことは難しくなります。方針・設計面で起こりがちな失敗例には、次の2ケースが挙げられるでしょう。

  • 経営方針から逸れた設計をしている
  • 評価レベルの定義が曖昧になっている

経営方針と人事評価制度を連携させていない場合に起こり得る問題や、評価基準が曖昧な場合に生じてしまうトラブルについても理解しておくことが重要です。

経営方針から逸れた設計をしている

経営方針をリンクさせていない人事評価制度を設計することも、失敗の原因の1つです。

経営方針から逸れた評価制度にしてしまうことで、自社が求める人材から遠ざかってしまう可能性が高まります。それにより人事評価制度が形骸化してしまい、従業員や企業の成長に繋がらない制度となってしまいやすくもなるでしょう。

たとえば、他社が年功序列型の「メンバーシップ型雇用」を導入し業績を向上させてきたからといって、自社にもそれが通用するとは限りません。自社の社風や社員特性、業務の性質を踏まえたら、職務の遂行度合いや役割で評価をする「ジョブ型雇用」のほうが適しているかもしれません。

また、自社に適した人事評価手法を導入できていても、公正な評価をおこなえない制度になっていれば、社員から先述したような不満が生まれてしまう可能性が考えられます。

経営方針から逸れた評価制度は、会社の方針に矛盾を生み、従業員からの理解もなかなか得られません。モチベーションの低下などにもつながるでしょう。

評価レベルの定義が曖昧になっている

評価レベルの定義が甘い場合にも、公平な評価をできず、失敗の原因となります。

評価レベルの定義が曖昧だと、評価者によって評価が異なる可能性も否めません。
同じ基準にのっとって評価をしたはずなのに、同等のスキル、能力を持つ社員の評価に大きく乖離が生まれてしまうリスクがあるでしょう。

また、評価された側が評価への納得感を持ちにくくなってしまう点もデメリットです。

誰でも公平な評価ができる評価レベルを定義しなければ、どれだけよい手法を活用しても、納得感の高い人事評価制度を作ることはできません。

導入・運用面における要因

人事評価制度を導入するだけでは、その制度が定着し成果を出せるとは限りません。導入後の運用において次のような問題が発生し、適切に機能しなくなる可能性もあります。

  • 組織にしみついた組織文化を変えられていない
  • 導入しただけでメンテナンスをしていない

導入だけで終わらず、組織文化の見直しや人事評価制度のメンテナンスをおこなったりすることが重要です。

組織にしみついた組織文化を変えられていない

組織にしみついた文化を変えられないまま人事評価制度だけを変更していることは、失敗の要因となります。

どれだけよい手法を用いたとしても、組織に染み付いた文化を変えることができなければ、人事評価制度の定着は難航してしまうでしょう。

たとえば、メンバーシップ型からジョブ型に変えるなど大きく制度を変更する際には、単に評価制度を変えるだけでは不十分です。在籍年数の長さが評価・報酬に反映される「年功序列型」の評価制度のもと在籍し続けてきた社員は、会社がジョブ型雇用に切り替えても、以前のメンバーシップ型の意識を維持してしまう傾向にあります。

徹底的に人事評価制度を定着させるには、表面的な制度内容だけでなく、自社の文化や従業員の意識にも目を向け、それを変える努力もしていかなければなりません。

導入しただけでメンテナンスをしていない

人事評価制度を導入しただけでメンテナンスをおこなえていない場合も、失敗の要因となります。

今までと大きく異なる人事評価制度を導入する際には、当然、導入しただけでうまくいくとは限りません。自社の状況に合わせ、定期的にメンテナンス、ブラッシュアップをしていく必要があります。

流行りの手法を用いて導入しただけでは形骸化してしまい、意味のない人事評価制度になりやすい点に注意が必要です。

また、先ほどご紹介したように、経営方針とリンクさせることも忘れないようにしましょう。経営方針が変わった際には、人事評価制度の見直しもおこなわなければなりません。
メンテナンスが施されておらず、経営方針とリンクしない人事評価制度を運用し続けている場合も、失敗につながります。

人事評価制度を失敗させないための対策

人事評価制度を成功させるためには、以下3つのレイヤーでアプローチをしていく必要があります。

  • 体制面における対策
  • 方針・設計面における対策
  • 導入・運用面における対策

レイヤーごとに課題をすみわけし、多面的に対策を講じることで、自社が抱える課題を解決しやすくなります。「しっかりとリサーチ・準備をして導入したけど、うまく機能していない」という場合には、1つのレイヤーだけに意識を向けていないか見直してみるとよいでしょう。

体制面における対策

1つ目のレイヤーとして、まず人事評価制度を改定するための体制を整えていく必要があります。

人事評価制度の導入や改定を成功させるには、人事だけでなく企業のトップもプロジェクトに関われるかが重要です。また、トップがプロジェクトの指揮をとり、全社的に推進させられるかも、成功のカギといえるでしょう。

経営トップ自らが経営課題と捉え制度の設計を進める

失敗の要因でもご紹介したように、経営陣が人事評価制度の改定や導入を経営課題として捉え、経営トップ自ら指揮をとることが重要です。

経営トップ自らが主導することで、プロジェクトの推進力も上がりやすく、経営方針とリンクした人事評価制度を作成しやすい体制となります。

また、経営のトップ自らが主導することで、人事だけで人事評価制度の導入や改定をするよりも、従業員に与える影響度が大きくなるでしょう。その結果、導入が進めやすくなる点も利点です。

