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職務等級制度とは?メリットや他の等級制度との違いなどを解説!

職務等級制度とは?メリットや他の等級制度との違いなどを解説!
  1. 職務等級制度とは?
  2. 職務等級制度のメリット
  3. 職務等級制度のデメリット
  4. 等級制度の種類と比較
  5. 職務等級制度の導入がおすすめな企業
  6. 職務等級制度を設計する流れ
  7. 職務等級制度を導入している企業
  8. まとめ

「業績は好調だが、社員の定着率が芳しくない」「今の人事制度で本当によいのかわからない」などの悩み・課題を抱えている企業もあることでしょう。

能力評価や成果評価の制度確立により、社員の公平な評価やエンゲージメント向上はある程度見込まれるものの、それだけではカバーしきれない部分もあるものです。

本記事では、社員の定着率向上などが期待される「職務等級制度」の概要や、メリット・デメリット、設計手順などについて解説していきます。本記事を参考にすることで、職務等級制度の全体像を掴むことができ、導入後にはさまざまな人事の課題解決が期待できるでしょう。

職務等級制度とは?

職務等級制度とはどのような制度なのか、まずはその内容と目的について解説します。制度の性質や役割をしっかりと押えておくことで、的を射た導入・運用をしやすくなるでしょう。

職務等級制度の概要

職務等級制度とは、社員の担当する職務や仕事、業務によって等級を設定し、職務の遂行度合いによって人事評価をおこなう制度のことです。

「職務」とは業務のまとまりを意味し、職務等級制度では業務やポストにおける価値を測ることで、それぞれの職務に対する等級を定めます。難易度や責任レベルによって等級が決定され、その遂行状況によって評価がなされる制度です。

職務等級制度においては、学歴や勤続年数、能力といった属人的要素で判断せず、「仕事」が評価基準となります。つまり、その職務価値の大きさによって序列をつくる等級制度といえるでしょう。

会社にとってどれだけ重大な職務を担っているか、その職務に対して相応の成果を上げているかが、評価のポイントとなります。

職務等級制度の目的

職務等級制度の主たる目的は、以下の2点です。

  • 同一労働・同一賃金が実現できる
  • 成果主義的評価にすることで生産性向上を図る

職務等級制度では職務内容によって等級が定められるため、給与と労働の結びつきを明確化しやすく、同一労働・同一賃金の実現が期待できます。

職務等級制度を導入することで、古くからの日本型雇用にありがちな年功序列の廃止にもつながるでしょう。その結果、「若くても成果が発揮できればしっかりと評価される」という仕組みの確立も見込まれます。

職務等級制度の導入は、自社において各職務がどれだけの価値があるかを見直すきっかけにもなり、それによって生産性の向上も期待できるでしょう。

職務等級制度のメリット

職務等級制度の導入により期待できるメリットとしては、以下が挙げられます。

  • スペシャリスト人財の確保・育成ができる
  • 社員のモチベーション向上ができる
  • 採用や人員配置のミスマッチが防げる
  • 労働と給与の連動が明確になる

それぞれの詳細について解説します。

メリット①|スペシャリスト人財の確保・育成ができる

職務等級制度を導入することのメリットは、専門性のある人財を確保・育成できることです。

日本における従来のメンバーシップ型雇用では、属人的要素に左右される部分が大きくなってしまい、スペシャリストの育成が難しい傾向にあります。職務等級制度では、職務内容などを記載した「職務定義書」に明記された担当職務に各社員を専念させられることから、スペシャリスト人財の育成が期待できるのです。

それぞれの職務によって等級を定め、それに対する成果で評価をおこなうため、専門的な知識・技術に特化した人財の育成が望めます。また、自身の持つ専門的知識・技術に対して正当な評価が受けられるため、社員の納得度も上がり、定着率も高められるでしょう。

