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1on1が意味ないと言われてしまう特徴や理由とは?改善する方法やその効果を解説
2024/5/22
「1on1を実施したものの、現場から”意味がない”との声が寄せられた」「1on1の導入を検討しているが、効果がないという意見も見かける」といった課題や悩みを抱える企業もいるのではないでしょうか。
正しいやり方で行う1on1では種々のメリットが期待できるものの、誤ったやり方をしてしまうと思わぬデメリットを生むことが多いのも事実です。
本記事では、無意味な1on1の特徴やうまくいかない原因、1on1で効果を出すポイントなどについて解説します。1on1でしっかりと成果を出したい方は、ぜひ最後までお読みください。
1on1を行うこと自体が目的化しては意味がない
1on1は、適切に実施できれば、部下の育成やエンゲージメントの向上、組織力の強化などの成果が期待できます。しかし、1on1をおこなうこと自体が目的になっていては、本来得たい成果は得られないでしょう。1on1を形式的におこなうことで、かえって社員から反発されることにもなりかねません。
詳細は後述しますが、1on1は目的を達成するための手段と考えて、設定した目的から逆算して取り組むことが重要です。実施の目的や取り組み方を明確にして実施することで、部下の成長やモチベーションの向上が期待できます。
入念な準備をせずにいきなり全社的に展開すると、失敗による弊害が組織中で発生するリスクがあります。そのため、まずは小規模で実施し、ある程度の効果が見られた段階で全社展開することがポイントです。
意味ない1on1の特徴5選
意味のない1on1には、以下のような特徴があります。
- 1on1の目的や意義が社内に浸透していない
- コミュニケーションが一方通行になっている
- 1on1で話す内容を準備していない
- 形骸化してしまっている
- 人事評価面談になってしまっている
それぞれ、どのように問題なのかを解説します。
1.1on1の目的や意義が社内に浸透していない
1on1の目的や意義が明確になっていなければ、実施しても意味がないものとなってしまうでしょう。
仮に目的を設定できていても、組織内で浸透していない場合は、やはり問題です。現場の社員に目的が伝わっていなければ、社員は通常のミーティングと1on1の違いを理解できません。業務上の議題をとくに設けない1on1では何を話せばよいのかもわからず、ただの雑談となってしまうでしょう。
上司側が1on1の目的や意義をしっかりと理解できていない場合は、部下に思わぬ悪影響を与えることもあります。上司が目的を理解できておらず、上層部からいわれるままに仕方なくおこなっているように見えてしまうと、部下側も1on1に真剣に向き合う気にならず、モチベーションの低下にもつながりかねません。上司と部下とで目的や認識にブレが生じている場合も、1on1は意味をなさないものとなります。
また、目的や意義が明確化されていなければ、組織としても社内における1on1の優先度が低くなってしまい、取り組みも中途半端になってしまいやすいです。その場合、業務の進捗を把握できていない、適宜必要なサポートをおこなえないなどの問題が発生し、1on1が一層うまくいきづらくなるでしょう。
2.コミュニケーションが一方通行になっている
1on1が上司からの一方的なコミュニケーションとなっている場合も、意味のないものとなってしまいやすいです。1on1では相互の理解を深めるための「対話」が重要なカギとなりますが、上司が一方的に話し、部下の話を聴かない形でおこなってしまうと、対話は成立しません。
話したいこと、話すべきことを部下が話せないまま、上司からの一方的な指導や話、質問攻めがあると、信頼関係の構築も望めず、本来1on1を通じて得られるはずの部下自身の内省や自発的な成長の促進も期待できないでしょう。そうなると、ただ無駄な時間を過ごすこととなり、ストレスを溜めるだけの時間となってしまいます。
コミュニケーションが一方通行になることでこうした問題が発生してしまい、1on1で得られるはずの成果も得られなくなってしまうのです。
3.1on1で話す内容を準備していない
