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人事考課とは?目的やメリット・デメリットと運用のコツを解説!

人事考課とは?目的やメリット・デメリットと運用のコツを解説!
  1. 人事考課とは
  2. 人事考課をおこなう目的
  3. 人事考課のメリット
  4. 人事考課のデメリット・注意点
  5. 人事考課の査定には「人事考課シート」を使用
  6. 人事考課面談を効果的に運用するコツ
  7. まとめ

「社員が意欲を持って仕事に取り組まない」「評価を伝えても社員が納得していない様子だ」といった課題を抱えていらっしゃいませんか。

自社を成長させ、競合他社を追い抜いていく上で、社員のパフォーマンス向上は重要な要素のひとつです。社員一人ひとりの成長が期待できなければ、自社の発展にもつながりません。

そこで本記事では、社員のパフォーマンス向上が見込まれる「人事考課」の概要やメリット・デメリット、効果的に運用するコツについて解説します。

人事考課を導入することで、社員がより意欲的に仕事に取り組むことが期待できます。

人事考課とは

人事考課とは、社員の能力・業務態度・実績などをもとに、経営者や人事部、管理職が社員の評価を決定する人事制度のことを指します。評価結果をもとに、昇給や昇格・人事配置・社員育成など、人事面のあらゆる側面で活用できるため非常に重要なテーマです。

人事考課の設計が曖昧であったり透明性に欠けてしまうと、従業員の不満につながってしまったり、仕事のやりがいを妨げてしまったりするため、正しい設計が必要不可欠になります。

逆に正しい設計ができれば、従業員の成長やモチベーションアップ、人件費の最適な配置などさまざまなメリットを享受できるため、適切な設計と運用をおこなえるよう準備しましょう。

ここからは、人事考課における具体的な評価手法・評価基準についてご紹介していきましょう。

人事考課における主な施策

人事考課に用いられる主な施策としては、以下の5つが挙げられます。

360度評価 複数の評価者により評価する方法
コンピテンシー評価 個人の目標を定め、その成果で評価する方法
人事考課面談
(フィードバック面談)
人事考課の結果をフィードバックする面談
人事考課シート 評価プロセスと最終評価の内容を記載したシート

これらの中でもとくに、人事考課の運用において「人事考課面談」と「人事考課シート」は活用される傾向にあります。

人事考課の3種の評価基準

人事考課の評価基準としては、以下の3種類が挙げられます。

  1. 業績考課:業務の成果やそのプロセスを評価する
  2. 能力考課:社員のスキルや能力、知識などを評価する
  3. 情意考課:日ごろの業務姿勢や人柄(協調性の有無など)を評価する

評価基準の取り扱いは企業ごとにさまざまです。これらの評価を組み合わせた評価基準が作られることもあれば、特定の評価基準のみが採用されることもあります。

人事考課をおこなう目的

人事考課をおこなう代表的な目的は、以下の2つです。

  • 公平・公正な人事査定をすること
  • 企業の価値観やビジョンを社員に共有すること

社内で統一された基準にもとづく客観的な評価により、給与や賞与、昇進・昇格などの人事査定を、公正・公平におこないます。

企業の価値観やビジョンを社員に共有することで、社員は企業がどのようなことに価値を置くのかを把握できます。その結果、目標達成に向けて、何に優先順位を置くべきか、どのように行動していけばよいのかを自身で判断しやすくなるのです。

人事考課のメリット

人事考課には以下のようなメリットがあります。

  • 人材育成ができる
  • 上司と部下のコミュニケーションが活発になる
  • 社員のモチベーションを向上させられる

それぞれの詳細について、ご紹介していきましょう。

人材育成ができる

人事考課では、社員の成長サポートをおこなえる点がメリットです。

社員は、人事考課を通して「会社が求める人物像」への理解が深まるため、自身のどのような点が優れていて、どのような点が未熟であるのかを把握できるようになります。

その課題をどのように解決するのか自身で模索したり、上司と話し合ったりすることで、目標達成に向けて着実に歩めるようになるのです。

全社員の人事考課をおこなうことによって、自社の社員に共通して足りないスキルなども見えてきます。そうしたデータにもとづいて研修プログラムなどを施すことで、会社全体の人材の能力底上げにもつながるでしょう。

