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ジョブ型人事制度とは?採用の質が上がる実践的導入プロセスを詳しく解説
2024/5/22
- ジョブ型人事制度とは
- ジョブ型人事制度が注目される背景
- ジョブ型人事制度のメリット
- ジョブ型人事制度の注意点
- ジョブ型人事制度が向いている企業の特徴
- ジョブ型人事制度の導入プロセス
- ジョブ型人事制度における評価基準の設計方法
- ジョブ型人事制度の導入の注意点
- まとめ
「メンバーシップ型人事制度に課題を感じている」「マネジメント人材が不足しており困っている」といった課題を抱える企業も少なくないことでしょう。
その点「ジョブ型人事制度」は、メンバーシップ型人事制度で感じていた種々の課題の解決に役立ちます。ジョブ型人事制度は、業績に応じた公正な評価がおこなえるようになる、マネジメント層をはじめとした人材不足の解消に役立つ、適材適所の配置ができるといった特徴を持っており、企業においてあらゆる面で有益です。
本記事では、ジョブ型人事制度のメリットや、注意点を詳しく解説していきますので、ぜひ最後までお読みください。
ジョブ型人事制度とは
ジョブ型人事制度とは、職務(ジョブ)にマッチする人材を採用し、その職務の全う度合いに応じて評価・処遇をおこなう人事制度を指します。
仕事内容や責任範囲が明確に定義されており、その内容によって報酬が支払われます。報酬は責任の重さや仕事量によって変動することが特徴です。その性質から、メンバーシップ型人事制度のように業績に見合わない人件費を抑制できる点が、ジョブ型人事制度の利点といえるでしょう。
また、職務ベースで人員配置をするため適材適所の人員配置ができ、社員一人ひとりの強みを活かせることや、人員が不足している箇所にピンポイントでアサインができるようになることもメリットです。
メンバーシップ型人事制度との違い
「ジョブ型人事制度」に対する概念として「メンバーシップ型人事制度」がありますが、どのような違いがあるのでしょうか。
メンバーシップ型人事制度では「人」に合わせて仕事を割り当て、ジョブ型人事制度では「仕事」に合わせて人を配置することが基本です。メンバーシップ型では人を起点とするため、人柄や能力、業務適性といったポイントに焦点が当たります。それに対しジョブ型制度では、「仕事」に焦点を当て、その仕事に適した人材を採用するため、当該職務を果たせるかが重視されるポイントです。
そのほかにも、ジョブ型人事制度では中途人材による欠員補充や新規ポジションの人材確保がメインであるのに対し、メンバーシップ型人事制度では新卒一括採用の定期採用が中心であるといった違いもあります。
このように、双方には異なる特徴がありますが、社会情勢の変化を受けて近年ではジョブ型人事制度の導入が注目を集めています。
ジョブ型人事制度が注目される背景
ジョブ型人事制度が注目される背景としては、以下の3つが考えられます。
- 労働人口の減少
- キャリアの多様化による終身雇用制の衰退
- リモートワーク普及による人材獲得競争の激化
労働人口の減少や終身雇用制の衰退といった背景を受け、終身雇用を前提として数十年間にわたって雇用するメンバーシップ型人事制度が通用しなくなってきました。
働き手が減少する中や人材の流動性が高まる中では、社員を長く雇用しゼネラリストとして育成しながら幅広い業務を任せるよりも、特定の職務における専門性を追求できるジョブ型人事制度のほうが時勢に適しています。
ここからは、労働人口の減少やキャリアの多様化をテーマに、ジョブ型人事制度が注目される理由について見ていきましょう。
労働人口の減少
ジョブ型人事制度が注目される背景の1つには、労働人口の減少に伴う働き手の減少があります。
パーソル総合研究所の「労働市場の未来推計」によると、2030年には644万人の人手が不足する見通しです。2030年の推定労働需要が7073万人であるのに対し、労働供給量は6429万人となっており、その差分が644万人です。
