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早期離職の実態とは?その理由から防止策までを徹底解説

早期離職の実態とは?その理由から防止策までを徹底解説
  1. 早期離職の実態
  2. 早期離職が企業にもたらす悪影響
  3. データで見る早期離職の理由
  4. 早期離職が多い企業の特徴
  5. 早期離職を防止するために有効な5つの対策
  6. 早期離職を低下させた成功事例
  7. まとめ

「とくに若手社員の定着率が低い」「良い人材が見つかってもすぐに離職してしまう」といった問題を抱える企業も少なくないでしょう。

事業を拡大し業績を伸ばしていくためには優秀な社員に長く活躍してもらう必要がありますが、理想とは反対に短期間で辞めてしまうことも多々あるのが現実です。

本記事では、早期離職の実態や生じる理由、解決策、大きく離職率を減少させた事例について解説していきます。社員の離職率の高さに悩む方は、ぜひ参考にしてください。

早期離職の実態

早期離職とは、その名のとおり、企業で就業し始めてから数年以内に離職してしまうことです。一般的には、3年以内の離職を「早期離職」と呼びます。

詳細は後述しますが、早期離職にはさまざまなリスクが伴うため、若手社員の早期離職に頭を悩ませる企業は少なくないでしょう。
中小企業庁の調査によると、中小企業において中途採用者が採用の3年後に離職する割合は約3割とされており、中小企業にお入れは深刻な課題の一つです。

出典:中小企業・小規模事業者のさらなる飛躍|中小企業庁

またビズリーチの独自調査では、35歳〜49歳のミドル層で転職を経験した人の内、早期離職者は約4割にものぼるというアンケート結果が出ました。その中でも35歳〜39歳の早期離職率は、約半数にものぼります。

これは新卒採用者の割合と比較すれば若干低いものの、約3分の1の中途社員が3年以内に離職してしまっていることを考えると、中小企業における人材の確保・長期的な育成がいかに難しいかがわかるでしょう。

参考:新規学卒就職者の離職状況を公表します|厚生労働省
参考:働き盛りのミドル層がすぐに会社を辞める理由とは|ビズリーチ

早期離職が企業にもたらす悪影響

早期離職は、企業に以下のような悪影響をもたらします。

  • 採用コスト・育成コストが無駄になってしまう
  • 企業イメージが悪化する可能性がある
  • 既存社員のモチベーションまで低下してしまう
  • 企業の成長が鈍化してしまう可能性がある

離職問題を放置したことにより「多くのコストを投じたものの、まったく回収できなかった」「イメージ低下により新規応募者が減った」といった課題に悩む企業も少なくありません。問題についての理解を深め、適切な対策を講じていくことが大切です。

採用コスト・育成コストが無駄になってしまう

早期離職は、採用コスト・育成コストの損失につながってしまいます。

社員が早期離職してしまうと、その社員に費やしてきた採用コストや育成コストはすべて無駄になります。たとえば中途採用にかかるコストとしては、以下のようなものが挙げられるでしょう。

  • 人材紹介会社の紹介手数料
  • 求人広告の掲載費
  • 説明会の開催費
  • 採用面接・試験にかかる人件費やシステム料
  • 諸々の交通費
  • 連絡のやり取りに使用する通信費 など

育成に関しても、研修費や人件費などが相応にかかってきます。また、費用のみに留まらず、そこに費やしてきた時間やマンパワーも損失の対象です。早期離職者の穴を埋めようと新たな人材を採用する際にも、同様のコストがかかってしまいます。

企業イメージが悪化する可能性がある

早期離職者が多かったり、離職者が口コミサイトに投稿したりすることで、企業イメージそのものが悪化してしまうことも考えられます。

昨今は企業の口コミサイトや転職の口コミサイトが非常に多く、中には企業の離職率を公開している求人サイトもあります。早期離職者の割合が高ければ高いほど、「あの企業は労働環境に問題があるのでは」といった批判的な目で見られる機会が増え、企業イメージも悪くなってしまうのです。

早期離職者が、これまでに蓄積された不満を、複数の口コミサイトに書き込むことも考えられるでしょう。それだけでなく、既存社員から「早期離職する人が多い」「労働環境が悪く現場が疲弊している」などの書き込みがあれば、企業のイメージは低下してしまいます。

人材紹介会社からも、「あの企業に紹介した人材は早期離職してしまう人が多い」という噂が立つことで冷遇されるようになり、今後の採用に悪影響を与えることもあるかもしれません。