メリット②|社員のモチベーション向上ができる

社員のモチベーション向上が期待できることも、職務等級制度のメリットです。

職務等級制度では、労働の内容が明確に分類され、社員には担当する職務をしっかりと果たすことが求められます。

各社員は職務と関係のない業務や仕事に時間を取られることがなくなることから、社員の仕事に対するモチベーションの向上・維持が期待できるのです。
評価基準も明確となりキャリア形成もしやすくなるため、社員のエンゲージメント向上にも役立つでしょう。

メリット③|採用や人員配置のミスマッチが防げる

採用や人員配置におけるミスマッチを防げることも、職務等級制度のメリットです。

職務等級制度では、会社が新規採用する人材に求める能力や職務内容が明確化されます。採用したい人物像の輪郭がはっきりとし、自社が必要とする人財をピンポイントで採用しやすくなるのです。本来理想としているような人物像にそぐわない人材を採用してしまうリスクも低下させられるでしょう。

既存社員についても、それぞれの職務内容や能力が明確化されるため、職務や業務に見合わない人員の配置が起こりづらくなります。

メリット④|労働と給与の連動が明確になる

給与と労働の結びつきが明確化されることも、職務等級制度のメリットです。

職務等級制度では、それぞれの社員が担当する業務の境界線が明確になります。職務定義書の内容に沿って処遇が決定されるため、「給与=労働への対価」という構図が確立されるのです。

勤続年数の長さや役職に応じて処遇が決まりがちな「職能資格制度」と比較をした際に、そのメリットが際立つでしょう。
たとえば、職能資格制度においては、社員の保有する能力の程度に応じて役職とは別の「資格」が付与され、資格に応じた給与が支払われます。
一方で職務等級制度においては、「人事部長」と「営業部長」などの業務内容やその価値、責任の重さといった「職務」の大きさに応じて給与が変動することが基本です。

このように職務等級制度では、異なる職務を担う社員の処遇を適切に決定できることから、職能資格等級制度に比べて従業員のエンゲージメントが向上しやすくなるでしょう。

職務等級制度のデメリット

職務等級制度は、適切に運用ができれば、前述してきたメリットを得られます。しかし、制度の導入・運用に粗があれば、以下のような思わぬ不利益が生じることも考えられます。

  • 導入の負担が大きい
  • 運用に手間がかかる
  • 中途半端な導入をしてしまうと逆効果になる可能性がある

ここからは、各問題の詳細と対処法について見ていきましょう。

デメリット①|導入の負担が大きい

職務等級制度のデメリットとしては、職務定義書の作成など制度の設計に対する負担が大きいことが挙げられるでしょう。

職務等級制度において重要な職務定義書では、職務の定義を詳細に設定しなければならず、導入時の負担が大きくなってしまいます。

職務等級制度で発生する作業としては、「職務分析をおこなう」「職務に応じて等級を分ける」「評価基準を策定する」「評価項目を策定する」などがあり、とくに人事がおこなうべき作業項目は多岐にわたります。同じ役職であっても仕事によって等級は異なるため、職務の定義づけに難航することもあります。運用前には、社員に対して目的や運用方法などを丁寧かつ適切に周知する必要があります。こうした作業負荷が発生することから、職務等級制度の導入までに時間と手間がかかってしまうのです。

こうした職務等級制度の制度設計に対する負担を軽減するためには、外部コンサルタントなどに依頼し、第三者の意見を取り入れたり、制度設計自体に介入してもらったりするとことも有益です。

デメリット②|運用に手間がかかる

導入時だけでなく運用にも相応の手間がかかってしまいやすいことも、職務等級制度のデメリットの1つといえるでしょう。

たとえば運用後に発生する業務として、職務定義書の管理が挙げられます。職務が変わったときなどには一人ひとりの報酬や待遇の変更が必要となりますが、その対応に大きな負担がかかってしまうのです。職務定義書はビジネス環境の変化に伴って常にアップデートさせる必要もあるため、職務定義書の変更頻度は少なくありません。