上司と部下のコミュニケーションが活発になる

部下と上司のコミュニケーションの活性化を期待できるのもメリットです。人事考課の結果(評価)について話し合う面談を設けたり、進捗について相談したりする機会を設けることで、理解が深まります。

不明点の質問や問題解決の相談などを通して、上司と部下に信頼関係が構築され、報・連・相の制度も高まることが期待されます。

その結果、部下が目標達成に向けて円滑に歩めるようになるだけでなく、トラブルが起きた際にも迅速に対処しやすくなるでしょう。

社員のモチベーションを向上させられる

社員は、自分の成果や能力、業務態度などが認められたときに、会社における存在価値を認識できるようになります。

人事考課を通して日々の頑張りを承認するなど、上司からのポジティブなフィードバックがあることで、自分自身を肯定的に捉えられるようになるのです。

その結果、仕事に意欲的になる効果が見込まれます。

人事考課のデメリット・注意点

人事考課には次のようなデメリット・注意点もあります。

  • 導入と運用にコストを要する
  • 適切な評価でなければ不満が生まれる

それぞれの詳細について解説していきましょう。

導入と運用にコストを要する

人事考課を適切に運用するためには、相応の労力と時間を要します。これらのコストは、デメリットのひとつといえるでしょう。

導入前には、明確な評価基準の確立や評価方法の設計、評価者の教育などが必要となります。
導入後には、実際に一人ひとりの社員の評価をしたり、評価や課題について話し合う機会(面談)を設けたりすることに、時間や労力がかかってしまうかもしれません。

適切な評価でなければ不満が生まれる

公正な評価がされなければかえって不満が生まれる、というデメリットもあります。

たとえば、評価基準が曖昧で主観にもとづく評価がなされる場合、社員に不満がつのることも考えられます。「あの社員は上司に好かれているから評価が高かっただけ」「自分はあまり好かれていないので厳しく評価された」といった具合です。

処遇に納得できない状況が続くことで、モチベーションの低下や離職につながるリスクもあるでしょう。

公正な評価をする上では、明確で客観的な評価基準を確立することや、バイアスによる評価の変動を減らすための教育を評価者に施すことなどが重要です。また、適切なフィードバックをしっかりと受け止めてもらう上では、評価者が日ごろから、被評価者と信頼関係を構築しておくことが何より大切といえるでしょう。

人事考課の査定には「人事考課シート」を使用

多くの場合、人事考課の査定には、「人事考課シート」と呼ばれる、評価を記入するシートが使用されます。

人事考課シートは、企業の人事制度にもとづき、人事部門によって作成されることが一般的です。

作成後には、以下の流れで運用されます。

  1. 被評価者による自己評価
  2. その上司による評価
  3. 評価者会議
  4. 本人に通知・面談

評価者会議では、上司がおこなった評価について再検討し、必要があれば修正をします。

人事考課制度の運用手順

人事考課制度は、次のステップで運用されるのが一般的です。

  1. 人事考課規程の作成
  2. 社員の目標設定
  3. 部下の自己評価
  4. 上司による評価
  5. 人事考課面談(フィードバック面談)の実施

それぞれの詳細について、ご紹介していきましょう。

人事考課規程の作成

まずは、人事考課に関するさまざまなルールを定めた「人事考課規程」の作成をしましょう。

人事考課規定において、人事考課の手順や基準を明確にすれば、人事考課の透明性を高められます。
人事考課規定を定めることで、社内で評価される行動や人柄についても社員に伝えられるため、社員の行動指針が明確になることも利点です。