1on1において話す内容を事前に用意できていない場合も、1on1は失敗に終わりやすくなります。
1on1で話す話題を準備していなければ、ミーティング当日に「話す内容がない」という状況に陥りがちです。仮に最初は業務上の話題に関して話すことがあっても、回を重ねるごとに話題がなくなり、何を話したらよいのかわからなくなってしまうでしょう。それによって会話がただの雑談に脱線しやすくなり、そのミーティングは無駄な時間となってしまうことになります。
その場合、とくに部下にとっては「業務の時間を削ってまで上司と雑談するだけの時間」となってしまい、無意味かつ苦痛な時間ともなってしまいかねません。
4.形骸化してしまっている
1on1が形だけのものとなってしまっている場合も、意味のないミーティングと認識されやすいです。
上司・部下共に「社内の決まりだから」と目的なしに1on1をおこなっている場合、部下の課題や目標など必要なことについてしっかりと話し合うことができず、無意味な時間となってしまうことが多くあります。
1on1はあくまで「手段」であって「目的」ではないため、ただ実施するだけでは、社員の成長や組織力向上にはつながりません
1on1が形骸化してしまう代表的な原因としては、人事部や上層部が1on1に関して現場に丸投げしてしまっていることが挙げられます。1o1実施の目的の共有や話すべき内容、話し方など必要なサポートをしなければ、現場は目的ややり方がわからずに、形骸化してしまうでしょう。
5.人事評価面談になってしまっている
1o1が上司と部下との対話ではなく、部下を評価する場となってしまっている場合も、1on1の効果を得づらくなります。
1on1においては、上司は部下の話を聴くことに徹し、部下の意見や現状のパフォーマンスを受け止めることが大切です。部下を精神的に支え、内省を促すことが、1on1の重要な目的といえます。
しかし、1on1が以下のような様態でおこなわれ、まるで人事評価面談の場のようになってしまうと、そうした本来の目的は果たしづらくなってしまいます。
- 上司がメインで話す
- 部下の話すことに対して上司が評価を下す
- 一方的なアドバイスや指摘をおこなう など
1on1を実施する際には、評価面談となってしまわないように注意しましょう。
意味ない1on1を改善する8つの方法
1on1は、やり方を間違うと意味のない時間となってしまいますが、実施方法を以下のように改善することで効果を得やすくなります。
- 1on1の目的をしっかりと共有する
- 具体的に伸ばす能力を定める
- ティーチングとコーチングのバランスを意識する
- 1on1で話す内容を事前に決定・伝達しておく
- 定期的かつ中長期的な視野で実施する
- 1on1の内容をしっかりと記録する
- 本音で話しやすい雰囲気づくりを意識する
- 必要に応じて上司への1on1研修をおこなう
それぞれどのようなポイントを意識すればよいかを見ていきましょう。
方法1.1on1の目的をしっかりと共有する
1on1を意義のあるものにするためには、目的を上司と部下の双方にしっかりと共有し、理解してもらうようにしましょう。目的を明確化して「何のためにやるのか」を共通認識として持つことで、その達成に向けて具体的にどのようなアクションを起こせばよいのかが見えてくるようになります。
目的が曖昧なまま1on1をおこなっても、何を話してよいのか分からず、着地点も定まりません。一方で、何のために1on1をおこなうかを上司と部下の双方が理解していれば、1on1に対する姿勢も変わり、話す内容にも具体性が出てくるため、1on1を有効な時間にできます。
方法2.具体的に伸ばす能力を定める
1on1で効果を得るには目的を決めることが重要と先述しましたが、それだけでは不十分です。目的を達成するために、具体的に部下のどの能力をどの水準まで伸ばすのかを定めるようにもしましょう。
部下との対話を通じて、部下が伸ばしたいと思っている能力、現在足りていない能力、部下が抱いているキャリアビジョン、その達成のために必要な能力とは何かなどを明らかにすることが大切です。
伸ばすべき能力が具体的であればあるほど、その実現に向けた行動や次回以降に話すべき内容、支援なども具体的になります。また、伸ばすべき能力が明確になることで、部下のモチベーション向上にも期待できるでしょう。
