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フリーライダー問題とはどのようなもの?組織に与える影響や対策を徹底解説

フリーライダー問題とはどのようなもの?組織に与える影響や対策を徹底解説
  1. フリーライダー問題とは?
  2. フリーライダーが組織へ与える影響
  3. フリーライダーの生まれる根本的な原因は不明瞭な責任範囲にある
  4. フリーライダーを生まないための対策
  5. まとめ

「自社においてフリーライダー問題が顕在化してきた」「生産性向上のため、自社からフリーライダーを排除したい」といった課題を抱える企業もいることでしょう。

フリーライダーを放置していると、組織のモチベーション低下や生産性低下、従業員の離職率増加にまでつながる可能性があり、決して見過ごせる問題ではありません。

本記事では、フリーライダーが生まれる原因やそれによって生じる問題、フリーライダーを生み出さないための対策をご紹介します。ぜひ最後までお読みください。

フリーライダー問題とは?

フリーライダーとは、直訳すると「ただ乗りする人」という意味です。ビジネスシーンにおいては、仕事をせずに相応以上の報酬を得たり、ほかの従業員の手柄を横取りしたりする人を指します。

フリーライダーは組織に悪影響をもたらす存在であり、フリーライダーが組織に与えるマイナスの影響を総合して「フリーライダー問題」と定義されています。

「給料泥棒」という言葉があるように、フリーライダーは昔から存在していました。しかし近年、雇用形態や業務内容の多様化や変化、さらには労働人口の減少により、フリーライダーへの対処が困難となり、フリーライダー問題は現代社会が抱える大きな問題の1つとなっています。

フリーライダーを放置したままでは、組織全体の生産性が低下したり、さらなるフリーライダーを生むことも考えられるでしょう。そのため、企業にはフリーライダー問題への早急な対策が求められています。

フリーライダーが組織へ与える影響

フリーライダーを放置していると、組織には以下のような影響が生じる可能性があります。

  • 組織全体のモチベーションが低下する
  • 生産性が低下し企業成長が止まる
  • 優秀な従業員の離職につながる
  • 新たなフリーライダーを生んでしまう

フリーライダーは仕事に意欲的に取り組まないため生産性が低い傾向にありますが、影響はそれだけではありません。別の従業員のモチベーションや生産性までをも低下させてしまうおそれがあります。
フリーライダーによって生じる問題についてしっかりと理解をし、必要な対策を講じることが重要です。

影響1.組織全体のモチベーションが低下する

フリーライダーが組織に在籍していることで、組織全体のモチベーションが低下してしまうでしょう。フリーライダーが組織に1人でもいれば、本来その人が担うはずだった業務を別の従業員が担うことになり、任せられた従業員は業務の負担が増加します。

また、周りの従業員の成果を横取りすることもフリーライダーの特徴です。自身が出した成果をフリーライダーに横取りされれば、その従業員は「次も頑張ろう」という気持ちは湧きづらくなってしまいます。

業務の負担が増えたり、成果を横取りされたりすることで、被害を受けた従業員のモチベーションはどんどん低下していきます。そうしたフリーライダーが組織に存在することへの不満や、やる気を失っている従業員の姿を見ることなどによって、モチベーションの低下は周囲の従業員にまで伝染するでしょう。

それぞれが既に自分の仕事を抱えている状態で、フリーライダーの分の業務を誰がどの程度担うのかといった押し付け合いにまで発展し、人間関係の悪化にまでつながる可能性もあるのです。
その結果、組織全体のモチベーションが低下します。

影響2.生産性が低下し企業成長が止まる

フリーライダーがいることで、組織の生産性が低下し、企業成長が停滞してしまうリスクもあるでしょう。

フリーライダーの存在は、先述したように組織全体のモチベーションを低下させます。従業員一人ひとりのモチベーションが低くなれば、今までこなしていた水準よりも低い質や量で業務に取り組むようになる可能性も否めません。また、既存業務の改善や成果の向上に向けて意欲的に取り組む従業員の数も減り、生産性の向上にも期待できなくなるでしょう。