人手不足となる産業は幅広く、以下のような多種多様な産業で、大規模な人手不足が生じることが予測されています。
- サービス業
- 医療・福祉業
- 卸売・小売業
- 製造業
- 通信・情報サービス業
- 教育業
- 運輸・郵便業 など
人手不足が起きると、優秀な人材、専門性の高い人材の母数も減ります。母数の減少に伴って、そうした人材を採用する難易度も上がっていくでしょう。
その点、特定の職務に絞って採用するジョブ型人事制度では、働き手が減る中でも自社のリソースが不足している箇所に人材を割り当てやすくなります。メンバーシップ型人事制度よりも人材不足をカバーしやすいことこそが、ジョブ型人事制度に注目が集まる背景です。
キャリアの多様化による終身雇用制の衰退
キャリアの多様化による終身雇用制の衰退も、ジョブ型人事制度の導入が進む背景の1つです。
フリーランスの増加や転職市場の活発化などによって、1つの企業に留まる社員数が年々減ってきました。総務省統計局がおこなった調査では、2023年の転職者数は296万人で、前年比で34万人増加していることがわかっています。
キャリアの多様化を受け、1つの企業に定年まで勤める終身雇用制は衰退しつつあり、その流れは今後も強まっていくでしょう。
メンバーシップ型人事制度では終身雇用制を前提としているため、定年前の離職が増えると機能しなくなるおそれがあります。対して、職務ベースでアサインするジョブ型人事制度であれば、社員が短期間で離職をしても、職務要件を満たす人材を採用することになるため即戦力としての活躍が期待でき、安定性高く事業を営んでいけます。
参考:転職者の状況 ―労働力調査(詳細集計)結果から|独立行政法人労働政策研究・研修機構
リモートワーク普及による人材獲得競争の激化
ジョブ型人事制度が注目される背景には、リモートワークの普及も関係しています。リモートワークの普及によって、勤務場所を選ばずに勤務できる人、組織に属さずに働く人が増加しました。そのことが人材の流動性を活発化させ、企業の人手不足にもつながったため、人材獲得競争が激しくなりつつあるのです。
人材獲得競争が激化する中では、従来のメンバーシップ型人事制度のように総合的な能力の高さで採用をおこなうやり方では、十分な数の人材を採用できなくなってきました。しかし、ジョブ型人事制度では、特定の職務に対してピンポイントで募集をかけるため、人材獲得競争が激化する中でも人材を確保しやすくなります。こうした事情により、ジョブ型人事制度の導入が進んでいます。
ジョブ型人事制度のメリット
ジョブ型人事制度を導入することで得られるメリットを、より詳しく見ていきましょう。
導入によって得られるメリットには、以下のようなものが挙げられます。
- 人員の最適化
- 評価基準の最適化
- 採用アンマッチの減少
- 賃金の適正化
それぞれどのような利点があるのか、詳しく解説していきます。
人員の最適化
ジョブ型人事制度を導入することで、人員の最適化が可能です。
職務単位での採用活動をおこなって職務要件に見合った人材を採用するため、人材要件と採用者のミスマッチが起こりにくくなります。会社が求めている経験・能力を持つ人材をピンポイントで配置できるようになることで、自社のリソースが不足している部分の人手不足も解消しやすくなるでしょう。
また、職務に基づいた採用や配置をおこなうことで、社員一人ひとりが強みとする能力や経験を最大限に活かすことができ、生産性の向上にも期待できます。
評価基準の最適化
ジョブ型人事制度を導入することで、企業の業績・経営目標と紐づく評価制度の設計がしやすくなる点もメリットです。ジョブ型人事制度では、職務における成果責任が果たせているかが評価軸となってくるので、業績に紐づく評価制度を導入しやすくなります。
成果責任とは、社員が担当する職務において果たすべき責任を指します。