既存社員のモチベーションまで低下してしまう

早期離職者が出ることで、既存社員のモチベーションにまで影響を及ぼす可能性があります。

早期離職者が出た場合、その離職者がこれまで担っていた業務は、ほかの社員が引き継がなければなりません。既存社員の業務負担が一気に増えてしまうことで、モチベーションが低下してしまうことが考えられます。

また離職者の育成を担当した人や共に業務にあたっていた人からすれば、「あれほど時間をかけて育てたのに」「一緒に頑張っていたのに何が不満だったのだろう?」など、無力感や失望感につながることもあるでしょう。

早期離職者が多い職場の場合、職場環境や人間関係が良くないことも考えられます。既存社員が会社への不満・不安を抱えていた場合、「あの人は思い切って辞めた。自分はこのままで良いのだろうか」「あの人が離職したということは、やはりあの懸念は本当だったのか?」といった疑念を抱くかもしれません。それによりモチベーションが低下してしまい、最悪の場合には離職の連鎖が続いてしまう可能性も考えられます。

企業の成長が鈍化してしまう可能性がある

早期離職者が出ることで、組織内のバランスが崩れたり、新たな採用や育成に手間やコストがかかったりと、企業の成長を妨げてしまう可能性もあります。

企業において早期離職者が出ると、組織内のバランスが変わってしまうことがあります。離職者が出ることで、その人がそれまで担っていた業務が一旦ストップしてしまったり、引継ぎに時間がとられてしまったりすることがあるのです。

また、早期離職者の空いた穴を埋めるために新たな採用・育成に手間やコストがかかる、既存社員のモチベーションが低下する、といった問題も発生します。早期離職が出たことで既存社員に業務の負担が増えることで精神的な余裕がなくなり、社内の人間関係が悪くなることもあるでしょう。

早期離職によって担当者が頻繁に代わってしまうと、顧客先との信頼関係を築けないどころか不信感を持たれてしまうかもしれません。

こうした種々の理由から競争力が下がり、企業の成長が鈍化してしまう可能性が高まります。

データで見る早期離職の理由

エン転職が約1万人を対象としておこなった調査では、早期離職の理由として以下の事項が挙げられました。

出典:1万人が回答!「退職のきっかけ」実態調査|エン・ジャパン

退職を考えたきっかけの上位は、「やりがい・達成感を感じない」「給与が低かった」が41%(同率1位)、「企業の将来性に疑問を感じた」が36%となっています。

そのほか、「人間関係が悪かった」「残業・休日出勤など拘束時間が長かった」「評価・人事制度に不満があった」「自分の成長が止まった・成長感がない」なども、比較的多いことが窺えます。年代別に見てみると、20代30代では「給与が低かった」、40代では「やりがい・達成感を感じない」が最も多いパーセンテージとなっているようです。

また30代では、20代40代よりも「企業の将来性に疑問を感じた」の割合が高くなっていることも読み取れます。40代では、20代30代よりも「評価・人事制度に不満があった」の割合が高くなっていました。

このように、年代ごとに退職に至りやすい理由は変わるようですが、全年代を通して「会社への不満を抱いて辞めた人が多い」という点は共通しています。そのため、早期離職を防止する方法としては、待遇や労働環境、制度を改善していくことが重要であるといえるでしょう。

早期離職が多い企業の特徴

すべての企業で早期離職が起こっているわけではありません。以下の特徴を持つ企業において特に離職者が多いことが、前述の調査からわかります。

  • 仕事内容
  • 評価・待遇
  • 人間関係

これらの要素において、具体的にどのようなことが問題となりやすいのか、解説していきます。

特徴①|仕事内容

エン転職のアンケート結果からもわかるように、仕事でのやりがいや達成感を感じなければ、離職へとつながってしまいます。仕事内容や裁量に関する以下のような不満は、離職理由に十分になり得るでしょう。

  • 雑用のような仕事ばかり
  • いつまで経っても新しい業務や責任感のある業務を任せてもらえない
  • 自分のスキルや経験を活かせない
  • 自分のおこなっている業務がどのような業績につながるか分からない
  • 今後の成長が見込めない
  • この企業にいても未来が想像できない
  • 希望の部署に配属されない

また、社員の私生活と関係のある事柄についても注意が必要です。「業務量が多すぎて休息をしっかりと取れない」「プライベートの時間を確保できない」などの問題も、離職につながる可能性があります。仕事での拘束時間が長くなり、ワークライフバランスに偏りが出ると、心身共に悪影響が出るためです。

入社前にイメージしていた業務内容と実際の業務内容とが異なることによるリアリティショックも、早期離職の理由の1つです。これは採用のミスマッチとも大きな関わりがあります。