こうした職務定義書の管理は、それを担う人事担当者などに多大な負担をかけてしまう恐れがあります。

デメリット③|中途半端な導入をしてしまうと逆効果になる可能性がある

中途半端な導入により、かえって問題が生じる可能性があることも、職務等級制度のデメリットです。

職務等級制度の導入では、社員が自身の担当する職務にのみ専従できるようになることが理想です。

しかし、職務定義の作成がしっかりとできていなければ、本来は範囲外である業務を社員が担うことにもなり得ます。それが社員のモチベーション低下や不満につながってしまうかもしれません。

また、職務等級制度は成果主義的な制度であるため、職務によっては、昇進もあれば降格も当然あり得ます。降格により社員が自信を失ったり評価への不満を抱いたりし、仕事への意欲が低下する恐れもあるでしょう。

職務等級制度はメンバーシップ型制度とは対極を成す制度であり、勤続年数を重ねることが昇給につながらない制度である点にも注意が必要です。その点に関して社員への丁寧な説明やフォローがなければ、既存のメンバーシップ型制度に愛着を抱いていた社員に不満が募り、離職につながってしまうこともあるかもしれません。

ただし、ここまで述べてきたデメリットは、不備・不足がある状態で職務等級制度が導入された際に生じ得ることです。しっかりと準備・運用をおこなえば、そうしたリスクも最大限抑えられます。

職務定義書の作成から導入、運用までを丁寧におこない、運用の定着についても徹底的に取り組むことが大切です。

等級制度の種類と比較

等級制度には、これまで解説してきた職務等級制度のほか、「職能資格制度」と「役割等級制度」があります。それぞれの特徴、メリット・デメリットは次のとおりです。

職務等級制度 〇特徴
評価対象が「仕事」であり、雇用形態や勤続年数といった属人的要素は評価対象とされない。日本ではそれほど浸透していないが、海外では幅広く採用されている。

 

〇メリット
・各社員の給与を合理的に決定できる
・自社が必要とする人物像を明確にできる

 

〇デメリット
・職務定義書の作成が煩雑である
・職務定義書の見直しに負担がかかる

職能資格制度 〇特徴
社員が業務を遂行するための能力をどれほど有しているのかを評価する制度。日本独自の制度といわれている。

 

〇メリット
・幅広い業務を担うゼネラリストの育成に適している
・従業員が安心感を持って働ける

 

〇デメリット
・総人件費が高くなりがちである
・職務内容と資格等級にズレが生じやすい

役割等級制度 〇特徴
業務内容と各自の能力とを掛け合わせ、ランクを決定する。仕事の成果と個人の能力を加味して評価される。「ミッショングレード制」とも呼ばれる。

 

〇メリット
・役割の大きさと給与が適切に連動する
・各社員の役割が明確になる

 

〇デメリット
・役割等級の信頼性を確保するためには、知見が必要である
・市場の変化などに応じて役割の見直しをする必要がある

職務等級制度と職能資格制度の大きな違いとは?

職務等級制度と職能資格制度の大きな違いは、職務等級制度では職務ごとの達成度を評価するのに対し、職能資格制度では社員の職務遂行能力を評価することにあります。

職務等級制度が属人的要素に左右されない「ジョブ型雇用」であるのに対し、職能資格制度は年齢や勤続年数、雇用形態や役職などに左右される「メンバーシップ型雇用」です。

職務等級制度はアメリカをはじめとした欧米諸国で一般的な等級制度であるのに対し、職能資格制度は日本独自の制度であるといわれています。

目指す人物像にも違いがあり、職務等級制度は「スペシャリスト」、職能資格制度は「ゼネラリスト」です。

各職務の大きさを定量的に測る「職務等級制度」と、「終身雇用」を前提としており職務の定義に曖昧な部分がある「職能資格制度」は、対極の立場にある制度といえるでしょう。