ジョブ型人事制度では、課せられた成果責任を果たせているかで評価を下すため、しっかりと責任を果たせており業績への貢献度が高い社員の報酬を高くすることができ、逆に貢献度の低い社員の報酬は低くできます。また、成果に基づき評価するため、評価内容に主観や感情が反映されづらく、公正な評価を下しやすくもなる点もメリットといえるでしょう。
採用アンマッチの減少
ジョブ型人事制度では、どのポジションにどのような能力・スキル・専門性を持った人材をアサインする、といった採用要件が明確になります。自社が求める人材像が明らかになることで、採用後のアンマッチが起こりにくくなる効果があります。
メンバーシップ型人事制度のように幅広い職種を任せることを前提で採用する場合は、成長性や意欲といった抽象的な基準で採用をしてしまうことが少なくありません。その場合、採用時の評価・期待とは裏腹に、入社後には活躍してもらえないケースも多々あります。その点、特定の職務に対して要件が明確であるジョブ型人事制度の採用活動では、入社後に期待通りの活躍をしてもらいやすくなることも利点です。
賃金の適正化
ジョブ型人事制度の導入によって、賃金の適正化にも期待できます。
メンバーシップ型人事制度のように在籍年数などではなく、職務や業績に応じて報酬を支払うため、業績への貢献に見合った賃金を払えるようになるのです。業績に高く貢献している人には多くの賃金を払い、業績への貢献度が低い人には相応の賃金を払うこととなるため、人件費の適正化が実現できます。
メンバーシップ型人事制度の場合、年齢や役職が高く、報酬も高いものの、仕事のパフォーマンスが低く業績に貢献していない…といった問題も起こりがちです。仕事ベースでの評価をおこなうジョブ型人事制度では、業績への貢献度に伴った賃金を支払える点は大きなメリットといえるでしょう。
ジョブ型人事制度の注意点
複数のメリットが得られるジョブ型人事制度ですが、以下のような注意点もあります。
- 職務範囲が限定されている
- 自律的な能力向上の仕組みづくり
各注意点への理解を深めておくことで、導入後の思わぬ失敗を防ぎやすくなります。
職務範囲が限定されている
ジョブ型人事制度の注意点としては、職務範囲があいまいなメンバーシップ型人事制度と違い、人材の職務範囲が明確(限定的)となる点です。たとえば中途採用の場合、職務単位での採用となるため、ゼネラリストのように広範囲の業務を担ってもらうことはできません。特定の職務を任せることを前提とし採用するため、限られた領域・分野での職務範囲に限定されるのです。これは、ジョブ型人事制度が各職務において高い専門性を求めることから考えると当然のことです。
メンバーシップ型では、職務が限定されないゼネラリストを採用する場合が多く、入社後に幅広い業務を担ってもらえるため、幅広い業務で人員が不足している場合などは、当該箇所を広くカバーしてもらえるケースも多くあります。しかし、ジョブ型人事制度では、そうした対応が難しいケースが多いことを考慮しておきましょう。
自律的な能力向上の仕組みづくり
ジョブ型の場合、人ではなく職務を起点に考え、その職務を全うするためにはどのような能力が必要かを定義してきます。職務ごとに求める能力要件が異なるため、強化すべき能力は個人ごとに異なります。そのため、従来の一律の階層別研修が行いにくく、自分自身でスキルアップに取り組むことが中心となる傾向があります。ジョブ型では階層別ではなく、それぞれが求めるスキルレベルに応じた学習機会を設け、自律的に学習できる機会を設定することが必要です。
スキルアカデミーのではAI人事4.0自律学習を提供し、各社員がそれぞれのレベルに応じた適切な能力向上プログラムを自由に選択し、自律的に学習できる仕組みを提供しています。
ジョブ型人事制度が向いている企業の特徴
ジョブ型人事制度は、高い専門性を持ったプロフェッショナルな組織を構築する上で有効です。職務が明確になり、その遂行には高い専門性やスキルが求められるため、社員は自然と成長志向が高くなり、自己研鑽に意欲的になります。