就業規則においての人事考課規定は、労働基準法により企業が必ず記載をする必要のある「絶対的必要記載事項」ではなく、制度を定めた場合に記載が必要となる「相対的必要記載事項」に該当します。人事考課制度の導入にあたっては、人事考課規定を必ず作成し、就業規則にその旨を記載しなければならないわけではありません。
ただし、人事考課規定は相対的必要記載事項ですので、制度として設けた場合には、就業規則に必ず記載しましょう。

社員の目標設定

つづいて、社員の目標設定をおこないます。
目標設定の方法として挙げられるのは、たとえば以下のようなものです。

  • トップダウン形式で上司から部下に目標を伝え、その達成に向けて尽力してもらう方法
  • 会社や部署の目標を提示しつつも参考程度に留め、部下と上司で目標値を定めてもらう方法

いずれの場合も、具体的な目標を作ることが重要です。期日や達成基準、達成手順などが明確であればあるほど、社員は目標を達成しやすくなります。

部下の自己評価

期中が終わり評価フェーズに移った際には、まず部下自身に自己評価をしてもらいましょう。最初に部下に自己申告をしてもらうのは、上司と部下の間で、事実(実績や日々の行動)・評価に対する認識の擦り合わせをおこなうことが目的です。

部下には、上司を意識した自己評価ではなく、率直な自己評価をしてもらうことが大切です。部下の本心を知ることで認識の擦り合わせをしやすくなり、双方の認識に大きくズレが生じている場合には適切な対応を取りやすくなります。

上司による評価

部下の自己評価が終わったら、上司による評価に移ります。評価をするにあたって、評価基準を明確に確立し、社内で統一しておくようにしましょう。

たとえば5段階評価で評価をする際には、あらかじめ明確な基準を設定し、その基準に達していれば「レベル5(最良)に該当」というように、判断材料を設けておくとよいでしょう。

  • 「設定された目標に対して120%の成果をおさめた」
  • 「取引先/お客様から賞賛の声を頂いた」 など

評価基準が曖昧であると、上司と部下の評価に大きなズレが生じやすくなり、評価に対する擦り合わせも難航するリスクがあります。

人事考課面談(フィードバック面談)の実施

最後に、人事考課面談を実施しましょう。面談では部下と上司で評価内容について話し合い、両者の認識に差異がある点については、両者が共通認識を持てるように擦り合わせをおこないます。

結果と評価に対して共通認識を持つことで、どのような言動が評価され、どのような言動が評価されないのかについて、部下からの理解が深まります。来期以降の言動の質を高めることにもつながるでしょう。

擦り合わせが終わった後には来期の目標を設定し、面談終了です。

人事考課面談を効果的に運用するコツ

人事考課面談を効果的に運用する上では、次のポイントが重要となります。

  1. 部下が話しやすい質問をする
  2. 詳細なフィードバックを伝える
  3. 来期の期待を伝える
  4. 評価エラーに注意する

それぞれの詳細について、ご紹介していきましょう。

1、部下が話しやすい質問をする

人事考課面談を成功させるためには、部下が答えやすい質問をすることが重要です。上司が部下に対して「拡大質問」や「肯定質問」を意識することで、部下は上司が聞きたい事柄について詳細に話してくれるようになります。
「拡大質問」「肯定質問」とは、以下のような内容の質問です。

拡大質問 相手が自由に回答できる質問方法
例:「~についてどのように考えていますか?」「それはなぜですか?」
肯定質問 否定的な言葉を使わず、前向きな方向性で質問をする
例:「次期はどのようにすればうまくいくと思いますか?」

部下が話している際には、相槌を打つとよいでしょう。そうすることで部下は、上司が自身の話をしっかりと受け止めてくれていると感じるようになり、本音で話しやすくなります。

2、詳細なフィードバックを伝える

人事考課面談では、大雑把で抽象的なフィードバックではなく、具体的で詳細なフィードバックを伝えるようにしましょう。フィードバックが詳細であればあるほど、部下は評価について納得感を得やすく、次期に向けて意欲的な取り組みができるようになります。