特徴②|評価・待遇

エン転職の調査においても、「給与への不満」は上位に位置する項目です。「おこなっている業務と給与が比例していない」「同業他社と比較し給与水準が低い」などは、早期離職につながりやすいといえます。

自身の仕事が正当に評価されていない、成果をあげても評価してもらえないなど人事評価制度に納得感を持っていない場合も、早期離職につながりやすいでしょう。

しっかりとした評価制度が築かれていなければ、企業に長く勤めることによるメリットや、今後のキャリアパスを把握しづらくなります。また、成果に見合った評価・待遇を得られなければ、自身のスキルや経験、知識をしっかりと評価してくれる他社に転職しようと思うのはごく自然なことです。

こうした待遇や評価面の不整備は社員に不満が募りやすく、早期離職につながりやすい傾向にあります。

特徴③|人間関係

職場の人間関係に悩み・不満を抱えている場合も、早期離職につながりやすくなってしまいます。

前述のエン転職での調査結果においても、退職のきっかけとして「人間関係が悪かった」という理由が一定数挙がっていました。また、厚生労働省が平成30年におこなった調査では、勤続期間1年未満の若年労働者が離職に至った理由として最も多かったのは、「人間関係がよくなかった」でした。

人間関係の問題としては、次のようなものが挙げられます。

  • 職場でコミュニケーションがスムーズにいかない
  • パワハラやセクハラといった問題がある
  • 上司から適切な指導をしてもらえない
  • 職場での居心地が悪い
  • 相談できる人がいない

給与や待遇以外のこうした問題もエンゲージメントの低下につながりやすく、離職に至ってしまうケースが少なくありません。

参考:平成30年若年者雇用実態調査の概況|厚生労働省

早期離職を防止するために有効な5つの対策

早期離職を防止するためには、以下の対策を講じることが有効です。

  • 企業方針・ビジョンを明確化し透明性を高める
  • 採用時のミスマッチを減らす
  • 働き方の多様性を認める
  • キャリアパスを明確化する
  • 成果と評価が結びつく人事評価制度を構築する
  • 常に丁寧なフィードバックとフォローを心掛ける

企業ビジョンの浸透や自社に適した人材の採用など多角的にアプローチをしていくことで、離職率の低下が見込めます。

企業方針・ビジョンを明確化し透明性を高める

早期離職への対策としては、企業方針やビジョンを従業員に対して明らかにし、浸透させることが大切です。そうすることで、従業員が共通の目標に向かって足並みを揃えられるようになります。

企業方針やビジョンが明らかになっていなければ、社員が同じ方向を向いて生産性を高めながら仕事に取り組んでいくことは難しくなるでしょう。

目標達成に向けて仕事へのモチベーションを高めるためには、社員一人ひとりが以下のような事柄を理解できていることが重要です。

  • 自身がどのような目標に向かって頑張れば良いのか
  • 自身の仕事が企業のどのような利益につながっているのか

仕事への理解を深めてもらうと共に経営ビジョンの透明性を高めていくことで、企業への信頼感向上が期待できます。今後のビジョンが見えていれば、勤続することへの安心感も高まります。

採用時のミスマッチを減らす

採用戦略からしっかりと計画し、採用時のミスマッチを減らすことで、早期離職の防止に期待できるでしょう。

採用時のミスマッチは、理想と現実のギャップを生んでしまいます。求人サイトや広告、企業説明会などにおいて、企業の良い面のみをアピールしていると、社員は入社後にイメージとのギャップに不満を抱きやすくなるでしょう。また、企業側としても責任の伴う仕事をなかなか任せられないなど、早期離職につながるような要因をつくってしまいます。

こうした問題を防ぐには、正しい情報発信をおこなうことが大切です。また、自社がどのような人物を欲しているのかをはっきりと明確化した上で、採用計画の立案から採用活動、採用後のフォローに至るまで丁寧におこなうことも有効でしょう。
会社見学会や、既存社員との雑談・面談の場を設けるのも効果的です。

働き方の多様性を認める

副業の解禁やリモートワーク、フレックスタイムの導入といった働き方の多様性を認めることで、働きやすさが担保され、早期離職の防止につながります。

コロナ禍を経て、働き方の多様性に注目が集まっています。エン転職が約1万人を対象におこなった調査でも、企業選びの軸として「希望の働き方(テレワーク・副業など)ができるか」を重視している人が多いとの結果が出ていました。