人材獲得競争が激化する中で自社が生き残っていくためには、高い専門性やスキルを持ったプロフェッショナル集団を構築し、社員一人ひとりの生産性を高めることが重要です。プロフェッショナルを育てて利益を生み出していきたい組織像を描いている場合や、これから描いていきたい場合に、ジョブ型人事制度はとくに活躍するでしょう。
ジョブ型人事制度の導入プロセス
ジョブ型人事制度の導入は、以下の4ステップで進めていきましょう。
- 適応範囲の決定
- 職務定義の設計
- 職務要件の設計
- 職務に対する報酬の決定
各工程の詳細について解説します。
1.適応範囲の決定
ジョブ型人事制度を導入する際には、まずは小さな部分から始めることが重要です。最初から全社的に展開するのではなく、特定の職種や役職から始め、様子を見ましょう。
いきなり全社的に取り入れてしまうと、組織が混乱してしまい、うまく運用できない可能性があります。
ジョブ型人事制度では、社員それぞれの職務を明確にし、それを専門領域として担当してもらいます。それまで社員一人ひとりが幅広い業務を担っていた場合は、誰がなぜその職務を担うようになるのかを明確にしたり、理解してもらえるよう説明や調整をしたりしなければいけません。
全社的に取り入れるにはある種のリスクが生じるため、まずは責任範囲が明確なポスト(管理職)から徐々に展開していくことがおすすめです。
2.職務定義の設計
ジョブ型人事制度の適応範囲を決めたあとには、各職務の要件定義をおこないましょう。
職務定義とは、仕事内容や責任範囲、役割といった職務を定めたもので、職務定義をすることで自社のどの部分にどういった人材を採用する必要があるのかを明らかにできます。
職務を定義する際には、主に以下2つの方法があります。
- 社員に記述させる
- 面接を行ってヒアリングする
社員に記述させる方法では、現在業務を担っている社員自身に担当職務を書き出してもらいます。
面接でヒアリングする方法では、人事担当者や上司が、対象職務の社員に日々の業務内容の聴きとりをおこない、職務要件を定義します。時間はかかるものの、社員本人に記述させる場合よりも内容の正確性が上がることがメリットです。
時間に余裕がある場合には、面接でヒアリングをする方法がおすすめです。
3.職務要件の設計
ジョブ型人事制度を採用する当該職務の職務定義が完成したら、職務要件を設計し、職務に求められる事柄を具体化しましょう。職務要件とは知識、スキル、コンピテンシーなどの能力要件をまとめたものです。
職務要件を設計し、当該職務で求められる事柄を明らかにすることで、どのような人材を採用すればよいのかがより具体的になります。
要件に誤りがあったり曖昧な部分があったりすると、当該職務にそぐわない人材を採用してしまうリスクが高まります。そのため、職務定義から職務要件までを丁寧におこなうことが大切です。
4.職務に対する報酬の決定
職務要件の設計までを終えたら、市場価値を基準に報酬を決定しましょう。
職務の価値や責任範囲の広さ、会社の中での当該職務の重要度が高いほど、報酬が高くなるように設計します。
市場価値を基準に報酬を考えることで、市場の水準と自社が提示する報酬額にミスマッチが生じづらくなるでしょう。ジョブ型人事制度では、専門性や経験のある人材を採用することとなるため、メンバーシップ型人事制度で未経験者を採用する場合よりも、報酬額は高くなります。市場から乖離した低い金額を設定すると、条件にマッチする応募者がまったく集まらないリスクがあるため、市場リサーチをしっかりとおこなうようにしましょう。
ジョブ型人事制度における評価基準の設計方法
「ジョブ型人事制度」とは、端的に言うと「仕事(ジョブ)に対して報酬を支払う」人事システムです。本項では、ジョブ型人事制度における評価基準をどのように設計するのが良いかを説明します。
人事評価基準を決める