そもそも、フリーライダー自身、業務への意欲・貢献度が非常に低く、生産性も著しく低い傾向にあります。

組織全体の生産性が低下すれば、企業の業績の鈍化や成長の停滞は避けられません。

影響3.優秀な従業員の離職につながる

組織内にフリーライダーがいることで、優秀な従業員が離職する可能性も高まるでしょう。

フリーライダーは他人に業務を任せがちであると先述しましたが、業務を振られる対象は効率よく業務をこなせる優秀な従業員になりやすいものです。

押しつけられた側の従業員は、理不尽かつ不公平な状況・扱いに対して当然不満を感じます。また、仕事をしなくても給料を得ているフリーライダーの姿を見れば、真面目に仕事をすることへの意義を見出しづらくもなるでしょう。「何のために仕事を頑張っているのかわからない」「会社のために頑張ろうと思えない」といった思いが強くなっていく中で、会社へのエンゲージメントは低下し、離職へと気持ちが向かいやすくなるのです。

優秀で仕事のできる従業員ほど、フリーライダーが怠った仕事のしわ寄せを受けることが多くなり離職へとつながってしまうのは、フリーライダーがもたらす大きな弊害の1つです。

影響4.新たなフリーライダーを生んでしまう

フリーライダーの存在を組織が認めてしまうことで、新たなフリーライダーを生みやすくなってしまうことも、フリーライダーを野放しにすることの問題の1つです。

先述したように、「楽して給料を貰えるなら、真面目にやっている従業員が損をする」といった思いや、「誰も真面目にやっていないのだから、自分もやらなくていいだろう」といった思いを抱える従業員は少なからず出てくるでしょう。その結果、新たなフリーライダーを生んでしまうことになります。

増えていくフリーライダーを目にするうちに、最初はフリーライダーに対して嫌悪感を抱いていた従業員も1人、また1人と、自身がフリーライダーになっていってしまうリスクも考えられます。1人のフリーライダーを認めることで、次々と負のループを生じさせてしまう可能性があるのです。

フリーライダーの生まれる根本的な原因は不明瞭な責任範囲にある

フリーライダーを生む根本的原因の1つは、責任の所在が不明確であることです。とくに、「職能資格制度」を採用している場合、責任の所在が曖昧になりやすいという特徴があります。

職能資格制度では責任範囲が明確に定められておらず、業務範囲が広範にわたりがちです。また、一人ひとりの果たすべき責任も曖昧になります。それによって、「ほかの人がやるからいいや」「ほかの人に任せてしまって問題ない」といった思考が生まれてしまいやすくなるのです。

また、勤続年数や年齢を基準に評価する「年功序列」が企業風土として根付いている場合も、フリーライダーが生まれやすい環境となります。年功序列が根付いている場合、業務で成果を上げていなかったり、役目を果たしきれていなかったりしても、ある程度の待遇までは到達可能です。それにより、仕事を怠り成果を上げていなくても待遇だけはいい…というフリーライダーが生まれてしまいやすくなります。

加えて、「副部長」「課長代理」など責任範囲が曖昧な役職が存在する場合も、フリーライダーの温床となりやすいでしょう。これは、役職が不要に多いことで各役職の責任範囲は曖昧になり、責任逃れをしやすくなるためです。

このように、「責任範囲が曖昧である」「年齢や勤続年数で役職が決まる」「役職が必要以上に多すぎる」といった環境下では、フリーライダーは生まれやすくなります。該当する場合は、早急に改善に取り組むようにしましょう。

フリーライダーを生まないための対策

フリーライダーを生まないためには、以下のような対策を講じることが重要です。

  • 成果責任に基づいて達成目標を設定する
  • 仕事内容を可視化する
  • 適切な評価制度を構築する
  • 指揮命令系統を明確化する
  • 上司と定期的な面談を実施する