職務等級制度の導入がおすすめな企業

職務等級制度の導入が適しているのは、以下のような企業です。

  • 成果評価と能力評価が確立されているもののより公平性を担保したい企業
  • 給与と労働を紐づけたい企業
  • 特定分野に強い人財を育てたい企業

それぞれの詳細について解説します。

成果評価と能力評価が確立されているもののより公平性を担保したい企業

同一労働・同一賃金が基本である職務等級制度では、より公平な評価が可能です。

職務等級制度では仕事に応じた等級が割り当てられるため、同一の労働をおこなっていれば同一の賃金が得られます。
年齢や勤続年数、性別、雇用体系といった属人的要素によって賃金が変動しないため、賃金の公平性が保たれるのです。

職能資格制度では、資格さえ同じであれば、担当している職務の大きさが異なっても処遇は同じであるため、処遇面で社員に不満が募ることがあるでしょう。
その点、担う職務に応じて処遇が変更となる職務等級制度では、社員からの納得感を得やすくなります。

これらの特徴から、職務等級制度は、現存の制度より更に公平性を担保できる制度にブラッシュアップしたい企業におすすめです。

特定分野に強い人財を育てたい企業

職務等級制度は、特定分野に精通した人財を育成したい場合にも適しています。

職務等級制度は職務の大きさによって等級が定められる制度であり、制度を設計する際には、職務を先に定めた後で各職務に適した人物を当てはめます。
こうした性質から、特定の分野に強いプロフェッショナル人財が育ちやすくなるのです。

給与と労働を紐づけたい企業

給与と労働を紐付けたい企業にも、職務等級制度が適しています。

職務に応じて等級や賃金が決定する職務等級制度では、労働の内容と給与とを連動させられます。職務の価値(ジョブサイズ)によって給与を決定できるのです。

同じ職務を遂行している者であれば、年齢、学歴、勤続年数、雇用形態、個々の能力などに関わらず同じ給与であるため、給与と労働の関係を明瞭に保ちやすくなります。

これは、職務が変わらない限りは給与の上限も限られることも意味します。「あの人は大した仕事もしていないのに、勤続年数が長いから、年齢が高いから、給与も高い」といった不満の解消にもつながるでしょう。

職務等級制度は、労働者間の不合理な格差の解消を促し、給与と労働とを連動させたい企業におすすめであるといえます。職務等級制度(ジョブ型評価制度)は、厚生労働者が謳っている「同一労働・同一賃金」の原則にも適っている評価制度です。

職務等級制度を設計する流れ

職務等級制度を設計する流れは、以下のとおりです。

  • 流れ①|目的と方針の設定
  • 流れ②|職務分析と職務定義書作成
  • 流れ③|職務等級と賃金の決定
  • 流れ④|職務評価の実施

それぞれの詳細について、順を追ってご紹介していきましょう。

流れ①|目的と方針の設定

職務等級制度を設計する際には、まずは制度設計の目的と方針を定めましょう。

目的と方針が曖昧だと前述のような問題が生じやすいため、職務等級制度に反映するべき会社の方針や目的をしっかりと定めることが重要です。

現行の人事制度や現在の状況を細かく分析して問題点を把握した上で、それを解決できるような仕組みづくりを意識しましょう。

この段階では、まずは基本方針・目的と大まかな枠組みを設定し、制度の大枠ができ上がったらその後具体的な制度設計をしていきます。

流れ②|職務分析と職務定義書作成

職務等級制度導入においては、職務分析と職務定義書(ジョブ・ディスクリプション)の作成が何よりも重要です。

企業全体の業務や職務を種類ごとに細かく分類し、それぞれの職務内容や責任の範囲、スキル、知識、難易度などを職務定義書にまとめていきます。

職務定義書は、会社の経営目標を達成するために必要な職務を現実的に定義するものです。経営として、「ここまで達成してもらわねばならぬ」という経営判断のもとレベルを設定しましょう。また、社内において齟齬が生まれぬよう、表記内容が明瞭で分かりやすいことも大事です。