テレワークの体制が整っているか、副業はできるのか、フレックスタイムなど柔軟な働き方ができるかは、早期離職を防ぐ上で重要です。

働き方の多様性を認めることで働きやすさにつながり、ひいては早期離職の防止につながります。

出典:1万人アンケート(2023年2月)「新型コロナ後の企業選びの軸」調査|『エン転職』

キャリアパスを明確化する

キャリアパスを明確にすることで、自社で働き続けるとどういう展望が見込めるのかがわかり、早期離職の防止につながります。

キャリアパスとは、組織においてキャリアを積み重ねていくのに必要な過程・道筋のことです。先述のエン転職の調査においても、「自分の成長が止まった・成長感がない」という理由が退職理由として挙げられていました。

自社におけるキャリアパスを明確にすることで、「今の会社で働き続けることで自分も成長できる」「スキルや経験を磨ける」「やりがいのある職務に就ける」という気持ちが社員に生まれ、中長期的なキャリアを描きやすくなります。自社で長く働くことのメリットを実感し将来への展望が描ければ、仕事に対するエンゲージメントの向上も期待できるでしょう。

キャリアパスを明確化するためには、人材育成の体制をきちんと整えることが必要不可欠です。自社で自身の理想のキャリアを望めるのなら、離職を思い留まる可能性が高まります。

成果と評価が結びつく人事評価制度を構築する

自身の成果がしっかりと評価される仕組みを作ることも、早期離職の防止につながるでしょう。

どれほど成果をあげても、それがしっかりと評価されなければ、仕事に対するモチベーションは低下してしまいます。「どのような成果を上げればどう評価されるのか」が明確化・掲示されていなければ、どのように仕事に取り組み、どういう成果を出せば良いのかも分かりません。その結果、社員のやる気はどんどん低下していってしまうのです。

一方、成果が正当に評価されれば、仕事へのエンゲージメントも上がり、企業に対する信頼感も高まります。

社員の評価に関する不満を払拭するためには、成果と評価、更には報酬などの待遇もすべて紐づいているような人事評価制度の構築が欠かせません。実績が目に見えて報われるような仕組みをつくり、公平性や納得感の高い人事評価制度を築くことで、早期離職を減らしていけるでしょう。

常に丁寧なフィードバックとフォローを心掛ける

常日頃から業務や評価に対するフィードバック、フォローをしっかりとすることで、会社や上司への信頼感が生まれ、早期離職を防げるようになります。

業務や評価に対するフィードバック・フォローは、早期離職を防ぐために欠かせません。ただ業務を指示して社員の力量に任せるだけでは、社員の企業に対する不信感や不安が募りやすくなってしまいます。

こうした問題の解決には、都度丁寧なフィードバックとフォローをおこなうことが大切です。
人事評価についても、ただ評価するだけでは不十分であり、評価に対するフィードバック・フォローもしっかりとおこなうことが重要です。

フィードバックでは、以下のような観点をしっかりと伝えるようにしましょう。

  • どのような点が良く、高評価につながったのか
  • どのような点をどう改善したり伸ばしていけば、より評価されるのか など

また、上司のマネジメントスキルの向上や、社内コミュニケーションを活発化させることも大切です。

早期離職を低下させた成功事例

最後に、早期離職の低下を実現した事例を3社紹介します。

どの企業も、多角的なアプローチを通じて自社の課題の解決を図っています。ぜひ自社で対策に取り組む際の参考にしてみてください。

サイボウズ株式会社

サイボウズ株式会社では、2005年頃の離職率は28%と高く、人材確保・定着に課題を抱えていました。そこで、2007年より働き方の選択肢を増やすなど、風土改革に着手します。

ワークライフバランスに配慮した制度の構築や、社内コミュニケーションの活性化、働き方の多様化が、具体的な取り組みの内容です。働き方の多様化を推進するにあたって「ウルトラワーク制度」を設け、「短時間勤務」「週3勤務」「副業解禁」「リモートワーク」などの制度を導入しました。また、子連れでの出勤を認めたり、育児休暇を最長6年間に延ばしたりするなど、出産を経ても働きやすい環境づくりもおこなったようです。

2018年からは「働き方宣言制度」の運用を開始しました。これは「100人いたら100通りの働き方」という考えを大切にすることを宣言したものであり、運用開始以来、多様な働き方を追求し続けています。

こうした各種取り組みの結果、2005年に28%という数字をたたき出した離職率は、現在では3〜5%にまで減っているそうです。

参考:多様な働き方へのチャレンジ|サイボウズ株式会社
参考:離職率28%から4%へ サイボウズはいかにして“共創する組織”をつくり上げたのか|Unipos
参考:離職率28%、採用難、売上低迷。ボロボロから挑んだサイボウズのハイブリッドワーク10年史|THE HYBRID WORK