方針・設計面における対策

2つ目のレイヤーとして、人事評価制度の方針を正しく定め、誰でも公平に評価できる制度を設計する必要があります。

人事評価制度にはさまざまな手法があるので、自社のフェーズや課題にマッチした手法を選ぶことが重要です。また、導入する評価手法を用いて公平な評価をし、納得ができる評価レベルを定義しながら設計をおこなっていくことが成功のカギです。

経営方針とリンクした評価手法を用いる

経営方針とマッチした評価手法を用いることが重要です。

経営方針とリンクをした評価手法の活用により、経営課題を解決しやすくなります。他社がやっている評価手法だからという理由で、評価手法を安易に決めないことが大切です。

企業によってマッチした評価手法は異なるので、経営課題や経営方針から逆算をして評価手法を決めていきましょう。

昨今では、社会情勢の変化を受けて、年功序列のメンバーシップ型雇用から、年齢に関係なく成果を出した社員を評価するジョブ型雇用に切り替える企業が増えています。

しかし中には、メンバーシップ型雇用のほうが自社に適しているケースもあるでしょう。

仮に、経験の長さや習熟度を重視して評価するという経営方針を持つ企業ん場合、経験さえ積めば誰もが平等に昇級・昇級していくメンバーシップ型の雇用制度が、自社の文化に適している可能性があります。

成果や職務の評価に重きを置くか、在籍年数や経験に重きを置くかは、良し悪しではなく考え方の違いです。他社を参考にするだけでなく、自社に適しているかを考えることも重要といえます。

JNDを取り入れた公平な評価制度を設計する

経営方針とリンクした評価手法を活用しただけでは不十分であり、実際の評価をする際には、誰もが納得のいく評価レベルを設計することも重要です。

たとえば5段階の評価だった場合、下記のような曖昧な基準では、評価のバラツキが起こりやすくなります。

5 よくできている
4 まあまあできている
3 ふつう
2 あまりできなかった
1 まったくできなかった

基準に具体性が欠ける場合、評価者ごとに解釈が変わり、被評価者が納得できない評価になりがちです。

こうした課題の解決には、「JND(最小可知差異・、丁度可知差異)」という評価基準が役立ちます。JNDとは、違いを認識できるか、できないかの境目になる「差異」を表す概念です。

標準となる感覚刺激を対象に、明確に違いを識別できる最小差異を示します。
JND値よりも値が大きくなるほど差異は明瞭になり、違いに気づける人の数が増えます。逆に、JND値よりも値が小さくなるほど差異が小さくなり、多くの人がその違いになかなか気づけません。

このJNDを取り入れることで、主観を排除した評価レベルを定義でき、評価に対して納得をしてもらいやすくなるのです。

導入・運用面における対策

3つ目のレイヤーは、導入・運用面における対策です。
人事評価制度は導入から定着までを徹底的におこなう必要があります。

評価制度を設計し導入をするだけでは、従業員の意識や組織の文化までを変えることはできず、形骸化してしまう可能性が高いでしょう。

人事評価制度の設計や導入をゴールにするのではなく、完全に定着した状態をゴールと捉えることが重要です。

徹底的に定着するまで介入していく

組織文化や従業員の意識が徹底的に改革されるまで、経営陣も人事評価制度に介入しましょう。

とくに、メンバーシップ型からジョブ型に変えるなど大きく制度を刷新する際には、従業員の理解を得るまでに時間がかかる可能性が高いです。

そのため、時間がかかったとしても、新しい評価制度について社員に周知・浸透させていく必要があります。

また、評価を実施する際には評価するだけで終わらせず、フィードバックとフォローを適切かつ丁寧におこない、従業員の理解を得ていくことも大切です。

まとめ

人事評価制度がうまく機能していない場合、社員から不満の声が上がりやすくなり、モチベーションやエンゲージメントの低下につながります。
また、人間関係の悪化や人材育成の行きづまりなども懸念されるでしょう。

人事評価制度を成功させる上では、課題を「体制面」「方針・設計面」「導入・運用面」と3つのレイヤーに分けて、1つずつ対処していくことが重要です。
適切に対策を講じることで、モチベーションやエンゲージメント、定着率の向上など、本来人事評価制度で得られるメリットをしっかりと得られるようになるでしょう。ぜひ実践してみてください。

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記事監修

前田 正彦(まえだ まさひこ) 株式会社スキルアカデミー 代表取締役CEO
前田 正彦(まえだ まさひこ)
株式会社スキルアカデミー 代表取締役CEO

慶應義塾大学経済学部卒業。米国マサチューセッツ工科大学経営大学院(Sloan School of Management)修了。株式会社前田・アンド・アソシエイツ代表取締役(現職)。
株式会社NTTデータにて金融システムの開発に携わった後、 数々のコンサルティングファームにて、戦略立案から実行・定着までのプロジェクトを数多くリードしてきた。
その後人事・組織コンサルティングの必要性を痛感し、当該分野のプロジェクトを立ち上げ、戦略から人事・組織コンサルティングまで一貫したサービスを提供している。
スキルアカデミーにおいては、代表取締役CEOとしてAI人事4.0事業全体の推進をリードするほか、組織・人事・人材開発などの案件を数多くリードしている。
また組織診断・管理特性、職務等級制度・成果報酬制度などツールを開発。グローバル人事プロフェッショナル組織であるSHRM認定資格を取得。

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