方法3.ティーチングとコーチングのバランスを意識する
1on1では、一方的なコミュニケーションとならないよう、「ティーチング」と「コーチング」をうまく使い分けることが大切です。
ティーチングとは、経験豊富な者が自身の知識やスキル、ノウハウを教えるコミュニケーション手法です。一方コーチングとは、本人のスキルや気力を引き出し、目標達成や自己実現のための気づきを与え、主体的な行動や成長を促すコミュニケーション手法を指します。
1on1を成功させるためには、上司がアドバイスしたり答えを出すティーチングと、部下自らの解決策を見出す力や行動を促すコーチングとのバランスを意識することがポイントです。具体的には、ティーチングよりもコーチングがメインとなるようなバランスが理想でしょう。ティーチングは「他者に教える」という性質から上司と部下に上下関係を意識させやすくなりますが、上司が部下の上に立つような雰囲気が生まれると、部下は萎縮してしまい、対話をしづらくなります。
そのため1on1では、対話を通じて部下の能力開発を目指すコーチングをメインに対話をおこない、ティーチングはなるべく控えることがポイントです。ティーチングは、部下の目標達成に必要なノウハウなどを教える程度に留めるようにしましょう。
方法4.1on1で話す内容を事前に決定・伝達しておく
1on1を有益なものとするには、1on1で話す内容を事前に決定し、共有しておくことも重要です。準備不足の場合、いざ実施する際に「話す内容がない」「何を話したらよいかわからない」という事態に陥りやすくなります。
1on1で話し合う内容はあらかじめ決めておき、部下にも伝えておきましょう。それによって、部下側は事前準備がしっかりとでき、落ち着いて1on1に向かえるようになります。
また、上司側から話すことを決めて伝えるだけでなく、部下側に「話したいこと」を考えておいてもらうことも有効です。上司が話すネタを考えていても、質問をされた部下が思考を整理できていない場合、部下の意見をうまく引き出せなくないことがあります。
話すテーマを決める際には、最初に明確化・共有した目的に沿った内容となるよう意識しましょう。
具体的には、以下のように目的別に異なる話題を用意することが大切です。
目的 | 適した話題の例 |
---|---|
社員のエンゲージメント向上 | ・仕事に対する想いに関する話題 ・モチベーションに関する話題 ・プライベートに関する話題 |
部下の育成 | ・現状の仕事の課題 ・能力開発・今後のキャリアビジョン |
組織力の強化 | ・経営・組織戦略の伝達・共有・疑問解消 ・チームにおける課題 ・社内の人間関係 ・上司への要望 |
1on1に適したトピックは多岐にわたりますが、1回の1on1で話す内容は多くし過ぎないようにすることも必要です。
方法5.定期的かつ中長期的な視野で実施する
1on1を実のあるものとするためには、中長期な視野を持って実施するようにしましょう。
1on1は部下との信頼関係構築や部下自身の気づきが重要となるため、短期間で効果を発揮するものではありません。また、イレギュラーな形でおこなった場合、部下の業務状況を正確に把握することが難しくなり、必要なタイミングで適切なサポートをおこないづらくもなります。
そのため、1回おこなったら終わりではなく、週1回、月1回など頻度を決めて定期的に繰り返し実施することが大事です。
定期的に実施することでコミュニケーション機会が増え、相互理解が深まります。それによりコミュニケーションも一層取りやすくなり、1on1で話すべき内容をしっかりと深掘りできるようになるでしょう。1on1は「部下の育成」を目的としたものなので、じっくりと人材を育てるつもりで長い目で見ることがポイントです。
なお、実施に際しては、部下に負担がかからないよう、部下のスケジュールに合わせて実施することが理想です。日程の調整を上司主体でおこなってしまうと、部下に負担がかかり、1on1に苦手意識を持たれてしまうリスクが高まります。その場合、部下から本音を引き出しづらくなるでしょう。
方法6.1on1の内容をしっかりと記録する
1on1で話した内容について毎回しっかりと目に見える形で残すことも、1on1で効果を得るためのポイントです。