カネテツデリカフーズ株式会社

カネテツデリカフーズ株式会社では、以前まで入社3年以内の離職率が50%前後と、非常に高い割合を占めていました。同社は、それまでの「仕事は先輩を見て覚える」という風土に離職の原因があると考え、その風土を改めるため、2017年に「マンツーマン制度」を導入します。

「マンツーマン制度」は、現場の社員が新入社員に対し、半年間にわたってマンツーマンで徹底的に教育をおこなう制度です。制度の目的としては、若手社員を指導する能力を養成すること、新入社員の早期戦力化を狙うこと、双方のコミュニケーションを活性化することなどが挙げられます。

マンツーマン制度では、育成にあたる指導員は毎月の指導計画書を新入社員と共に作成し、月末にはしっかりと振り返りをおこないます。その際、新入社員は、指導員と所属長からフィードバックをもらいます。
こうした取り組みの結果、新入社員、若手指導社員の双方に育成効果が見られました。

また、同社では以下のような施策も講じてきました。

  • 指導報告書をもとにフォローアップ研修を含めた教育研修を毎月実施
  • 定期的に人事面談を実施
  • 月1回の労働協議会の開催

労働協議会では、企業方針や人事方針などについて議論し、職場環境・労働条件の改善に取り組んでいます。

こうした取り組みの成果として、今では離職率は数%にまで落ち着いているようです。

株式会社ビースタイル

株式会社ビースタイルでは、2008年のリーマンショックの影響もあり、2012年には離職率が27%にまで達しました。

経営ビジョンの浸透や社員への伝わり方に課題を感じていたビースタイルでは、さまざまな制度・施策を導入することで、離職率の低下に取り組んでいます。

まず「ビースタイルバリューズ」という行動指針10か条を制定し、会社の理念や経営方針を全社員に伝えました。その後、企業ビジョンの浸透・強化を目指し、「バリューズアワード」という仕組みも構築しました。

バリューズアワードでは、ビースタイルバリューズに基づいた行動を実践している社員にお互い投票し合い、部署の異なるメンバーで構成されたチームごとの投票数を競い合います。投票数の多い上位チームにはインセンティブやチームでのランチがプレゼントされることもあり、社員が意欲的に参加しているようです。それにより、コミュニケーションの活性化にもつながっています。

また同社は、社長自らが社員全員分の日報に目を通す「全社日報」をおこない、社長・上司が助言やコメントを返信するなど、風通しを良くする工夫も施しています。

こうした施策の結果、社内のチームワークが強化され、離職率は3年間で8%にまで下がりました。

参考:離職率改善のために実施した(株)ビースタイルのコミュニケーション施策とは?|ビルディンググループ

まとめ

早期離職は多くの企業で生じている課題ですが、すべての企業で起きているわけではありません。早期離職が起こりやすい企業には、評価・待遇の制度が十分に整備されていない、社員が意欲的に仕事に取り組めるような環境が構築できてない、などの特徴があります。

こうした問題を放置していると、多くの時間や費用のコストをかけたものの短期間で離職されてしまったり、口コミサイトにネガティブな投稿を書き込まれたりするリスクが生じます。その結果、新規採用の応募者減少や、既存社員のモチベーション低下にもつながり、企業の成長も鈍化してしまうでしょう。

早期離職を防ぐためには、人事評価制度の整備やキャリアのサポートを通じて、社員が働きやすい環境を構築することが大切です。本記事でご紹介した各社の取り組み事例も参考に、問題の防止に多角的に取り組むことで、離職率を大きく軽減できるでしょう。

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記事監修

前田 正彦(まえだ まさひこ) 株式会社スキルアカデミー 代表取締役CEO
前田 正彦(まえだ まさひこ)
株式会社スキルアカデミー 代表取締役CEO

慶應義塾大学経済学部卒業。米国マサチューセッツ工科大学経営大学院(Sloan School of Management)修了。株式会社前田・アンド・アソシエイツ代表取締役(現職)。
株式会社NTTデータにて金融システムの開発に携わった後、 数々のコンサルティングファームにて、戦略立案から実行・定着までのプロジェクトを数多くリードしてきた。
その後人事・組織コンサルティングの必要性を痛感し、当該分野のプロジェクトを立ち上げ、戦略から人事・組織コンサルティングまで一貫したサービスを提供している。
スキルアカデミーにおいては、代表取締役CEOとしてAI人事4.0事業全体の推進をリードするほか、組織・人事・人材開発などの案件を数多くリードしている。
また組織診断・管理特性、職務等級制度・成果報酬制度などツールを開発。グローバル人事プロフェッショナル組織であるSHRM認定資格を取得。

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