まずは、何を対象に人事評価を行うのかという、人事評価基準を決めます。ジョブ型人事制度においては、社員一人ひとりが担う自身のジョブ(職務)における成果を評価することが基本です。よって、ジョブ型人事制度においては、勤続年数や年齢といった個人の属性は評価対象外となります。
以下の図は、会社業績が生み出されるまでの流れをスキルアカデミーが独自に整理したものです。成果の源泉となる人が、その人の持つ能力を発揮しながら仕事をして、そのアウトプットとして「成果」創出される。一人ひとりのアウトプットを束にしていくと、課やチームの成果、部門の成果というように積みあがり、最終的に会社業績につながっていくのです。
会社業績に最も近い「成果」を評価することによって、業績は向上しやすくなります。成果と業績の結びつきが強いのは広く知られていることですが、盲点になりがちなのが「能力」です。成果を出すためには「能力」が必要不可欠であるため、能力に焦点を当てて管理し、伸ばしていくことも重要といえるでしょう。よってスキルアカデミーでは、以下の2つを主な評価基準としています。
- 成果評価
- 能力評価
これらの評価結果を報酬や登用にどのように用いるのかは、それぞれの企業の考え方によって独自に設定していきます。例えば、管理職では成果評価100%、一般社員は成果評価と能力評価を50%ずつとするなど、活用のウェイトを使い分けたり、賞与においては成果評価を用い、登用や昇格においては成果評価と能力評価の両方を用いるなどの工夫もすると良いでしょう。
成果評価基準を設計する
成果評価とは、一定期間内における業績・成果を評価する評価方法で、業績評価とも呼ばれます。MBOなどの目標管理手法を用いることが一般的です。成果評価においては、期初に個人目標を設定し、期末にその達成度を評価します。
公平かつ納得感の得られる成果評価を行うためには、期初に適切に目標設定することが不可欠です。以下のSMARTを沿って目標が設定できているかをチェックすると良いでしょう。
Specific (具体性) |
指標、水準が具体的であるか。 達成すべき内容や創出すべき成果が何かを具体的に示す。 |
---|---|
Measurable (測定性) |
測定可能な目標になっているか。 達成度を測定できなければ適切な評価ができません。数値で表せる定量的な目標で表すことで達成度を明確に評価できる。定量的な水準を示すことが難しい場合は、そのように測定するのかを言語化する必要がある。 |
Achievable (達成可能性) |
目標が現実的に達成可能かを表す。 達成が極めて困難な目標は、挫折しやすく逆にモチベーションを下げてしまいやすい。場合によっては不正が起こるリスクもある。 |
Relevant (関連性) |
目標に関連性、妥当性があるのか。 組織目標と連動しているか、自身の職務に基づく目標になっているのかを見極める必要がある。 |
Timing (時間制約性) |
適切な期日設定が行われているか。 達成期日を設定することで、目標に向かって緊張感をもって取り組める。 |
能力評価基準を設計する
能力評価とは、職務遂行のために必要な知識や技能を評価するものです。
ジョブ型人事制度導入時に行われる職務要件に沿って、求められる能力レベルの充足度を評価します。
スキルアカデミーでは、以下の能力の氷山モデルにある知識、スキル、コンピテンシーの3つを推奨しています。
社員一人ひとりの職務に応じて、その職務を全うするために必要となる能力を定め、その能力がどの程度あるのかを評価します。知識、スキルについては、自己評価・上司評価を行いますが、コンピテンシーに対しては日常的に関わりのある同僚や部下からも評価を受ける360度評価形式とすることが一般的です。
ジョブ型人事制度の導入の注意点
ジョブ型人事制度の導入に際しては、以下の点には注意しましょう。
- 降職があることを前提に運用する必要がある
- 職務定義書に記載のない仕事はやらなくなり、チームワークが阻害されるという誤解
メンバーシップ型人事制度と同じ認識で運用してしまうと、思わぬトラブルが発生する可能性があります。
