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成果給(業績給)とは?導入のメリットやデメリットと導入しやすい企業の特徴を紹介

成果給(業績給)とは?導入のメリットやデメリットと導入しやすい企業の特徴を紹介
  1. 成果給(業績給)とは?
  2. 成果給(業績給)を導入するメリット4つ
  3. 成果給(業績給)を導入するデメリット4つ
  4. 成果給(業績給)が効果的なケース
  5. 成果給(業績給)の導入が難しいケース
  6. 成果給(業績給)の導入事例
  7. まとめ

年功序列型の賃金制度を導入しているものの、「社員が意欲的ではない」「社員のパフォーマンスが芳しくない」といった問題を抱えていらっしゃいませんか。また、現在の状況を打開するため、新しい賃金制度の導入を模索されているのではないでしょうか。

年功序列型では仕事の成果と社員の処遇が比例せず、仕事にあまり意欲的ではない社員であっても良い処遇を得られることから、制度自体に合理性を感じられないかもしれません。

本記事では、年功序列型にはない利点を持った成果給型の賃金制度に関して、メリットやデメリット、導入しやすい企業の特徴までご紹介します。本記事を読むことで、成果給の詳細が掴め、成果給導入後に成果を出しやすくなるでしょう。

成果給(業績給)とは?

成果給(成果型賃金制度、業績給)とは、各社員における仕事の実績や成果を昇進・昇給の判断材料に使う賃金制度です。「成果給」といっても、最終結果のみに焦点を当て評価の判断の材料にするわけではありません。一般的には成果にたどり着くまでのプロセスも評価対象とされます。

成果給の目的は、正当な評価システムの確立にあります。従来の日本企業の賃金制度では、年齢や勤続年数に応じて給与水準や役職を決定する年功序列型が定番でした。しかし、成果を上げなくても昇進・昇級ができる年功序列型のシステムでは、仕事に注力し成果を上げている若手社員に不満が募りやすいという課題がありました。

そこで、全社員の評価公平化のため導入が進んでいる制度に、年齢や勤続年数よりも仕事の実績や成果を重要な判断基準とする成果給制度があります。

なお、導入企業ごとに成果給に関して細やかな違いがあります。

成果給(業績給)を導入するメリット4つ

ここからは、成果給(業績給)を導入する4つのメリットについてご紹介していきましょう。

社員の成長により業績アップにつながる

成果給では、社員の成長が見込まれることから業績向上も期待されます。
成果や実績に限らず、その成果や実績を出すに至ったプロセスや能力も評価の対象となる成果給では、社員は良い結果を残すための自己研鑽に励むようになります。努力を通して社員のパフォーマンスが向上することで、各仕事の生産性も向上するでしょう。その結果、企業の業績向上も期待されます。

評価の基準が明確になり納得度が高まる

成果給では評価の基準が明確になることから、評価を受けた社員に評価を納得してもらいやすくなります。

個々の能力だけを評価基準とする能力主義による評価では、評価時期や評価の主観により寛大化傾向や対比誤差などの評価ミスが生じる可能性もあります。

しかし、業績や成果という定量的な評価を主軸に個人の賃金を決定する成果給では、評価理由や評価レベルに応じた報酬額が明確なため、評価に納得感が生まれやすいのです。

優秀な社員のエンゲージメントが上がる

成果給では、成果を基準に評価をするという賃金制度の性質から、優秀な社員ほど高評価になり高い賃金を獲得しやすくなります。

年功序列型の賃金制度では、優秀な社員ほど会社への貢献度と自身の評価にギャップを抱きやすく、パフォーマンス低下や離職につながりやすいデメリットがありました。

成果給では、ハイパフォーマンスに対する適切な評価・報酬を与えられます。その結果、評価への納得感が高まることで企業へのエンゲージメントが向上し、優秀な社員に長く在籍してもらえるようになるでしょう。

人件費を成果に基づいて適正に分配できる

会社への貢献度で各社員の賃金を決定する成果給では、人件費を適正に分配可能です。

年功序列型の場合、業績への貢献度が低い社員でも勤続年数が長ければ、高い給料を払う必要があります。対して、成果給では成果に応じて給与が増減するため、収入・地位と会社への貢献度が適切に連動し、適正な人件費配分ができるようになるのです。

成果給(業績給)を導入するデメリット4つ

ここからは、成果給(業績給)を導入する4つのデメリットについてもご紹介していきましょう。

仕事そのものへのモチベーションが低下する

成果給では、仕事へのエンゲージメントが低下する場合もあります。
個人の成果に応じて待遇が左右されるため、アンダーマイニング現象を引き起こす可能性があるためです。アンダーマイニング現象は、金銭などの報酬による外発的動機づけによってモチベーションが低減する心理現象です。