曖昧な役割を明確にしたり、成果を出せば報われる評価制度を構築したりすることで、従業員は仕事をサボりづらくなり、成果を出している従業員からの不満も減らせるでしょう。
それぞれの詳細を解説します。

対策1.成果責任に基づいて達成目標を設定する

フリーライダーを防ぐ上では、成果責任に基づいて目標を設定することが有効です。

自身の職務において「組織に対してどのような責任を果たすのか」を明確にし、それをもとに目標を立てることで、期末にパフォーマンスの良し悪しを判断しやすくなるでしょう。

また、達成目標が明確にされることで、各従業員はどこに向かって仕事を進めていくべきか、自分は何をすべきかが定まります。各々の役割が明確化されることで、フリーライダーは他人へ仕事を押しつけることができなくなり、真面目に頑張る従業員側も他者人からの仕事の押しつけを断る口実ができます。

目標の達成や役目を全うできていなければ評価は自ずと下がるため、フリーライダーは仕事で手を抜きづらくなることも利点といえるでしょう。その結果、フリーライダーが生まれづらくなるのです。

対策2.仕事内容を可視化する

フリーライダーを生まれにくくするには、責任範囲を明確化し、職務を定義することを通じて仕事内容を可視化していくことも有効です。可視化にあたっては以下を把握できるようにしましょう。

  • 誰が何をしなければいけないのか
  • 仕事内容はどのようなもので仕事の進捗はどうなっているか
  • アウトプットとして創出すべき成果は何か

可視化によって、従業員は実際の成果と自己評価との差が見えやすくなり、別の従業員との仕事内容や量、成果の差を把握しやすくもなります。その結果、フリーライダーは「このままではまずい」「サボっているとバレてしまい、評価に悪影響が出る」という心理が働きやすくなるでしょう。
また、上司側がフリーライダーを発見しやすくなることもメリットです。

対策3.適切な評価制度を構築する

フリーライダーを防ぐ上では、適切な評価制度の構築も欠かせません。

先述したように、年齢や勤続年数が主な評価基準となる年功序列型の評価制度では、個人の能力や、成果が公平に評価されない場面も多々出てきます。優秀な従業員からしてみれば、自身が成果を上げてもそれが適正に評価されず、仕事に真面目に取り組まず他人に押し付けるフリーライダーが自身と同じ評価を得ていれば、理不尽や不公平感を感じるでしょう。最悪の場合には、離職に至ってしまう可能性も考えられます。

先述したように、年齢や勤続年数が主な評価基準となる年功序列型の評価制度では、個人の能力や、成果が公平に評価されない場面も多々出てきます。優秀な従業員からしてみれば、自身が成果を上げてもそれが適正に評価されず、仕事に真面目に取り組まず他人に押し付けるフリーライダーが自身と同じ評価を得ていれば、理不尽や不公平感を感じるでしょう。最悪の場合には、離職に至ってしまう可能性も考えられます。

その点、「成果評価制度」「能力評価制度」を導入し、個人の能力や成果が公正かつ適切に評価されるしくみが構築できれば、仕事を怠り成果を出さないフリーライダーは評価されず、待遇面でも不利となります。それゆえに、フリーライダーが生存しにくい環境を構築できるのです。
優秀な従業員が意欲的に勤続し続けられる環境をつくれることも、大きなメリットといえます。

対策4.指揮命令系統を明確化する

指揮命令系統を整理し明確化することも、フリーライダーの抑制にたいへん効果的です。

先述のとおり、「副部長」「課長代理」といった役職が存在すると、「部長」と「副部長」あるいは「課長」と「課長代理」との職務内容や責任の所在、その差が曖昧となります。そうすると「自分がやらなくても誰かがやってくれるだろう」とい考え方が蔓延し、フリーライダーは生まれやすくなるでしょう。
また、「部長」と「副部長」の双方には、どこか「自分以外にも部下を見る者がいる」」という意識が生まれ、部下に対する関心や注意も薄れてしまいます。そうなると、部下側は部下側で「どうせ見られていないから」と気を抜く場面も多々出てくるなど、更なるフリーライダーを生んでしまう可能性があるのです。