目に見える形で細かく記録することによって、1回1回の1on1を効果的に振り返ることができるようになり、改善点や新たな課題も見つけやすくなります。また、記録しておくことで、「なんとなく実施する」などといった意味のない1on1を回避できます。
1on1実施後には、以下のような内容を記録するようにしましょう。
- どのようなテーマで話したのか
- どのような内容だったのか
- どのような課題が見つかったのか
- その課題に対してどのようなアプローチをしていくのか
- そのアプローチをした結果どのような効果が生まれたのか など
記録作業を円滑に進めるためには、1on1ツールを利用するのもよいでしょう。1on1ツールとは、1on1のスケジュールの管理や部下一人ひとりとの会話記録を残せるもので、効率的・効果的に1on1をおこなう上で役立つものです。
スキルアカデミーが提供するAI人事4.0では、「目標トラッキング機能」が実装されており、1on1の取り組み記録を効率的に残すことができるようになっています。
また、記録した内容の振り返りは、次回の1on1の冒頭でおこなうこともポイントです。そうすることで、前回話した内容を思い出しやすくなり、1on1をスムーズに進めやすくなります。
方法7.本音で話しやすい雰囲気づくりを意識する
1on1では、部下が本音を話しやすいような雰囲気づくりが何より大切です。
上司と部下とが1対1でおこなう1on1における主な目的は「部下の育成」「エンゲージメント向上」ですが、部下が本音で話せる雰囲気づくりができなければ、それらの目的を果たすのは難しくなります。本音で話せなければ、部下の本質的な課題や強み、納得感のある目標を見つけづらく、成長のために必要な支援もしづらくなるでしょう。当然、自社への好意や愛着によって醸成される「エンゲージメント」の向上にも期待できません。
そのため、心理的安全性を担保し、部下が緊張やストレスを感じず本音を話せる雰囲気づくりを心がけましょう。具体的には、1on1の中で毎回アイスブレイクを設けることなどが有効です。プライベートの話題も織りまぜることで、双方がリラックスした状態で実施しやすくなります。
部下が本音を話せるようにするためには、上司側も本音を話すこともポイントです。悩みや不満など、部下が上司に話しにくいことも話せるようになることで有効な1on1となるため、信頼関係を構築することを常に意識しましょう。
方法8.必要に応じて上司への1on1研修をおこなう
1on1を成功に導くには、上司への1on1研修を実施することもポイントです。
1on1では、とくに上司側がその目的や意義をしっかりと理解した上で、人材育成の視点を持って取り組む必要があります。また、部下が話しやすい雰囲気の中、傾聴できる姿勢を持つことも欠かせません。さらに、先述した「コーチング>ティーチング」のバランス配分や、部下が本音を言いやすい雰囲気の醸成には、1on1に関して上司側が理解を深めることも必要不可欠です。
そのために、1on1の実施前に、上司側への1on1研修をおこない、部下の育成や組織力の向上にコミットできる準備をした上で1on1の実施に移ることが理想です。
意味ない1on1を続けるリスク
誤ったやり方のまま1on1を続けることで生じるリスクについても、しっかりと理解しておくことが重要です。
意味のない1on1は、以下のような問題が生じるリスクがあります。
- 時間が無駄になる
- 上司と部下の関係性が悪化する
- 現場の負担が増える
- 社員の離職率が高まる
1on1を改善せず放置してしまうと、多くの問題が発生するため、早急に対策が必要です。それぞれの詳細について解説します。
リスク1.時間が無駄になる
目的を明確にしない、話す内容の準備をしないなど、1on1で必要なことを怠った状態で実施しても、効果は得づらくなります。そうした意味のない1on1をおこなうことで、効果が得られないだけでなく、
大事な業務の時間を削ってしまうことで、上司・部下の業務に支障をきたすリスクもあるでしょう。
1on1をおこなっている実際の時間はもちろん、準備段階の時間やその後のアクションにかかる時間も奪われることになり、部下のモチベーションやエンゲージメントの低下にもつながります。
リスク2.上司と部下の関係性が悪化する
意味のない1on1は、上司と部下との関係性にも悪影響を与えかねません。