導入前は各業務に意欲的に取り組む動機が「満足感や達成感を得ること」であった社員が、導入後には各業務の遂行目的が「報酬を得ること」に切り替わる、といったことが成果給の導入により生じます。その結果、仕事自体に面白みを感じなくなってしまったり、報酬につながる業務にしかやる気が出なくなったりするリスクがあるでしょう。

アンダーマイニング現象を防ぐ方法としては、仕事のプロセスや成果を褒めるなどして金銭以外の報酬を与えることが効果的です。賞賛などの言語的報酬は、受け手のやる気を削がず、意欲的に仕事に着手してもらう効果があります。

成果に関連する業務以外に注力しなくなる

社員が成果と関連のある業務にしか注力しなくなるリスクがあることも、成果給のデメリットです。

成果給では成果がストレートに評価されることから、自分の評価に関連しない仕事を避けるようになったり、雑にこなしたりするようになる可能性があります。たとえば、クレーム対応など売上につながらない業務が軽視されてしまうかもしれません。クレーム対応の品質が下がると、顧客満足度の低下などにつながるリスクがあるでしょう。

こうした問題を防ぐ上では、クレーム対応など間接的に売上に影響を与える要素も評価項目に加えるのが有効です。

評価制度の設計が難しい

業種や職種によっては、業務の性質と成果給が適合せず、評価制度の設計が難航するリスクもあります。成果を数字や物で確認できる営業や開発などの仕事では、成果を評価の重要な判断材料とする成果給はうまくマッチします。

しかし、事務職のような成果が目に見えない仕事や、結果が出るまでに時間を要する大がかりなプロジェクトとは相性が良くありません。

中長期的な視点が欠けてしまう

目先の結果に執着してしまいやすい成果給では、中長期的な視点や戦略的展望が疎かになるリスクがあります。

成果給の評価基準は主に目標を達成できたかどうかがポイントとなるため、社員は短期的に結果を出せる仕事のみに注力するようになります。また、目標を設定する会社側も、期間内における社員の目標到達の可否に意識が集中しやすくなることから、成果が出るまでに時間のかかる事柄を考える機会の減少する可能性があるのです。

この問題の対処法としては、短期だけでなく中長期の目標も定めることが有効です。

成果給(業績給)が効果的なケース

ここからは、成果給(業績給)が効果的なケースについてご紹介していきましょう。

成果主義的な社員が多い企業

成果給がうまく機能するのは、成果主義的な社員が多い企業です。

フランスの研究機関で行われたある経済実験(Eriksson and Villeval, 2008)において、スキルが高く努力の負担が低い人ほど努力水準が高く成果給を好み、スキルが低く努力の負担が大きい人ほど努力をせず固定給を好むことが明らかになりました。

また、成果給を好む社員は、リスク許容度の高い人材であることも判明しています。労働者のリスク許容度と成果給の関連を調べた別の研究(Bellmore and Shearer,2010)では、日々の成果が極端に変動する事業において成果給を導入している企業(植樹業者)を調査しました。その結果、当該企業で働いている従業員のリスク許容度は、一般の人々の平均値よりも高い数値を示しました。つまり、成果給がリスク許容度の高い人材を惹きつけることがわかったのです。

したがって、能力が高く成果に目を向ける社員が多い企業ほど、成果給の導入により社員の努力水準が向上し、企業に良い影響をもたらすでしょう。そして、成果給を導入し時間が経つほど、成果主義的な社員の応募(母数)が増えていき、成果給がよりうまく機能するようになるといえます。

なお、先述したフランスの実験では、会社が一方的に固定給・成果給を決める場合よりも、従業員が自ら固定給か成果給のどちらかを選択できる場合の方が、労働者の選ぶ平均的な努力水準が高かったことも明らかになっています。そのため、社員に自ら固定給か成果給かを選択してもらうことで、会社が賃金制度を決定する場合よりも、社員全体の平均的な努力水準の向上が期待されます。

参考:Bellmore C. and B. Shearer (2010) Sorting, incentives and risk preferences: Evidence from a field experiment, Economic Letters 108: 345-348.

参考:Eriksson T. and M. C. Villeval (2008) Performance-pay, sorting and social motivation, Journal of Economic Behavior and Organization 68: 412-421.

マネジメント層が盤石な企業

マネジメント層が盤石な企業の場合も、成果給にフィットするでしょう。

成果給では、どのプロセスや成果を目標に置くかという目標設定の質が、成果給での評価の質に強く影響を与えます。各従業員の目標値が高すぎて非現実的な場合には達成できない社員が続出し、目標値が低すぎて誰でも目標到達が容易な場合には達成者が溢れかえります。そうした場合には、従業員間でのパフォーマンスの優劣が不透明になり、成果給がうまく機能しません。