職務を分析する際には、「観察法」「面接法」「記述法」「体験法」の4種類のフレームワークを活用するとよいでしょう。

観察法 〇概要
作業者が仕事をおこなっている様子を直接観察してデータを収集する方法

 

〇メリット
・現場作業系の仕事の場合は、半日程度の観察で職務分析を終えられる
・仕事の様子を直接確認することで、現場の様態を確認できる

 

〇デメリット
・デスクワークを分析する場合はただ見ているだけでは職務内容をしっかりと把握できないため、メールやチャットの分析もする必要があり時間がかかる
・観察者の主観が入りやすい

面接法 〇概要
調査担当者が対象者に直接質問して回答を聞く方法

 

〇メリット
・観察だけでは見えてこない業務実態や、アンケートでは収集しきれない部分まで深掘りできる
・コミュニケーションの過程で浮かんできた疑問を直接確認できる

 

〇デメリット
・一人ひとりに時間をかけなければならないので手間と時間がかかる
・匿名性がないため対象者が正直に答えない可能性がある

記述法 〇概要
質問項目を用意してアンケート形式で答えてもらう方法

 

〇メリット
・多くの対象者を一斉に調査できる
・簡単かつ効率的で、細かい質問によって的確な調査ができる

 

〇デメリット
・アンケートの作成や回収にコストがかかる
・質問項目が不適切だと調査結果がずれる

体験法 〇概要
調査担当者が従業員の仕事を体験してその実態を把握する調査法

 

〇メリット
・職務遂行に生じる疲労度や仕事量などを調査できる
・仕事の難易度や必要な能力を的確に把握しやすい

 

〇デメリット
・調査に非常に手間と字間がかかる
・調査担当者の主観が調査結果に反映されることがある

流れ③|職務等級と給与の決定

職務の分析までを終えたら、その分析結果に基づいて等級を作成し、具体的な給与を設定していきましょう。

まずは職務価値に応じて等級数を定め、等級数が決まったらそれぞれの等級の定義を定めていきます。その後、各等級に対して給与を決定していきましょう。

職務評価の方法としては、「序列法」「分類法」「点数法」「要素比較法」の4つが挙げられます。

序列法 職務と職務を相互に比較し、その総合評価の順位に応じて等級付けする方法。
比較的手間がかからないシンプルな方法で、難しい知識が必要ない。
異なる職務を相対的に比較することから、根拠が曖昧になりやすく論理的に説明がしづらいことや、評価者の主観に左右されやすいことがデメリット。
分類法 等級ごとに求める能力や責任を明確に定め、それに基づいて格付けする方法。
たとえば、3等級は「上司の指示に基づき業務を遂行できる」、2等級は「後輩の基本的な指導をおこなえる」、1等級は「後輩が業務で高い成果を出せる水準で指導ができる」といった具合に定義づけする。
その後、分析結果を用意した等級表と照らし合わせ、適切な等級に各職務を割り振る。
点数法 知識、スキル、難易度など項目別に各職務を分析し点数を付けて、合計点数に基づき順位付けする方法。
たとえば、職務の難易度に関する項目であれば、「先輩のサポートのもと職務を遂行できる」が1点、「マニュアルに基づいて独りで作業ができる」が2点、といった具合に点数づけをする。
要素比較法 自社において中枢となる職務に基づいて各項目を比較する方法。
たとえば、「マネージャー」を基準に、フロアスタッフ、チーフなど他の役職を評価し、順位づけをする。

流れ④|職務評価の実施

職務分析や職務評価を終え、賃金の決定も完了したら、いよいよ職務等級制度の導入に移りましょう。

導入前には、社員への丁寧な周知をおこなうことが大事です。不要なトラブルを避けるため、どの職務にどのような価値があるのかを社員にしっかりと説明し、設計した職務等級制度に納得感を持ってもらった上で実施しましょう。