降職があることを前提に運用する必要がある
職務をベースに評価するジョブ型人事制度では、降職が起きることも考えて運用することが大切です。
ジョブ型制度の性質上、「仕事」を起点に人材を割り当てることとなりますが、与えられた職務を果たせていない場合はワンランク下の職務を与えざるを得ません。そのため、降職も起こり得ることを前提に運用を考えていく必要があるのです。
社員に対しても、その旨を事前にしっかりと説明し、納得を得た上で運用していかなければ、トラブルにもなりかねませんので注意が必要です。
ジョブ型人事制度の運用においては、社員への丁寧な説明とフォローアップが欠かせません。
職務定義書に記載のない仕事はやらなくなり、チームワークが阻害されるという誤解
ジョブ型人事制度に関するよくある誤解として「職務の定義書を記載することで、任せられる業務が限定的になり、柔軟に協力しあって仕事を進めることができなくなるため、チームワークを阻害する」というものがあります。
確かにジョブ型では職務の定義書において仕事全体を捉えたうえで、何に対して責任持つのかについて明確に記載することになります。これによって、それ以外の業務はやらなくなると考えがちです。しかし現実的には、能力評価の「コンピテンシー」の一つに「チームワーク」という項目があり、これを評価項目に入れ込むことで、こうした問題を防ぐことが可能です。
また多くの場合には管理職以上でこのジョブ型を導入するケースが多いのですが、その場合職務定義に記載されていない業務であっても必要に応じて協力することは管理職としての大前提であるとも言えます。もし管理職で「この仕事は自分の職務定義に書かれていないから協力しない」という人がいたら、これは管理職失格といってもよいでしょう。
スキルアカデミーでは、これまで多くの企業にこのジョブ型人事制度を導入してきていますが、上記のような問題が発生したケースは1件もありません。
いずれにしてもこうした問題を未然に防ぐためにも職務要件や能力評価でしっかりとチームワークに該当する内容を明記、もしくは評価する仕組みを構築しておくことが重要です。
まとめ
メンバーシップ型人事制度では、人柄や勤続年数など業績と結びつきの弱い要素で社員を評価してしまうため、公正な評価が難しく、人件費の不適正が起こりやすくなります。
その点、ジョブ型人事制度を導入して職務単位で採用をおこなえば、成果責任や成果をベースに評価を下せるようになります。その結果、人件費を業績に連動させられるようになり、健全な経営が実現可能です。また、採用ハードルの低下や人員の最適化によって人手不足の解消にもつながり、組織の生産性向上にも期待できるでしょう。
メンバーシップ型人事制度に課題を感じている場合は、本記事を参考に、ジョブ型人事制度の導入を検討してみてください。
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記事監修
- 前田 正彦(まえだ まさひこ)
- 株式会社スキルアカデミー 代表取締役CEO
慶應義塾大学経済学部卒業。米国マサチューセッツ工科大学経営大学院(Sloan School of Management)修了。株式会社前田・アンド・アソシエイツ代表取締役(現職)。
株式会社NTTデータにて金融システムの開発に携わった後、 数々のコンサルティングファームにて、戦略立案から実行・定着までのプロジェクトを数多くリードしてきた。
その後人事・組織コンサルティングの必要性を痛感し、当該分野のプロジェクトを立ち上げ、戦略から人事・組織コンサルティングまで一貫したサービスを提供している。
スキルアカデミーにおいては、代表取締役CEOとしてAI人事4.0事業全体の推進をリードするほか、組織・人事・人材開発などの案件を数多くリードしている。
また組織診断・管理特性、職務等級制度・成果報酬制度などツールを開発。グローバル人事プロフェッショナル組織であるSHRM認定資格を取得。