上司からの一方的なコミュニケーションがあったり、本音を話しにくいような雰囲気があったりする1on1は、上司・部下間の関係性悪化につながりやすいです。
1on1は日々の業務で忙しい中で実施することになりますが、そうした状況下で意義を感じられない1on1を体験すると、部下は上司に対して不満やストレスを抱きやすくなります。また、生産性のない1on1を実施する上司を目の当たりにし、部下が上司のマネジメント能力に対して疑念を抱くこともあるでしょう。
効果の出ない1on1を続けることは、上司側にとっても負担となります。部下の成長につながっていることが感じられないと、上司側も「自身の大事な時間を割いてやっているのに…」という気持ちが生まれやすく、上司が部下に不満を抱くようにもなるかもしれません。
1on1をおざなりに実施してしまうと、こうしたさまざまな問題が生じ、上司と部下の関係性が悪化していくことがあります。そうした環境下では、組織力にも悪影響を及ぼし、チームの生産性低下にもつながりかねません。
リスク3.現場の負担が増える
意味のない1on1を続けると、現場の負担も大きくなってしまうでしょう。
そもそも1on1ミーティングは、手間も時間もかかるものです。
上司は1人で何人もの部下のミーティングを実施することになります。1on1は通常、1回30分程度でおこなわれますが、たとえば部下が6人いたとしたら、3時間分の時間を費やすことになります。上司・部下共に日々の業務に追われているため、一人ひとりとのスケジュール調整も必要です。
部下は部下で、日々の業務で忙しい中で時間を割くこととなり、現場の負担は増えます。
それだけの工数をかけて意味ない1on1を実施しても本来の目的である人材育成や業務改善の効果が得られなければ、現場は疲弊してしまいます。
リスク4.社員の離職率が高まる
意味ない1on1は、社員の離職率の増加にもつながることがあります。
意味ない1on1をおこなうことで、先述したような上司・部下間の関係性の悪化が起こりかねません。また、部下は意味ない1on1をおこなう上司や会社に対し、疑問や不満を抱きやすくもなります。
負担の大きくなった部下は、会社へのエンゲージメントや、勤続することに対するモチベーションが低下し、離職に至ってしまうかもしれません。
また、離職を考えるのは部下側ばかりではなく、上司側も同様です。本来の業務以外の負担増から、離職を考えるきっかけとなってしまうこともあるでしょう。このように、組織全体で離職率の増加にもつながる可能性があります。
適切な1on1をおこなうことによる効果
先述したとおり、意味ない1on1を実施することで、現場が疲弊する、離職者が増えるなどのデメリットが生じます。
しかし、適切に1on1を実施できれば、以下のようなメリットが期待できます。
- 上司・部下間の信頼関係を構築できる
- 持続的な人材育成をおこなえる
- 業務の進捗・状況を明確に把握できる
- 組織全体の生産性向上につながる
- 定着率が向上する
それぞれの詳細について解説します。
効果1.上司・部下間の信頼関係を構築できる
人事評価面談では、上司による部下への評価、フィードバックがメインとなるため、緊張感が伴います。一方、適切な1on1では、上司が一方的に評価を下したり、批判したりしません。受容・傾聴をベースに、プライベートから仕事、キャリアなどに関する悩み事や課題について対話をおこなうため、上司・部下間の信頼関係の構築が期待できます。
また、定期的な1on1を設けることで、お互いの業務状況の把握もしやすくなり、コミュニケーションも活性化されます。それにより、気軽に話しかけやすい雰囲気が生まれることも利点です。
そのような環境下では、上司が部下の小さな変化にも気づきやすくなり、メンタル不調や仕事への不満が生じた際に、迅速に対処できるようにもなるでしょう。
効果2.持続的な人材育成をおこなえる
効果的な1on1では、持続的な人材育成が叶うことも、大きな利点です。適切な1on1では、部下の課題や悩みを明らかにし、対話によって共に解決策を見出し、振り返りをおこないながら成長を後押ししていきます。この「経験学習」のサイクルによって、持続的な人材育成が叶うのです。