運用開始後には、ビジネス状況に応じて職務定義書の見直し・更新を都度おこなっていくことも大切です。また、社員に対して職務等級制度を一方的に押しつけるのは好ましくありません。不明点や不満点をヒアリングしたり、評価結果に応じて詳細にフィードバックしたりするなどして、社員に丁寧なフォローをおこなっていきましょう。

職務等級制度を導入している企業

最後に、職務等級制度を実際に導入した企業についてご紹介します。

カゴメ株式会社

カゴメ株式会社では、旧来の人事制度を廃止し、職務等級を中心としたジョブ型人事制度を導入しています。

同社では、以前まで、典型的な年功序列型の評価制度を導入していました。当時は執行役員の報酬や賞与までもが1円単位で均一化されていましたが、よりよい人事制度を実現するため、職務に対価を払うジョブ型雇用に切り替えました。同制度は、各ポジションにおけるミッション・アカウンタビリティと処遇の関係が可視化される制度です。

以前まで同社が採用していた年功序列型の制度では勤続年数なども重視されていましたが、新たに採用されたジョブ型等級制度ではその点を大きく変えました。職務の大きさを、達成責任の度合いや仕事の影響度など計20項目の数値で定量化・点数化することとしたのです。

職務等級制度の導入に際しては「トップから始めること」を徹底し、現場に不満が溜まらないよう考慮した点も、同社の制度設計の特徴的な点といえます。
また、社内全体に年収などの情報をできる限りオープンにし、社員の心理的安全性を担保することにも努めたようです。

同社は「開かれた企業」という理念を大切にしており、社員一人ひとりの個性や持ち味を活かした多様な人財の採用に取り組んでいます。

参考サイト:雇用の維持と多様な働き方の尊重|カゴメ株式会社

まとめ

職務等級制度は、職務の内容や難易度に応じて等級を決定し、社員の評価がなされる人事制度です。

職務等級制度を正しく運用できれば、スペシャリスト人材の確保・育成、社員のモチベーション向上、採用や人員配置のミスマッチの防止などが期待できます。

しかし、導入・運用に際して生じ得る種々の問題点に対策を講じずやみくもに制度を取り入れてしまうと、時間や労力の面で大きな負担が生じるかもしれません。
制度を効率的・効果的に運用するには、そもそも自社に適しているのかを判断し、適している場合には本記事でご紹介した設計手順に基づいて設計するとよいでしょう。正しく運用する上では相応の負担が発生しますので、自社に十分なリソースがない場合は、外部のコンサルタントに委託をしてみるのも1つの手段として有効といえます。

本記事が、職務等級制度の内容をしっかりと把握し、自社への導入をするかの判断材料に、またその際の参考資料となれば幸いです。

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記事監修

前田 正彦(まえだ まさひこ) 株式会社スキルアカデミー 代表取締役CEO
前田 正彦(まえだ まさひこ)
株式会社スキルアカデミー 代表取締役CEO

慶應義塾大学経済学部卒業。米国マサチューセッツ工科大学経営大学院(Sloan School of Management)修了。株式会社前田・アンド・アソシエイツ代表取締役(現職)。
株式会社NTTデータにて金融システムの開発に携わった後、 数々のコンサルティングファームにて、戦略立案から実行・定着までのプロジェクトを数多くリードしてきた。
その後人事・組織コンサルティングの必要性を痛感し、当該分野のプロジェクトを立ち上げ、戦略から人事・組織コンサルティングまで一貫したサービスを提供している。
スキルアカデミーにおいては、代表取締役CEOとしてAI人事4.0事業全体の推進をリードするほか、組織・人事・人材開発などの案件を数多くリードしている。
また組織診断・管理特性、職務等級制度・成果報酬制度などツールを開発。グローバル人事プロフェッショナル組織であるSHRM認定資格を取得。

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