どのような評価基準で部下が評価され、どのような行動や結果が評価に影響を与えたのかを、具体的に伝えるとよいでしょう。

部下が納得していない様子であれば、疑問や不満に思うことなどをヒアリングし、その場で解消することも重要です。部下が密かに抱えているわだかまりを解消することで、次期の目標に向かって、前向きに取り組めるようになります。

出た結果に対しては、上司も部下も悲観的・肯定的になりすぎないようにしましょう。今回達成できなかった場合は、どのようにすれば次期の目標を達成しやすくなるのかを考えます。今回達成できた場合も、達成感から気持ちが緩み、次期以降業務の質が落ちないように、あらかじめ次期の具体的な行動プランを立てることが重要です。

3、来期の期待を伝える

部下のモチベーションを高める上で、来期への期待を伝えることも重要です。社員は、会社から期待されていないと感じた際には意欲を失い、会社から期待されていると感じた場合には会社のために頑張ろうと思えるものです。

部下のよい点を例示し、その強みを活かして来期に実現してほしいことを伝えるとよいでしょう。
たとえば、「Aさん(部下)は協調性と意欲が高いので、来期のプロジェクトでは他のメンバーを鼓舞しつつも統率していってほしい」といったことを伝えるとします。部下は、具体的な内容を示されたことによって、自分が期待されている実感と、期待されている役目を認識できるようになるのです。

前期における言動や成果の具体例を挙げることで、部下を期待していることへの説得力が増し、部下が次期の目標達成に向けてより意欲的になる効果が期待できます。

⒋評価エラーに注意する

人事考課面談では、「評価エラー」と呼ばれる、評価者が陥りやすい「人事評価におけるバイアス」を可能な限り避けることが重要です。

評価エラーを避けることで公正な評価がおこなえるようになり、評価にも納得してもらいやすくなるでしょう。
評価エラーとしては、以下のようなものが挙げられます。

厳格化傾向 評価が普通よりも厳しくなる傾向
寛大化傾向 情などから甘い評価をつけてしまう傾向
ハロー効果 ある一つの特徴(良い点・悪い点)をその人の総合評価とする傾向
中心化傾向 優劣をつけることを避け、大部分について「普通」と評価する傾向

社内で確立された評価基準をもとに、被評価者の具体的な行動事実を評価することで、上記のエラーは回避しやすくなります。人事考課規定などで明確な評価基準を確立しておくことが、何よりも重要なのです。

評価エラーを防ぐ上では、どのような評価エラーが発生しやすいのかや、どのように回避するのかについて、評価者に教育をおこなうことも効果的といえます。

まとめ

人事考課とは、社員の日々の業務態度や実績をもとに、評価や処遇を決定する人事制度のことです。人事考課をおこなうことで、上司と部下のコミュニケーションの活性化や、社員のモチベーション向上などが見込まれます。

人事考課規定を設けて評価基準を明確にしたり、面談時に詳細なフィードバックをしたりすることで、有効な人事考課がおこなえます。

人事考課の運用を充実させ、自社の成長につなげられるようにしましょう。

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記事監修

前田 正彦(まえだ まさひこ) 株式会社スキルアカデミー 代表取締役CEO
前田 正彦(まえだ まさひこ)
株式会社スキルアカデミー 代表取締役CEO

慶應義塾大学経済学部卒業。米国マサチューセッツ工科大学経営大学院(Sloan School of Management)修了。株式会社前田・アンド・アソシエイツ代表取締役(現職)。
株式会社NTTデータにて金融システムの開発に携わった後、 数々のコンサルティングファームにて、戦略立案から実行・定着までのプロジェクトを数多くリードしてきた。
その後人事・組織コンサルティングの必要性を痛感し、当該分野のプロジェクトを立ち上げ、戦略から人事・組織コンサルティングまで一貫したサービスを提供している。
スキルアカデミーにおいては、代表取締役CEOとしてAI人事4.0事業全体の推進をリードするほか、組織・人事・人材開発などの案件を数多くリードしている。
また組織診断・管理特性、職務等級制度・成果報酬制度などツールを開発。グローバル人事プロフェッショナル組織であるSHRM認定資格を取得。

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