その点、各役職の役割や階層を明らかにして、誰が何をするべきかが明確になれば、別の人に仕事を任せきりにするような環境は生まれず、また周りの目を意識しながら自身の仕事に励むようになります。
どの上司にどの部下がつくのか、指示を出したり仕事の進捗を確認するのは誰なのか、などをはっきりとさせることは、フリーライダーを生まないために必要不可欠です。注視すべき相手が多数いることで、関心も分散されてしまうため、レポートラインを1本にする(1人の部下が報告すべき上司は1人にする)形がベストといえます。それが難しい場合も、指揮命令系統を持つ直属の上司は誰なのかを明確にし、それを常に意識させるようにことは、フリーライダーを防ぐ上でたいへん重要なポイントです。

自社の役職の全体像を整理し、不要な役職を排除するなどして、指揮命令系統を明らかにしましょう。

対策5.上司と定期的な面談を実施する

上司が部下の仕事の進捗や悩みを確認するための面談である「1on1ミーティング」を実施することも有効です。
上司と部下とが1対1でミーティングを実施し、「仕事で困っていることはないか」「どういう仕事をしているのか」「現状のチームの状況はどうか」といった事柄をヒアリングする機会を定期的に設けましょう。上司との面談が定期的におこなわれることで、部下は仕事をサボりづらくなり、現状サボっている従業員がいる場合にも、そのことを把握・共有しやすくなります。

また、仕事の進捗や課題、この先やりたいことなどを上司が部下に質問し、部下自身に言語化させることで、従業員一人ひとりが自分自身の現状と全体の中での役割や位置づけをより明確に把握できるようになるでしょう。その結果、課題の解消に向けて、邁進してもらえる効果も期待できます。

1on1ミーティングを通して自律型のキャリア形成を促すことによって、フリーライダーを生み出しづらくなるのです。

まとめ

フリーライダー問題を放置しておくと、組織全体のモチベーションや生産性は低下してしまうでしょう。また、人間関係の悪化や離職の増加などにも発展し、企業の成長が鈍化してしまうリスクもあります。

フリーライダーの生まれる根本的な原因は、責任の所在が不明確であることです。そのため成果責任を設定して達成度合いを評価する制度を構築したり、仕事内容を可視化するなどして誰が何をすべきかを明らかにすることが何より重要といえます。そうした取り組みを実施することで、フリーライダーを排除していくことができ、生産性の向上にも期待できるでしょう。

加えて、上司と部下の定期的な面談を開催するなどをして部下の自発的な成長を促していけば、従業員一人ひとりの生産性はさらに向上し、企業の持続的な成長可能性も大きく高まるはずです。

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記事監修

前田 正彦(まえだ まさひこ) 株式会社スキルアカデミー 代表取締役CEO
前田 正彦(まえだ まさひこ)
株式会社スキルアカデミー 代表取締役CEO

慶應義塾大学経済学部卒業。米国マサチューセッツ工科大学経営大学院(Sloan School of Management)修了。株式会社前田・アンド・アソシエイツ代表取締役(現職)。
株式会社NTTデータにて金融システムの開発に携わった後、 数々のコンサルティングファームにて、戦略立案から実行・定着までのプロジェクトを数多くリードしてきた。
その後人事・組織コンサルティングの必要性を痛感し、当該分野のプロジェクトを立ち上げ、戦略から人事・組織コンサルティングまで一貫したサービスを提供している。
スキルアカデミーにおいては、代表取締役CEOとしてAI人事4.0事業全体の推進をリードするほか、組織・人事・人材開発などの案件を数多くリードしている。
また組織診断・管理特性、職務等級制度・成果報酬制度などツールを開発。グローバル人事プロフェッショナル組織であるSHRM認定資格を取得。

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