したがって、マネジメント層が盤石で目標設計能力が高い企業ほど、成果給がうまく機能するようになるのです。

マネジメント層が現状盤石でない場合には、まずはマネジメント層に成果給を導入し、マネジメント能力と成果によってマネジメント層の評価を決定するのも有効です。

企業にとって、たとえ年齢と役職が高くても業績に貢献していない社員は、不合理にも人件費を圧迫します。とくに管理職は社員の中でも支払う報酬が高く、成果を出せない場合は企業にとって大きな損失となります。そのため、管理職の報酬額を、役職についていること自体を評価する「管理職手当」から、成果で判断する成果給に切り替えて判断することで、会社全体で成果給を導入せずとも人件費分配の適正化が可能になるのです。

成果給(業績給)の導入が難しいケース

成果給(業績給)が効果的な企業もある一方で、導入に適さない企業もあります。導入が適さないケースについて、ご紹介していきましょう。

業務の内容的に成果が測りにくい企業や職種

成果給は、業務の内容的に成果が測りにくい企業や職種には適しません。

営業や製造部門であれば、以下のような数値化しやすい指標を元に成果の基準を容易に設計可能です。

  • 月の売上
  • 月の新規顧客数
  • 月のアポイント件数
  • 週の見積作成検収
  • 年間の新製品開発件数 など

しかし、事務職や総務・管理部門のような仕事では、定量的な成果を測定しづらいものです。こうした仕事で成果を測定しようと、「納期〇日前に仕事を完了する」「書類作成スピードを20%上げる」「業務ミスを15%減らす」といった定量的な目標設定を立てたとしても、別の問題が生じるでしょう。納品スピードの向上や業務ミス減少による業績への影響はあまり大きくないことから、その成果を元に社員の昇級や昇進を決めるのは、現実的ではないという問題です。

このように、業務内容が成果給にフィットしない場合もあります。

成果主義的な社員が少ない企業

成果主義的な社員が少ない企業では、成果給の導入をしても良い変化が見られない可能性もあります。

社員は、成果給を好み良い変化が現れる社員だけではありません。成果給を好まずあまり変化もしない社員もいます。

前章で述べたとおり、成果給と努力水準を調べた経済実験において、努力の負担が少ない高スキルな人ほど成果給を好み高い努力水準を示す一方で、そうではない人は固定給を好み積極的な努力はしません。

したがって、自身のスキルに自信がなく成果を出すために多大な努力が必要だと思っている社員の多い企業において、成果給を導入しても好ましい変化は得られないでしょう。むしろ、制度自体に嫌悪感を抱かれることにより、社員のパフォーマンスや仕事満足度を低下させるリスクがあります。

リスク回避的な傾向の強い組織風土を持っている企業においては、やみくもに成果給を導入しない方が企業にとって良い結果をもたらす可能性があります。

成果給(業績給)の導入事例

ユニクロやジーユーなどのアパレル企業を傘下に持つ株式会社ファーストリテイリングは、成果給を導入している代表的な企業の一つです。ファーストリテイリングでは、「完全実力主義」という考えのもと、社員を公平に評価し、一人ひとりが成長機会を得られるようにすることを真剣に考え、年齢や性別に関係なく、実力ある社員が正しく評価され、いい仕事をした人がもっと大きな仕事を任されることを実現できる人事制度を確立しています。
同社では、自身の仕事の達成目標や実行プロセスを自分で立案し管理する、目標管理制度(MBO)を導入しています。数値やデータなどの客観的指標に基づき評価されるため、どんなプロセスで何をクリアすれば昇給・昇進につながるかが明確になっており、社員一人ひとりが主体的にスキルアップに取り組む企業風土が浸透しています。

まとめ

成果給の導入により、社員のパフォーマンスを向上させるケースもあれば、社員のパフォーマンスを低下させるケースもあります。また、社員の性質に拘わらず、仕事内容によっては成果給の導入が難しいケースもあります。

このような背景から、成果給はすべての企業に適した賃金制度とはいい切れませんが、自社の社員のタイプや仕事の特徴が成果給にフィットする場合、成果給の導入で大きな成果が得られるでしょう。

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記事監修

前田 正彦(まえだ まさひこ) 株式会社スキルアカデミー 代表取締役CEO
前田 正彦(まえだ まさひこ)
株式会社スキルアカデミー 代表取締役CEO

慶應義塾大学経済学部卒業。米国マサチューセッツ工科大学経営大学院(Sloan School of Management)修了。株式会社前田・アンド・アソシエイツ代表取締役(現職)。
株式会社NTTデータにて金融システムの開発に携わった後、 数々のコンサルティングファームにて、戦略立案から実行・定着までのプロジェクトを数多くリードしてきた。
その後人事・組織コンサルティングの必要性を痛感し、当該分野のプロジェクトを立ち上げ、戦略から人事・組織コンサルティングまで一貫したサービスを提供している。
スキルアカデミーにおいては、代表取締役CEOとしてAI人事4.0事業全体の推進をリードするほか、組織・人事・人材開発などの案件を数多くリードしている。
また組織診断・管理特性、職務等級制度・成果報酬制度などツールを開発。グローバル人事プロフェッショナル組織であるSHRM認定資格を取得。

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