1on1では、部下が自身の能力や長所・短所を発見することができ、部下の主体的な目標設計や行動変容も期待できます。また上司が部下の成長に合わせてサポートする仕組みも構築可能です。その結果、自立型人材の育成が持続的にできるようになるのです。
また、部下の長期的なキャリア開発支援もおこなえます。
効果3.業務の進捗・状況を明確に把握できる
適切な1on1では、部下一人ひとりと丁寧な対話をおこなって状況をヒアリングするため、業務の進捗や現状を明確に把握しやすくなります。
部下の課題や現状を正確に把握し、共に問題解決にあたっていくことは、上司にとっても経験や学習の機会となるでしょう。
とくにリモートワークにおいては、部下の業務の進捗や状況を把握しづらいものです。しかし、適切な1on1を実施できれば、その点もカバーでき、環境に左右されず円滑にマネジメントをおこなえるようになります。
効果4.組織全体の生産性向上につながる
適切な1on1は、組織全体の生産性向上にもつながるでしょう。
適切な1on1によって、部下一人ひとりの業務における課題や進捗が明らかになることで、組織の課題分析もしやすくなります。また、1on1ミーティングでチームや人間関係に関する話題も盛り込めば、社内の人間関係についても把握できるでしょう。
組織の課題分析が具体的に進むことで適切な人材配置もできるようになり、業務効率は上がっていきます。人間関係についても、適宜必要な対策を講じることで、連携に支障をきたす要素を排除できます。正しいやり方でおこなう1on1を通じて、「個人の能力の向上」「個人の課題解決」と「組織全体の状況把握」「組織内連携」それぞれに効果的に取り組めるようになるのです。
業務の効率化が進むと、横のつながりがスムーズになり、社員一人ひとりの仕事に対するモチベーションも向上しやすくなります。その結果、本来の目的である組織力も高まり、最終的には生産性の向上につながるでしょう。
効果5.定着率が向上する
1on1が適切におこなえると、離職率は下がり、定着率の向上にもつながるでしょう。
適切な1on1ができると、先述したとおり上司・部下間の信頼構築ができたり、課題や解決策の明確化から部下の成長が期待できます。
定期的に自身の本音を話せる機会があること、課題やその解決へのアクションが明確化されること、コミュニケーションが増えることなどによって、部下のモチベーション向上が図れるのです。
現在、部下がどのようなことに悩んでいて、どのような課題を感じているのかを1on1で引き出し、共に解決策を考えサポートすることで、部下は上司を信頼するようになります。その結果、チームや会社に対する帰属意識も高まり、定着率の向上にも期待できます。
まとめ
1on1は、誤ったやり方でおこなってしまうと、時間を無駄にする、社員の関係性や社内の雰囲気が悪化する、離職につながるなどの各種問題が発生してしまいます。
しかし、目的をしっかりと共有したり、目的別に適切な話題を選定したり、上司が傾聴やコーチングのスキルを身につけたりすることで、1on1を意義のある有益な時間にできます。適切におこなえれば、部下の育成やエンゲージメントの向上、組織力の強化など本来の目的の実現が可能です。
本記事でご紹介したポイントを意識し、ぜひ実践してみてください。
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記事監修
- 前田 正彦(まえだ まさひこ)
- 株式会社スキルアカデミー 代表取締役CEO
慶應義塾大学経済学部卒業。米国マサチューセッツ工科大学経営大学院(Sloan School of Management)修了。株式会社前田・アンド・アソシエイツ代表取締役(現職)。
株式会社NTTデータにて金融システムの開発に携わった後、 数々のコンサルティングファームにて、戦略立案から実行・定着までのプロジェクトを数多くリードしてきた。
その後人事・組織コンサルティングの必要性を痛感し、当該分野のプロジェクトを立ち上げ、戦略から人事・組織コンサルティングまで一貫したサービスを提供している。
スキルアカデミーにおいては、代表取締役CEOとしてAI人事4.0事業全体の推進をリードするほか、組織・人事・人材開発などの案件を数多くリードしている。
また組織診断・管理特性、職務等級制度・成果報酬制度などツールを開発。グローバル人事プロフェッショナル組織であるSHRM認定資格を取得。